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中小企業新事業活動促進法の承認獲得に向けて
ビジネスプラン作成で経営革新の第一歩を踏み出す

文●株式会社ディセンター代表取締役 折原浩

http://www.decenter-jp.com/

法律の承認とビジネスプラン

 国が中小企業の経営革新や創業などを支援するために用意した「中小企業新事業活動促進法」。この法の承認をとることで、様々な補助金や融資、優遇税制などを請けられるようになる。今後さらなる成長を目指す中小企業にとっては、目を離せない法律である。

 この法の申請書は、従来の支援策の申請に比べると、やや複雑で変わった形式となっている。見る人が見れば分かることなのだが、この申請書はいわゆるビジネスプランの書き方とほぼ同じ形式となっているのだ。つまり、この法を申請するにあたっては、ビジネスプランができあがっていなければならず、おざなりの穴埋めでは対応できない。ビジネスプランを書いていく上で、考えていかなくてはいけないポイントを整理していくことが、法律の承認の近道なのだ。

経営革新計画に係る承認申請書 経営革新計画 経営革新計画の具体的内容
実施計画と実績 経営計画及び資金計画 設備投資計画
組合等が研究開発等事業に係る試験研究費に充てるためその構成員に対して賦課しようとする負担金の賦課の基準 希望する支援策について/関係機関への連絡希望について/経営革新計画提出に当たり協力を得た期間等 企業名等の公表/中小企業経営革新事例集の作成

この申請書は各都道府県のWebサイトからダウンロードできる。
東京都の場合は、こちらから

 また、このビジネスプラン作成は2つの非常に大きな副産物がある。まずひとつは、経営者の頭の整理がつくということだ。中小企業にとって、アイデアはあるのだけど、いつまでも実現しないという悩みはつきものだろう。しかし、そのアイデアをビジネスプランというルールにのっとって書いていくことで、「アイデア」から「企画」そして「行動計画」になるのだ。ビジネスプランをきちんと完成させることができれば、経営革新の実現の第一歩を記したといってもいいだろう。

 2つ目の副産物は、できあがったビジネスプランが、プラン進行時に使えるということだ。ビジネスプランを持つと言うことは、プラン進行という長い旅に羅針盤とマップを持つようなものだ。事業を進行していて、道に迷ったとき、自分の居場所が分からなくなったとき、そして、どちらの方向に向かったらよいか迷ったときに見直すことができる。ビジネスプランという筋が一本通っているので、大きな踏み外しがなくてすむのだ。

定性と定量

 ビジネスプランを書く上で、重要になるのは「定性」と「定量」という2つの要素である。耳慣れない言葉ではあるが、簡単にいってしまうと、定性とは文字で書いていく要素のことで、定量とは定性の内容を数字で裏付けしていくものである。これらは車の両輪みたいなもので、どちらかだけでも、どちらかに大きく偏っていてもダメで、バランスよく考え、表現していくことが重要である。作り方としては、まず、定性を考えよう。定量からはいると、数値ばかりにとらわれてプランが小さくなる。イメージとしては、まず、定性で大いにやりたいことを広げていき、定量で絞り込んでいくような感覚だ。

定性的要素をまとめていく

 定性的な要素をまとめる際、私はプランニングシートを利用する。

 この目的は、シートに記入することで事業の概略を把握し、事業の全体像とイメージをしっかり持つために使う。また、1枚のシートにして事業全体を俯瞰できるため、考えにムラがなくなる。私自身が自社の経営においていつも気をつけていることなのだが、新事業や新企画を考えたりしていると自分の想いが強かったり、自分の得意な部分に集中してしまったりする。思考の集中はそれ自体、良いことなのだが、経営革新や新事業創出では、まずは事業全体像をつかむことが肝心だ。そこで、私たちは、事業全体をつかむためにまずは、一枚のシートで全体が見えるようにするのである。

考えるべき項目

 このプランニングシートの各項目は、経営革新、新事業創出を企画する上で最低限考えておく項目と言える。まず今回は簡単に、各項目を説明する。

プランニングシートは①から⑦の7つの部分で構成されている。

プランニングシート
1使命・目標
まずは、「使命・目標」が大切である。ここでは、このビジネスをやる理由を明確にしていく。しっかりとした、目的がなければ、これから、苦難を乗り越えて、事業を推進していくことはできない。
1計画のコア・コンセプト
次に、具体的にやっていく事業の「コア・コンセプト」を明確にする。ここでは、「お金をいただく理由」である「付加価値」、「ライバルに勝つ理由」である「差別化」の2つが重要である。この部分は、中小企業新事業活動促進法でも、「革新性」と呼ばれ、審査の際に、重要視されている部分である。
1ビジネスチャンス(外部要因)と自社能力(内部要因)
次にビジネスチャンスがあるかどうかと、自分たちにこのビジネスをやっていく資格があるか、つまり「実現可能性」をみていく。ビジネスは、タイミングが悪いと同じビジネスでも失敗することがある。また、分不相応な巨大なビジネスをいきなり考えても実現する可能性は少ないだろう。ビジネスをやる上で、自分たちの能力やポテンシャルを十分考慮しておくことは重要である。
1具体化(実行計画)
ターゲットを明確にする。消費者やそのビジネスを喜んで受け入れてくれる人は誰か。また、どこにいるのだろうか。
1自社要因
次にやるのは自分たちの経営資源を整えることだ。つまり「ヒト・モノ・カネ」について経営資源をそろえ、再構築する作業だ。
1販売方法(展開方法)
そして、販売である。ビジネスにおいて、重要なのは、そのモノやサービスがお金に変わるかということだ。つまり、売れるかということ。ここは特別にしっかりと押さえていきたい。
1アライアンス
近年のビジネスにおいて、非常に重要になってきたファクターは「アライアンス」である。近年、複雑化してきていくビジネスにおいて、1社で完全に対応していくことは非常に難しい。従って、ひとつのビジネスを成功させるのに、緩やかな連携は不可欠である。ここでは、ビジネスを展開するにあたって、必要なパートナーは誰かを明確にしておこう。

定量でまとめていく

 プランニングシートの各項目ができあがったら、今度はそれを定量で裏付けしていこう。

  • ・これらの事業をすると、どのくらいの売上が出るのだろうか?
  • ・そのくらいの初期投資が必要だろうか?
  • ・どのくらいのランニングコストがかかるのか?
  • ・利益は、どのくらい期待できるのだろうか?
  • ・キャッシュフロー計画はどうなるのか?

 定性でしっかりイメージと全体像ができあがっていれば、これらはそれほど難しい作業ではない。自分の考えが、無理ではないか、いつまでにどこまでやれば良いのかを確認していく作業だ。

 定性的な要素と定量的な要素のまとめができれば、中小企業新事業活動促進法の申請書は、問題なく記入ができるはずである。

国からのメッセージ

 この法律の申請書がなぜビジネスプランの様式になっているのか? 私はこれは国から中小企業へのメッセージだと思っている。

 つまり国は、ビジネスプランを持って経営を行なえば、事業の成功率が上がりますよ、ということを伝えているのだ。コンサルティングの現場では、法律承認後のメリットよりも、申請書作成自体の効果があることも多い。それは、現状を見直し、自社の事業を整理し、未来や目標をしっかりと見据えるとことの重要性が顕在化した瞬間と言えるだろう。これらの申請書は中小企業はPDCAのP、つまりプランニングに課題があるという仮説をもとに、国が我々中小企業に警笛を促してくれていると捉えることができる。まずは、ビジネスプランを書いてみよう、そこから中小企業の経営革新が始まるのだ。

※PDCA……事業活動に欠かせないPlan、Do、Check、Actという4つの頭文字をとったもの。「計画を立て(Plan)、それを実行し(Do)、その結果を評価(Check)したうえで、さらなる改善を行なう(Act)」

折原 浩氏
 
著者・折原 浩プロフィール
株式会社ディセンター代表取締役。中小企業を中心に、経営革新(第二創業)、経営戦略、収益力強化、新規事業・店舗開発、ビジネスプランの作成指導など、コンサルタントとして活躍中。 埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、そのほかの地域を合わせて、およそ150件の中小企業新事業活動促進法(旧中小企業経営革新支援法)の承認申請サポートの実績がある。著書に『中小企業支援策のかしこい利用法―公的機関を使って行う経営革新』(プレジデント社)。

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