アスキービジネス

ホーム > アスキービジネス > マネジメント

IT+行政支援で中小企業の経営をサポート IT経営情報局

今週のフォーカス
知っておきたい政治のカラクリ

文●三品 純

年金問題で参議院選挙の苦戦が予想される自民党。そのような逆風の中、6月20日に安倍政権が最重要法案の1つと位置づけた「教育再生関連3法案」が成立した。安倍首相念願の教育改革だが、現場の改善が不十分で「実態は骨抜き」との指摘がある。

第17回 安倍政権の最重要課題“教育改革”の意外な盲点


首相念願の教育再生関連3法

「教員免許法」「学校教育法」「地方教育行政法」の3つの改正法からなる「教育再生関連3法案」が20日の参院本会議で可決した。安倍首相自らが「最重要法案」と位置づけた同法は2009年より施行される。

「国と郷土を愛する態度を教育に取り入れる学校教育法などは安倍首相の念願だったはず」と全国紙記者は指摘する。

いじめよりも組合のメンツが優先

 一部メディアで報道されているが、教員のモラル低下や指導力不足については、生徒や父兄、現場の教員からも批判が噴出している。

「中学時代の国語の先生が“四面楚歌”という言葉を知らなかった」(岐阜県在住の高校生)。

「千葉県のある学校で給食前に“いただきます、といわなくてもいい”と指導した教員がいました。理由は“自主性を損なう恐れがある。いただきますといわせるのは強制にあたる”そうで驚いたものです」(千葉県の男性)。

 また都内のある教員は「国立市のある学校では生徒が8時15分に登校して、教員が8時30分に出勤するという時期がありました。8時30分出勤は労使交渉で勝ち取ったものだから、というのがその理由です。ではその15分間に何か問題が起きたらどうするつもりだったのでしょう」とあきれ顔だ。

 給食費の未払い問題や理不尽な学校へのクレームなど父兄にも問題があるケースがあり、単に教員だけに教育現場の荒廃の責任を押しつけるのは早計だ。しかし、教員側にも多くの問題点があるのも事実である。

 たとえば「いじめ問題」に関しても、こんな事例がある。改正前の学校教育法によって、学校には「校長」「教頭」「主任」の3者の管理体制が設置されている。しかし、日教組の影響力が強い北海道の一部の教職員の間では「教育権は教員にあり、校長らの指導は不当な支配」であるとしており、教育現場の実態調査すらままならなかったのだ。

「北海道では昨年、滝川市の小学生がいじめを苦に自殺しています。そこで道教育委員会が道内の教員にいじめの実態に関するアンケートを配布したのですが、北教組の強い反対で回答拒否が相次ぎ、回収率は全道で30%。いじめのような問題は校長の権限を強め、学校内の組織力を高めて現場の教師と協力しないと解決できないはず」と、ある教育ジャーナリストは指摘する。

文部科学省の関与が強まる改正法案

 このような問題を受けて、今回の改正された「教育再生関連3法案」。まず、「学校教育法」では小中学校に「副校長」「主幹教諭」をおき、指導体制を強化した。また「地方教育行政法」では「緊急に生徒らの生命・身体を保護する必要が生じた場合、教育委員会に対する文部科学相の是正指示権を規定」することを盛り込み、現場に対する行政の影響力を強めている。

「たしかに国の教育現場に対する権限が強化されると学校の自主性が損なわれるという反発も一面理解できる。しかし、昨年起こった高校の未履修問題や増加するいじめ事件の解決はある程度、国の教育方針などにも関わり、文部科学省などの関与が必要だと思う」(都内教員)。 さらに、「教員免許法」では10年ごとの教員免許更新制度を実施し、教員の指導能力向上をはかる。

不透明な点が多く、現場に丸投げの教育諸制度

 これら3法で政府は学校改革に着手していくが、その裏で問題点も指摘されている。

「新しい学校教育法では義務教育の目標を“国と郷土を愛する態度”にしています。確かにかけがえのない概念だけど、どう教えたらいいものか分からない。『国や郷土を愛せよ』なんて教えたら組合系の同僚教師や父兄からもつるし上げられる」と不安視する現場教師もいる。

 また、指導力強化を図る教員免許更新制度だが、「更新する時に受ける講習修了の認定基準があいまい。また講習を受けるときの講習会場が確保されていない県もあります。見切り発車の印象が強い制度。修了認定試験の内容や基準についても文部科学省は明確なガイドラインを作成していません。このままでは現場任せで有名無実の制度になるのでは?」(前出ジャーナリスト)との指摘もある。

 このように改正3法で指導体制が強化されたように見えるが実際は“現場丸投げ”の印象も強い。

教員の礎となる「教育実習」も改正3法ではおきざりに

 京都市教育委員会関係者はこんな話をする。「先日、全国紙に京都や滋賀県などで教育実習生を受け入れる際に、1万~2万円の謝礼金が教員に渡していたという批判記事が載りました。現場の教員が『給与の二重取り』をしているとった内容のこの記事の中には“文部科学省は教育実習指導を教員の本来業務としており”と書いてあります。しかし、文科省が教育実習を教員の本来業務とした通達、文書など存在しません。教師を育成する礎ともいえる教育実習制度でさえ、実際は現場の教員の“厚意”によるところが多く、制度できちんと整えられたものではないのです」

 つまり教員になる以前の教育実習制度でさえ“現場丸投げ”なのだ。さらに、教員になった後にも、内容不明確な教員免許更新制度が待ち受ける。「改正教員免許法では現場教員の指導力向上を掲げていますが、この教育実習制度についてはまったくおきざり。教育実習では大学の単位欲しさに受ける学生もいますが、実習はやる気のある学生を見出す絶好の機会なんです。しかし、教員になる前提の制度がこんな状態で放置されては、改正3法が“骨抜き”といわれても仕方がありません」(前出の教育ジャーナリスト)

 表面的な制度は完備したような改正3法だが、審議不足の批判通り現実的な諸制度の不備も目立つ。このあたりも参院選で批判を受ける要素になりそうだ。ただあくまで最優先すべきは「政局」ではなく、実際に教育を受ける「生徒」。質の伴う教育改革が求められる。

今週のフォーカス「知っておきたい政治のカラクリ」 記事一覧

Goマネジメントのトップへ

戻るトップページへ
アスキービジネスのおすすめ
登録は無料!今すぐ登録する方はこちらから 利用者登録がお済みの方はこちらからログインできます
最新ニュース

| ASCII.jp | デジもの | Mac/iPod | 自作PC | 科学技術 | ゲーム・ホビー | 話題 | 情報システム | ビジネス |

| 価格比較 | Microsoft | キャリア | SaaS・ASP | VPN | SHARP | Panaspot | 富士通 | 住まい情報局 |

| EPSON DIRECT | Wireless Gate | アキバ | ムービーフラッシュ | SpeedGun | デジタル用語辞典 | Blogmag | アスキー365 |

サイトポリシー | プライバシーポリシー | 運営会社 | お問い合わせ