文●三品 純
いよいよ戦いの火ぶたが切って落とされた、第21回参議院選挙。年金問題や久間防衛相辞任、赤城農相の事務所費用問題など、自民党のスキャンダルの多さに隠れているものの、対抗馬と目される民主党・小沢一郎代表の現状もなかなか厳しいようだ。
民主党の支持率は急速に上昇している。
共同通信社が行なったトレンド調査(7月14日、15日実施)によると、比例代表で投票する政党は「民主党」と答えた人が27.2%、「自民党」が18.3%となっており、前回調査よりも差が1.9ポイント拡大している。順調に見える民主党の参議院選選挙だが、小沢代表がインターネット上で演説動画を配信したところ、批判が殺到するという事件が起きた。
7月9日、リアルタイムでユーザーがコメントをつけられる動画投稿サイト「ニコニコ動画」で小沢一郎民主党代表の年金問題などについての演説動画を配信したところ、「お前が言うな」「売国党」といった中傷・批判が集中し炎上した。この事態に運営側のニワンゴは急きょ、コメント書き込みを禁止している。年金問題や閣僚の不祥事で支持率を落とした自民党に対し、これを機に支持率を伸ばしたい民主党。しかし、小沢代表のインターネット上の評価はそれほど高くないようだ。民主党に詳しい政治記者はこう話す。
「小泉政権で注目されたアメリカ流新保守主義の“自己責任”という概念はもともと小沢さんが自著『日本改造計画』で提唱した概念で当時は官僚にも絶賛されました。それが小泉政権で新保守主義的な政策が進められると“格差拡大”や“弱者切り捨て”と批判しています。こういった変節ぶりに、アンチファンや失望したかつての支持者も多い。自民党を出て以来、一部の識者らに“いつかは政権を取る”と期待されていたのですが結局、解党・離脱を繰り返した行動に疑問を持つ人も多いのです。特に検索すれば過去の履歴がすぐに分かるネット上では自民時代と現在が丸分かりですから、ネット住民には反発を食らいやすいでしょうね」
もともとネット住民には「ネット右翼」と呼ばれる保守的な論断が強く、在日コリアンの二世や同性愛者の候補者を擁立するなど革新的な民主党に対して風当たりが強い部分もある。コアなネット住民に人気のある「ニコニコ動画」で少しはネット上の民主党アレルギーを減らそうとしたのだろうが、逆効果になってしまったようだ。
ネット特有の情報の暴走がある反面、アンチが指摘する小沢代表と民主党の問題点には否定できないものもある。松岡元農相や赤城農相の事務所費経費を追及する民主党だが、党内にはたくさんの爆弾と矛盾を抱えているのだ。
民主党はもともと新党さきがけと旧社会党のメンバーが中心になって発足し、その後、新進党の分裂した政党が集まってきた寄り合い所帯。政治資金規正法では外国団体からの寄付は禁じられているが、旧社会党出身者の中に社会党時代からの名残で北朝鮮関係の団体から献金を受けていたことが発覚している議員もいる。朝鮮総連系の在日本朝鮮群馬県商工会から献金を受けていたことが判明し、参議院副議長辞任した角田義一元参議院副議長や、自身が支部長を務める愛知県第5区総支部が北朝鮮系など外国企業数社から献金を受けた問題を起こしている赤松広隆衆議員などがそうだ。
さらに、小沢代表自身も資金管理団体「陸山会」が10億円を超す不動産を保有・運用していたことで批判を受けた。これは旧自由党が解散したときの政治資金を流用しており、小沢代表の個人名義だったことで、「非常識だ」と非難されたのである。その後、小沢代表は不動産の一部を公開したものの、すべてを公開したわけではない。
2004年に当時の菅直人代表(現代表代行)が自民党の年金未納問題について批判した直後に、自身の未払いが発覚して代表を辞任した。その後、民主党は与党のスキャンダルを批判した内容とまったく同じ内容で批判される現象が他にも相次ぎ、「ブーメラン政党」などとネット上で揶揄されることとなった。民主党の体質も決してクリーンなものではないのである。
今回、民主党はマニフェストで「『年金通帳』で消えない年金。国が責任を持って全額支給します」という約束をしており、その中で社会保険庁を解体して国税庁に統合すると言っている。しかし、民主党の支持母体である自治労(全日本自治団体労働組合)は社保庁の中でも非常に強い影響力を誇っている。民主党は選挙のスタッフとして自治労を活用し、一部メディアから「小沢自治労」と呼ばれるほど密な関係を築いているのだ。
「今回の参院選に民主党の比例区に出馬する斉藤つよし氏や相原久美子氏は自治労出身。彼らに国民サイドの年金改革ができるのか疑問が残ります」(前出政治記者)
しがらみに縛られている民主党員を率いる小沢代表が組織改革として約2万9000人の社保庁職員の大幅な削減など、大なたを振るうことが本当にできるのだろうか。 自民党の逆風という追い風を受けて、支持率を高めた小沢・民主党。とはいえ、仮に参院選に勝利したとしても、その後の道のりは決して楽ではなさそうだ。