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今週のフォーカス
知っておきたい政治のカラクリ

文●三品 純

ついに日本企業が外資に食い荒らされる時代がやってくる!? 政府は4月13日、外国企業が日本に設立した子会社を介し、現金でなくても株式交換で企業買収ができる「三角合併」の諸条件が整ったことを公表した。本年5月に解禁日を迎え、いよいよ三角合併が活発化していく。

現ナマ不要の企業買収、“三角合併”が始まる


 そもそも“三角合併”とは何か? とあるマネー誌編集長が解説する。

「例えば、三角合併によって海外企業X社が日本企業Z社を買収する場合以下のようなケースが考えられます。まず、Xは日本国内に100%子会社のY社を作ります。この子会社YがZ社を吸収合併しようとする際、親会社X社の株をZ社に交付するのです。これは事実上、X社がZ社を買収したことと同じです。これまではY社がZ社の株主に現金あるいは自社株を対価として交付しなければならなかったのが、親会社株でも良いことになったことです。これが“合併対価の柔軟化”(会社法 第749条)と呼ばれるもの。この扱いをめぐって政財界から異論が相次いだため、2006年の会社法施行後、1年間にわたって実施が引き伸ばしにされていましたが、今年の5月1日からスタートするわけです。これで買収に際して必ずしもキャッシュが必要ではなくなったので、買収のためにあえて多額の資金調達をしなくてもいい。これからますます海外企業による国内企業の買収が促進されると経営者たちは戦々恐々としています」

三角合併図1
三角合併のイメージ図。海外企業Xは日本国内に100%子会社のY社を作る。この子会社YがZ社を吸収合併しようとする際、親会社X社の株をZ社に交付する。これまではY社の自社株とZ社の株を交換する必要があった
三角合併図2
その結果、X社の100%子会社であるY社はZ社を吸収し、1つの会社になる。また、旧Z社の株主は、X社の株主となる

 日本ではまるで“侵略者”の来襲のような印象がある三角合併をだが、その一方、アメリカでは活発に行われている。

 昨年、話題になったgoogleのYou Tube買収も三角合併によるもの。また日本企業では90年代に京セラが三角合併を利用し、アメリカのエレクトロニクス企業AVXを自社株で買収したことがある。ただしこれはあくまで米国内での話。

時価総額の安さが泣き所

 グローバルな企業買収が行われる際に、日本企業には弱点がある。それは収益力の低さなどに起因する時価総額の安さである。

 一部上場企業の法務管理担当者はこんな見方をする。

「ライブドアのニッポン放送買収騒動があった頃、ライブドアの時価総額を見ると日立など伝統ある国内有数企業の時価総額とほぼ同じ額だったんです。確かに当時のライブドアは勢いがあったけど新興企業には違いない。要するに日本企業の時価総額は安すぎるのです。時価総額に比べて、株価の安い企業は注意すべき。具体的な業種を挙げるならば第一に鉄鋼メーカーなどがターゲットになるかも」

 この言葉通り、日本企業と海外企業の時価総額の差は歴然。国内大手製薬メーカー・武田薬品工業の時価総額が約4兆円。これに対し米・ファイザー社は約30兆円。飲料大手のキリンは1兆円に対して、コカ・コーラ社は13兆円という具合だ。

「三角合併では時価総額の高い方が有利になります。より少ない株数で交換できるからです。このため国内企業は海外企業による買収を懸念しているのです。特に鉄鋼、製造といった体質が古い企業はなおさら脅威に感じているでしょうね。例えば新興のIT産業だとソフトバンクの時価総額は3.5兆円。これは住友金属、三菱重工業より高い数字です。もう従来のブランドや知名度では買収に太刀打ちできないのです」(証券会社投信担当者)。

 となると時価総額向上や敵対的買収対策を検討しなければならないわけだ。ところがそう簡単にいかない。

「粉飾決算や株式分割で時価総額を上げようとすると、堀江(貴文)氏の二の舞になってしまう(笑)。また敵対的買収対策をやりすぎてしまえば、投資家に経営者の保身に映ってしまいます。 今のところ日清食品と明星食品、キリンビールとメルシャンなどのように同業種間での友好的買収で規模を拡大するのが最適な対策となっていますが、むしろ抜本的に日本の企業体質を変え、時価総額を高める努力をしなければいけません」(前出法務管理担当者)

株主に利があれば外資でもOK?

 また日本の投資家や市場関係者の意識も変わっているようだ。日経新聞が2005年3月に経営者や市場関係者に行った「会社はだれのものか」というアンケートに対して、「会社は株主の物」という回答が9割を占めていた。「結局、投資家も経営者も外資、国内企業を問わず株主にメリットを与えた方が選ぶ、ということでしょう」(前出マネー誌編集長)。

 三角合併を“脅威”と感じるか、逆に企業体質改善の“チャンス”とするか。いずれにしてもこの5月から国内企業各社は企業価値の向上を進めていかなければならない。

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