文●三品 純
第16回統一地方選挙が告示され、13都道府県で知事選がスタートした。12年ぶりに統一選と参院選が重なるということで、参院選の前哨戦となる統一選の注目度は高い。
東国原 英夫(ひがしこくばる ひでお)宮崎県知事に続けとばかりに、有名人も多数立候補する今回の選挙。さてどのようなパフォーマンスが飛び出すのだろうか。
4月の統一地方選に向け、各地で続々と候補者たちが名乗りを挙げている。
東京都知事選ではすでに立候補を表明している石原慎太郎現都知事、浅野史郎、黒川紀章、吉田万三各氏が15日、公開討論会に参加したほか、揃ってTV番組にも出演。またドクター中松、タレントの桜金造らも出馬に意欲を見せており、都知事選レースはますます加熱しそうだ。その一方で東京以外の地域でも話題は豊富。18日には岩手県議で覆面レスラーのザ・グレート・サスケが県知事へ立候補を表明。さらに70年代、お菓子のCMで一躍、人気になったムキムキマンこと対馬誠二も青森県議に立候補している。1月の東国原宮崎県知事の当選が各氏の政治熱に火をつけてしまったのか、ユニークな顔ぶれが並ぶ。
増加傾向にある無党派層の票を取り込むには、彼らのような知名度も有効だ。これに個性的なパフォーマンスを加えて、有権者にアピールすればより効果的、となる。前出のサスケ議員といえば、03年「マスク姿での議会登院」を公約に掲げ岩手県議に当選。一時期は、増田寛也同県知事及び一部議員が覆面スタイルに対して異論を唱えたが、最終的には容認され現在もこの姿で議員活動を続けている。同氏の場合はパフォーマンスが功を奏した典型的なケースと言える。かつて森永のCMで自慢の筋肉美とエンゼル体操を披露した対馬氏にとってもこの前歴はぜひ選挙でも活用したいところであろう。
ただしパフォーマンスの内容によっては逆効果であることも確か。過去の都知事選でいえば93年に自民党から立候補した磯村尚徳氏も、小沢一郎自民党幹事長(当時)の指示で“庶民性”を演出するため、銭湯で老人の背中を流した。しかし、『週刊朝日』連載の名コーナー「山藤章二のブラック・アングル」でこの模様が風刺画にされるなどマスコミを通じて有権者に伝わり、「国際派」のイメージが瓦解したため落選してしまったこともある。
政治手腕、政策内容で勝負したい候補者にとってはむしろ下手なパフォーマンスは命取りかもしれない。その良い例が2006年4月の衆院補選千葉七区での一幕だ。
同補選では民主党の太田和美(現衆院議員)が自民党・斎藤健氏を僅差で破り当選。太田氏は週刊誌などでキャバクラ嬢だった過去を報じられたことも話題になった。一方、東大卒で通産省(当時)出身のエリート、斎藤健氏もあるパフォーマンスが原因で失笑を買い、今でも語り草になっている。それが当時、自民党幹事長だった武部勤が考案したとされる“最初はグー、サイトウケン”である。これは選挙運動中、斎藤氏と支援者らはひたすら拳を突き上げ「最初はグー、サイトウケン」と連呼したものだが、むしろ有権者や関係者に冷ややかな笑いを提供するハメになってしまった。
この模様は政治評論家の三宅久之氏がTV番組内で「自民党内では最初はグー、武部はパー! と言われている」などと暴露されたほど。また民主党陣営からは斎藤氏の前職が埼玉副知事で落下傘候補だったことから「サイタマケン!」と皮肉られる始末。
当時の内幕について今年3月4日、千葉県流山市内で開催された斎藤健氏の講演会で本人自ら語っている。実はこの講演会、そもそもは都知事選に立候補した浅野史郎の講演会と斎藤氏を交えた両者のフリートークという二部構成だったが浅野氏が多忙を理由に急遽ドタキャン。結局、斎藤氏の独演会となり自らの政治信念などを話し始めた。急な変更に間が持たなかったのか話は“最初はグー、サイトウケン”の自虐トークに。
「会う人、会う人にあのパフォーマンスは『寒いからやめた方がいいんじゃないですか』と言われたけど、逆にそれほど広まったんだって驚きました」。
そして話題は発案者・武部氏へ。
「落選後、武部さんが『惜しい。あれが秋の参院補選の頃だったら、甲子園で話題になったハンカチ王子の斎藤佑樹クンがいた。それならキミが演説中、ハンカチを出して斎藤です、といえばウケた』とおっしゃるので、それはどうかなって(笑)」
ジャンケンの次はハンカチ王子とは、やはり“武部はパー”と失笑されるのも無理はない。そもそも斎藤氏は通産省時代に日米自動車交渉、道路公団民営化を担当するなど要職を歴任、その手腕と能力は政界からも評価が高かった人物。寒いパフォーマンスが勝負の分かれ目となった。
余談だが武部氏は05年の衆院選に現在、証券取引法違反などで実刑判決を受けている元ライブドア社長・堀江貴文被告の応援演説に立ち「わが息子です、弟です」と訴えたのも記憶に新しい。結局は亀井静香氏に2万票以上の差で敗れた。
ある全国紙政治記者はこう指摘する。
「パフォーマンスといえば小泉元首相が上手だと言われたけど、本人の口癖や雰囲気から自然に出てきたもの。最近だと麻生太郎外務大臣の言動が人気で、記者会見中に久間章生防衛相のモノマネをしたり、ネット上でアンチが多い朝日新聞の記者を質疑で言い負かしています。要するに本人の確固たるパーソナリティーがあって、はじめてパフォーマンスが面白くなる。狙ってできるものじゃありません。本人たちもパフォーマンスとは思ってもいないでしょう」。
やはり際立つ個性や信条があるからこそ言動や行動が面白くなるというものだ。“劇場型政治”と言われる昨今、パフォーマンスはさらにエスカレートしている。確かに戦略上、こうした“演出”も必要だろうが、ハンカチ王子が人気だからといって、パフォーマンスにハンカチを使っても、冷や汗を拭くのが精一杯だろう。