文●三品 純
投票日まで10日を切った東京都知事選挙。過去最少の立候補者だった前回の5人を大幅に上回る、14人が立候補しているものの、実質は石原慎太郎氏と浅野史郎氏の一騎打ちと言われている。しかし、残りの候補者の中には単に泡沫候補と言えない役割を担った人物もいるようだ。
22日に公示日を迎え、都知事選レースもいよいよ本番を迎え活況になってきた。立候補者数も前回2003年の5人を上回る14人と多く、個性豊かな顔ぶれが並ぶ。1991年、1999年、2003年と都知事選に出馬している発明家のドクター中松氏、タレントの桜金造氏といった有名どころから、また一部カルト的な人気を持つ路上音楽家で反管理活動家の外山恒一氏などさまざま。
いわゆる“泡沫候補”とされる人々も多数参戦している今回の都知事選。都道府県知事への立候補には300万円の供託金が必要となり、得票数が有効得票総数の10%の数値を下回ると供託金没収の憂き目にあう。落選した上、資産を失うリスクを負ってまで出馬する価値があるのか疑問が残る。
まずは彼ら変り種候補者たちの一部を紹介しておこう。1991年に初めて都知事選に出馬したドクター中松氏は当時、政見放送でこう語っている
「環境を守るには私が開発した排気ガスを出さない“エネルクス”しかない。ノストラダムスの大予言の中に“20世紀の後半に日本から石油を使わないエンジンの発明をした人が出て世界を救う”とあった。政治と環境を救えるのは発明家だけ」
こう自身の発明品や経歴を交え、アピールした。今回、同氏のマニフェストを見ると、再び珍発明プランが明かされている。「排気ガスが全く出ないHOD(水素エネルギー)」「北朝鮮からのミサイルをUターンさせる発明」など仰天プランが並ぶ。この通り、1991年からビックリ発明を政策に掲げてきた中松氏だが、ご本人にはどんな思いがあるか。同氏を古くから知るある男性はこういう。
「製品のPRとか自己顕示欲と指摘されるけど、これまで出馬して彼の発明品がバカ売れしたなんてことはないでしょう。実は中松氏は大変、吉田茂元首相を尊敬していましてね。まあ政治活動は利害を超えた一種のライフスタイルですよ」
こんな中松氏だが今年で79歳と石原都知事より年上。年齢を考えると今回が最後の都知事選になるかもしれない。
一方、ドクター中松氏と並び強烈な存在感を放つのが外山恒一氏。「反管理教育」を掲げ、高校時代から学生運動に身を投じてきた外山氏は、傷害事件などで2002年から約2年間、服役している。また25日の政見放送でも「こんな国は滅ぼせ、私には建設的な提案などひとつもない。スクラップアンドスクラップ、すべてをぶっ壊すことだ」と意気軒昂だ。具体的な政策などは何ひとつ明かされないが過激発言だけはインパクト十分。
外山氏といえば90年代初頭、「週刊SPA!」誌上で連載されていた「中森文化新聞」に投稿するライターとしても活躍。こうした前歴もあって20~30代にカルト的な人気を誇るのだが、当時を知るコラムニスト・中森明夫氏も外山氏の出馬に驚いたそうだ。
「ニュースを見てビックリしたよね。政治活動には熱心だけどまさか都知事選とは(笑)。彼に『SPA』で書いてもらうとき、“君の政治スタンスに共鳴したのではなく、単にライターとして面白いから起用したんだぞ”って話したくらいで、彼の思想性に興味があったわけじゃないんです。それより供託金300万円をどうやって用意したんだろうね? 金を貸しているから、返してほしいんだけど(笑)」
いずれにしても“お祭りムード”さえ漂う各珍候補者たち。この中に今回の選挙で意外に大きな役割を負わされた人物がいる。タレントの桜金造氏だ。桜氏についても興味本位の見方がされがちだがこちらは、実はほかの候補者たちとは違い、ある思惑が託されている。すでに一部報道で桜金造氏が熱心な創価学会員であることも明かされているが、桜氏の出馬について公明党や創価学会の内情に詳しいある男性はこう指摘する。
「公明党とその支持母体である創価学会は長年、地方出身者を対象に福祉や労働問題を訴え、支持者や信者を集めてきたという経緯があります。つまり公明党も創価学会も福祉政策は最優先課題。ところが石原都政になって福祉政策に不満を訴える関係者が増えてきたのです。ただし公明党としても石原支持路線は変更できないし、もちろん福祉をウリにする浅野氏にも票を渡すわけにはいかない。そこで苦肉の策として、浮上したのが中堅タレントの桜金造氏。これ以上のビッグタレント候補を擁立すると真剣勝負になりますから(笑)。不満を持つ支持者に対して、桜氏立候補でガス抜きをしてもらおうというのでしょう」。
明らかに“泡沫候補”と思しき候補者が多く並ぶ今回の都知事選だが、桜氏については重要な役割が託されたようだ。本人も学会票を意識してか「生活保護や児童福祉を訴える」と表明。事実上、石原対浅野の一騎打ちとされる勝負を左右するのは意外と桜金造氏かもしれない。
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