文●税理士 今村仁
平成17年4月13日に、中小企業新事業活動促進法が施行された。これまでの中小企業支援の3法である旧中小企業経営革新支援法、旧中小創造法、旧新事業創出促進法が1つの法律に整理統合され、分かりやすく活用しやすくなった。この中小企業新事業活動促進法のもとで行なわれる中小企業に対する支援のうち、経営革新支援においては融資における保証枠の拡大、税制面での優遇措置、補助金の交付などの支援を受けることができる。
中小企業新事業活動促進法の承認を各都道府県から受けると、上記のようなさまざまなメリットを受けられるが、そもそもこの承認を受けるためには要件を満たす必要がある。まずは法律名にもあるように、承認予定の中小企業が「新事業活動」を行なう必要がある。「新事業活動」とは、次の4つの「新たな取り組み」をいう。
(中小企業新事業活動促進法第2条第5項)
またこの新事業活動とは、自社にとって「新たな取り組み」であれば構わないということであるので、たとえその新たな活動がすでに他の事業者で採用されていても構わないのである。ただし、
重要なことは、その新たな取り組みにより「数字をともなって経営の質を向上させること」である。具体的には、3~5年の計画を立て、計画終了時における付加価値額(又は一人当たり付加価値額)を3年計画の場合は9%以上、5年計画の場合は15%以上に、経常利益を3年計画の場合は3%以上、5年計画の場合は5%以上にそれぞれ向上させる目標を立てる必要がある。これは付加価値額(または一人当たり付加価値額)で「年率3%以上の伸び率」、経常利益で「年率1%以上の伸び率」ということである。ちなみに付加価値額とは、営業利益+人件費+減価償却費となっている。
中小企業経営革新支援法の承認を受けた場合のメリットはいくつもあるが、大まかな部分を以下に列挙しておく。
今回はこの中でも、税制上のメリットである(3)と(4)について解説する。
非同族会社(上場会社など)は利益を上げて配当を出したり役員賞与を出したりすることが経営者の仕事になるため、配当や賞与支出時に税金が発生することになる。それに対して同族会社は、利益処分である配当や役員賞与を一般的に行なわないので、会社に内部留保する額が多いであろうと税務当局は考える。
そのため、一定金額以上を内部留保した同族会社に対しては、その留保した金額に対し本来の法人税とは別に課税をすることになっている。それが「同族会社の留保金課税」というものである。この留保金課税については、前年以前の繰越損失と当期の利益を相殺する場合でも発生する場合があるので注意が必要である。
留保金課税の額は、以下のような計算によって求められる。下の課税額のシミュレータに資本金、利益、期首利益剰余金の3つを入力すると留保金課税額の概算を求められるので、使ってみて欲しい。
留保金課税額={所得―(配当等+法人税等)―留保控除額}×特別税率
↓
次に掲げる金額のうち最も多い金額
(注)自己資本比率=自己資本(同族関係者からの借入金含む)/総資産
このシミュレータは、以下の条件を想定して作られています。また、表示される税額はあくまで概算です。
この「同族会社の留保金課税」に対する回避策であるが、今まではいくつかあった。1つ目の回避策は、設立後10年以内の一定の中小企業者に該当する場合である。そして2つ目が、資本金1億円以下で会社の自己資本比率が50%以下の場合。しかしこれらの回避策は、平成18年4月1日以後開始する事業年度からは適用されないことになった(平成18年度税制改正)。
そこで現在「同族会社の留保金課税」を回避しようとすると、「中小企業新事業活動促進法に基づく経営革新計画を作成し都道府県の承認を受ける」ことが必要となるのである。国からやる気のある中小企業として認められ、経営革新の承認を得られれば、上のシミュレータで計算した課税額をまるまる節税することができるのである。
同族会社の留保金課税回避策
(経営革新のための事業を実施していること)
現在「留保金課税の回避策」は、「経営革新計画の承認を受けた企業」だけということになる。
また別の観点から留保金課税を回避する対策としては、会社を2つ以上に分けて一定額以上の内部留保が行なわれないようにするというのもある。ただし、それにより会社組織にひずみができては本末転倒であるので、それぞれの経営環境に応じて判断してほしい。
「経営革新計画の承認」を受けると、ほかにも税制上のメリットがある。それは、「設備投資減税(中小企業等基盤強化税制)」の適用を受けることができるというものである。この中小企業等基盤強化税制とは、企業が設備投資を行なった場合に、特別償却または税額控除が適用できる優遇措置のことである。
具体的な適用要件は、経営革新事業のために機械・装置を取得した場合などが対象で、金額基準は以下のとおりである。
特別償却を選んだ場合は、機械・装置の取得価額の30%部分が、特別償却費として普通償却費に上積みされる。つまり、資産を早期に費用化できるところがメリットといえる。
それに対して税額控除を選択した場合は、機械・装置の取得価額の7%(リースの場合はリース費用総額の60%相当額の7%)部分が、支払うべき法人税額から控除される。
この中小企業等基盤強化税制は、経営革新計画承認企業以外でも適用できるが、資本金や業種の要件がある。それに対して経営革新計画承認企業であれば、資本金や業種要件に関係なく適用ができるのでありがたい。
ただし、この中小企業等基盤強化税制には、類似の「中小企業投資促進税制」というのもある。そしてこれらは、どちらか一方しか適用できないので、ご注意いただきたい。
今日の話が少しでも読者の皆さんのお役に立てたのであれば幸いである。
監修者紹介
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今村 仁(Hitoshi Imamura) 今村仁税理士事務所は、ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポートしています。大阪・京都・神戸及び東京を中心に活動しています。 |
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