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今週のフォーカス
知っておきたい政治のカラクリ

文●三品 純

中国のお騒がせ「偽ディズニーランド」騒動など記憶に新しいが、サービス業の多角化やインターネットコンテンツの増加など新たなビジネスフィールドが生まれるにつれ、知的財産権に対しての関心が高まっている。6月12日に成立した改正弁理士法の実態を探る。

第16回 法改正で、弁理士が企業の不可欠な戦力に


時代の追い風を受ける弁理士資格

 6月12日、弁理士の定期研修の義務化などが追加された改正弁理士法が衆院本会議で成立。2008年度から施行されることになった。

 特許権、実用新案権、意匠権および商標権など産業財産権の権利取得までの手続きを行う弁理士。

 ある弁理士は「サービス業の多角化やインターネットなどのコンテンツビジネスが活性化することで、意匠権や商標権に関するトラブルが増加しています。たとえば外食店の店名の“パクリ”などは珍しくありません。高まる知的財産権の権利保護意識は、特にビジネスの分野でいままで以上に注目が集まっています」と指摘する。実際、平成14年度で7176人だった弁理士試験の志願者が、平成18年度で1万60人に増加している。

多業種で噴出する産業財産問題

 ニーズが高まる弁理士だが、その一方、産業財産に関するトラブル、特に商品やサービスのマークなどを保護する「商標権」やデザインを保護する「意匠権」の問題は複雑化している。

「商標権に関する有名なトラブルでは居酒屋チェーン・三光マーケティングフーズの『月の雫』と、モンテローザの『月の宴』との争いです。2000年11月にオープンした『月の雫』の看板や店内を、後発の『月の宴』が模倣し、三光は2003年に名称の差し止め訴訟を起こしました。一方、モンテローザ側も請求棄却を求め全面的に争う構えを見せましたが、2006年9月に和解。和解の条件は明かしていませんが、おそらく争っているイメージは客商売としてマイナスになると判断したのと、三光は業界トップのモンテローザに対して争い続けるのは得策ではないと思ったのではないでしょうか」(飲食業界に詳しいジャーナリスト)

 背景として三光サイドに分があるようにも見えるがなぜ“和解”だったのか。前出の弁理士はこんな事例をあげる。

「読売新聞が不動産業や教育産業などを手がける読売企画販売会社を相手に、“読売”の名称差止請求を起こしました。2004年11月に判決が出て、被告は読売の名称の削除・不使用を命じられました。同訴訟で決め手になったのは同紙が日本最大の部数を誇り、全国区の知名度を持つと認められたからです。一般に広く認知されている点が商標権にとって重要な条件。『月の雫』のケースは全国的な認知度を持つとは言えないと裁判所に判断されたのでしょう」(前出弁理士)

 また意匠権に関する有名な判例としてアップルの「iMac」とソーテックの「e-one」の訴訟がある。

「両社は2000年1月に和解。ソーテックが和解金の支払うこととe-oneの発売中止で合意に至りました。これもアップルの知名度、そしてiMacというパソコンの独自のデザインが消費者に与えたインパクトやユーザーへの影響力が強いと判断されたからです。ただしこれはレアケースでよほど独自性がある商品でないと、意匠権の立証は難しいのです」と解説する。

権利者にも負担!? 中国の仰天対応

 さらに昨今、中国など東アジア、東南アジア地域を中心とした海外での意匠、商標権に関するトラブルも多発。「2002年度で1万5511件だった中国への特許出願が2004年度で2万5542件に増加。意匠権、商標権の出願数も軒並み伸張するにつれて、トラブルの増加につながっています」(前出弁理士)

 政府や各企業が対海外への産業財産保護策を強化しているが、最も頭が痛いのは、最近“偽ディズニーランド騒動”で話題になった中国だろう。 「2005年に中国に進出、取引している企業134社を対象に行なったJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)の調査で知的財産の侵害を受け、中国側に申し立てをし、実際に救済を受けていた企業は67社もありました。しかし、知的財産侵害品と認められても、その侵害した商品を店頭から撤去したり、その処分に必要な管理や廃棄のコストは権利者の負担とするよう中国側に命じられた例もあります」(経済産業省)

知的財産に関わるプロづくりが期待される今回の法改正

 ビジネスのグローバル化が進み、中国など権利意識が欠如した国に進出する日本企業は多い。そういった新たなビジネス環境は、今回の法改正に影響を与えている。

 特許庁は今回の改正のポイントを「弁理士試験の免除が拡大した他、弁理士登録をする人への実務実習制度の導入、弁理士への定期研修が新たに盛り込まれています。人材確保や育成を重視している点、また外国へ特許出願などの資料作成に関する支援を弁理士の業務として明確化しました」と説明する。

 前出の弁理士は「歴史的にも弁理士の主業務は特許出願でした。現在も弁理士の主業務は特許出願に関する手続きなんです。弁理士の数だけを増やすのではなく、商標権や意匠権など他の権利関係にも精通した人材を育成しないと昨今の知的財産の問題にはとうてい対応できないでしょう」と従来の弁理士業務の課題を指摘した上で、本改正法の意義を強調している。

「改正法は商標権などの紛争により柔軟に対応できるよう弁理士の扱う特定不正競争行為の範囲が拡大されています。また増加する海外の模倣品に対しては“知的財産権侵害物品の輸出入差止手続等における輸出入者側の代理業務”が追加されています。商標権や意匠権をより重視した内容になっています」(前出弁理士)

 これまで“特許出願代行業”のイメージが強かった弁理士だが改正法によって、知的財産に関わる総合的なプロフェッショナルに変貌することが期待されている。

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