文●三品 純
いよいよ、今週末の4月8日に迫った統一地方選前半戦。13都道県知事選と4政令市長選が実施される中、各メディアの世論調査では東京は石原慎太郎候補がリードしていると伝えられる。唯一の対抗馬と目される浅野史郎氏も必死で無党派層の支持を狙い、“多方面”にアピールを展開。しかし、“人権派”というイメージには意外な利権が隠されていた?
今週、投票日を迎える東京都知事選、現職の石原都知事、元宮城県知事・浅野史郎氏、共産党推薦の吉田万三氏ら候補者が激しくしのぎを削る。朝日新聞が3月31日、4月1日に実施した情勢調査によると、自民・公明両党が支援する石原氏は自民支持層8割、無党派層5割の支持を受けている。一方、民主・社民が支援する浅野氏は民主支持層から7割、無党派層から3割にとどまっており、石原氏にリードされている現状だ。 もともと無党派層からの支持を重視し、出馬の意向を固めた浅野氏にとって無党派からの支持率低迷はあまりに痛手。こうした状況もあってか30日にはこれまで断っていた民主党の応援演説を解禁。菅直人民主党代表代行と選挙カーに同乗し、支持を呼びかけた。
さらに浅野氏は31日、異例の“あの場所”で街頭演説を行った。ゲイの聖地とされる新宿二丁目・中通りだ。過去に“新宿二丁目は景観が悪い”と発言した石原都知事との対立軸を鮮明しようと浅野氏は性同一性障害をカミングアウトした世田谷区議・上川あや氏、同性愛者を公言している大阪府議・尾辻かな子氏、同じく同性愛者で中野区議に立候補を表明している石坂わたる氏らと街宣カーに立って、性同一性障害問題について演説を行なった。
そもそも浅野氏といえば東大大学院教授の上野千鶴子氏らジェンダー論者が名を連ねる女性勝手連の支持を受けており、性教育、男女共同参画教育などの拡充を促している。だがこの性教育や男女共同参画という点について、不安視する現場教師、保護者も多いのだ。
東京国立市内の小学校に勤務していた元男性教諭はこうふり返る。
「小学1年生の保護者から『子供が“インターセックス(性分化・発達障害)”という言葉を学校で習った』という相談を受けました。それで調べてみると1年生の担任3名がジェンダー性教育を実施していたんです」
もちろん性同一性障害やHIVなどについて偏見や差別があってはならないが、小学一年生に“インターセックス”の知識が必要かどうかは論を待たないだろう。人権、性問題、男女平等これらが重要な問題であることは間違いない。ただその扱いによっては逆差別、さらには利権の温床になることもある。
2000年に施行された男女共同参画社会基本法によって単年度で総額約10兆円の予算が計上された。
これによって各県に男女共同参画関連の施設が乱立。そのシンボリックな施設でもある埼玉県の「国立女性教育会館」は運営費年間10億円が投入されているものの、予算に対して利用実績が乏しく“バラマキ”だという指摘もある。
また大阪在住の男性はこんな話をする。
「大阪にはこの関連の施設が約30棟もあります。例えば大阪・豊中市の男女共同参画センター『すてっぷ』は約50億円を投じて作られましたが、いずれの施設も利用条件は男女共同参画に関する集会や学習会であること。だから利用は限られる上、使用料も安いため補助金がなければ成立しません。つまり男女共同参画事業とハコモノ行政、バラマキ行政は一致する可能性が高い」
実はこのすてっぷの元館長・三井マリ子氏も浅野氏の呼びかけ人の一人。三井氏はかつてPCソフト『直子の代筆』のネーミングが男女差別と訴えたほどの強烈なジェンダー思想の持ち主。こうした人脈からの支持を受けて選挙活動を展開する浅野氏は人権施策を強調する。
ただしこうした施策は行き過ぎると“逆差別”になりかねない。特に「改革派知事とされる人物の人権意識は疑問が残る」とは鳥取県在住の男性。
「浅野さんと同様に“改革派”と称された片山善博元鳥取知事は博物館など大型開発を見直し、就任当時の県債5000億円を4600億円まで削減しました。ところが人権施策になるとあまりに安易な制度が多い。例えば、「男女共同参画推進認定企業」という制度を発足させました。要するに男女共同参画事業に熱心な企業を公共工事の入札を優遇するというもの。逆に入札のための参画事業か? と県内では批判も多い。参画事業は学習会や研修も必要なので予算もかかり中小・零細企業には難しいのです。だから同制度は“中小企業いじめ”だという指摘もあります。片山氏も浅野氏も改革派とされる知事の人権意識はあまりに急進的で教条的に思えます。奇しくも2人とも退任したら慶応大学の教授になっている点も共通していますが(笑)」
また浅野氏が宮城県の知事時代に推進した宮城県の高校共学化の反対運動を行なった地元大学院生も浅野氏に対し、同様の見方をする。「県債が増える中で県は『県立高校将来構想』を立て、県内の高校の共学化を進めてきました。浅野さんの出身高校の仙台二高も県債が増える中、1億円近くの予算を投じて共学になったんです。“共学=男女同権とは直結しない”と地元では反対意見も多かったのですがね。それに“子供”“女性”といった弱者をダシに大型開発をするフシがある。総事業費が約150億円以上と赤字になるのはミエミエだった『宮城県立こども病院』そうです。反対意見が多かったにもかかわらず、彼の鶴の一声で建設が決まりました」
男女同権に必ずしもハコモノが必要だろうか? 住民は“改革派”というイメージの裏に隠された人権意識を見極めるべきだろう。聞こえの良い「人権」「男女同権」という言葉を多用する候補者が、問題に真剣に取り組んでいるのか否か、有権者は注視する必要がある。