文●三品 純
議員の調査・研究のために、給与とは別に支給される「政務調査費」について、全国の市民オンブズマンなどから追求の声が上がっている。政務調査費は多くの都道府県・政令指定都市で領収書を提出する義務が無いことから、議員が好き放題に使える「第2の給与」としての側面を持つ。民間企業の不正会計に対する取締りが強化される中、政治の会計にはまだまだ不透明な点が多い。
今年3月、松岡利勝農相が賃料、光熱費などを必要としない国会議員会館で高額な経費を計上していた「事務所費問題」が批判を浴びるなど、国会議員と金をめぐる不透明な関係は後を断たない。「ナントカ還元水」といった要領の得ない松岡農相の回答などに対する世間のバッシングから、与党は事務所費用の適性処理について、5万円以上の支出に対し領収書添付を義務付ける法案を今国会に提出する意向。これに対して民主党は「1万円以上の支出(人件費をのぞく)に対して領収書を添付する」という独自案を提出している。
松岡農相の問題を契機にグレーゾーンだった「事務所経費」にもようやくメスが入れられようとしているが一方、このような怪しい金の流れを持ちながら、一切メスを入れられていない問題がある。それが地方議員に支給されている「政務調査費」だ。
そもそも政務調査費とは地方議会の議員が調査・研究活動に使う経費のこと。現在、この政務調査費の使途をめぐって一部自治体、議員に批判が集まっている。
地方自治法100条13項にはこうある。
「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない」。
政務上で有意義に使用し、地域に役立てられるならば結構な話。ところが問題は後半部分にある通り、交付の対象、額、交付方法が各自治体で異なるという点にある。
14項には政務調査費の支出の報告書が義務付けられているが、領収書の全面公開を義務付けている自治体は長野県や宮城県など4県・1市のみ。このため政務調査費を議員が私的流用するケース、海外視察と銘打ちながら同費を使って実質、物見遊山の観光旅行になっていることもある。これがいわゆる政務調査費の「目的外使用」。つまり政務調査費が「第2の給与」として、単なる議員の“お小遣い”になっているという問題があるのだ。
4月26日、東京都墨田区議会の2005年度の政務調査費約1030万円の使用状況をめぐって、自民、公明、民主クラブなど4会派が「使途基準に反した目的外使用」と指摘された。調査費の使用状況に批判が集中する中、この通り今でも不透明な目的外使用は続いている。
自らも政務調査費を利用し、海外視察をした経験がある某自治体の元県議は反省交じりにこう語る。
「ある年に観光事業や美術館建設の参考にしようと議員団と欧州視察に行きました。イタリアやフランスで著名な美術館を見ようというのですが、美術館はたったの1カ所で他の観光地めぐりが中心だったのです。当時はまだ私も新人議員で、帰国後は報告書をまとめないといけませんから“これはさすがにまずいだろう”と思いました。ところがベテラン議員は“心配しなくてもいい”というのです。というのもこの視察団を組んだツアー旅行代理店が代わりに報告書をまとめてくれるんですよ。もちろんこの旅行の報告書が自治体の観光事業や美術館建設に役立ったことはありません」
こうした本来の視察とはかけ離れた視察、政務調査費の流用が全国で相次いでおり、中には返還をめぐって訴訟にまで発展する自治体もある。
「特にこうした不正なカネの流れは都市圏の議会に多い。やはり領収書なしというのは問題がある」とは前出の元県議。
政務調査費の不正流用が批判されるそもそものきっかけとなったのは都内の議員団である。それが2006年12月に発覚した、いわゆる“目黒ショック”と言われる東京都・目黒区議会、公明党議員団の私的流用問題だ。やはり大都市圏は政務調査費のムダ遣いの温床なのだろうか? 地方議会の公費問題に詳しい佐賀大学の畑山敏夫教授はこう指摘する。
「要するに政務調査費は自治体の人口に比例するんです」
つまり人口の多い自治体ほど政務調査費は多く交付されるのである。同教授はこう続ける。
「政務調査費は私の地元の佐賀県県議ならば月30万円、お隣の福岡なら月35万円。これが都議会になると月60万円になるんです。都議会の場合はこれが領収書不要というのだから“第2の給料”と揶揄されても仕方ないですよね。また東京よりも人口が少ない地方であっても悪質なケースがあって、兵庫県議会のある議員は車のローンや家族が経営する会社の事務所家賃を政務調査費から捻出していました。また海外視察にしても本当に視察をした形跡もない悪質なケースが多く、慰安旅行の海外視察でも“観光振興を参考にしている”と開き直る議員もいます。有権者の信頼の元に託された特権であることを認識してもらいたいですね」
国政と異なりマスコミや有権者からの注目度が低い地方自治体の議員だが、意外に根深い利権の温床があった。国会議員の事務所経費同様、この政務調査費も全国的に改善策を進めていくべきではないだろうか。