心理学者 内藤誼人
「こちらを立てれば、あちらが立たず」。上司と部下の板ばさみに苦しむ管理職は多い。どうすれば、上司をうまくケアしつつ、部下の仕事の生産性を高めていくことができるのか。
「理想の上司になる10の心得」に続く、管理職のための心理学第2弾として、心理学者の内藤誼人がアドバイスする。
最近、部下の1人がめきめき力をつけ、私よりも結果を出すようになりました。上司でありキャリアも長く積んでいる以上、本来は部下を引っ張る立場でなければならないはずであり、引け目を感じてしまいます。いっそのこと、上司に言って優秀な部下は私より昇進させられないか相談してみようかとすら思っています。今後、部下とはどのように付き合えばよいのでしょうか。
優秀な部下は積極的に引き上げ、「一流の選手」よりも「一流のコーチ」を目指せ
仕事に関してどうしても部下に敵わないと感じたなら、潔く負けを認め、部下を自分の地位よりも引き上げてあげるべきです。たとえ選手としては二流と言われても、優秀な部下を見出し引き上げた名コーチとして、あなたは一流の上司という評判を勝ち取ることができるでしょう。メジャーリーガーのイチロー選手を見出したことによって有名なスカウト、オリックスの元編成部長、故・三輪田勝利氏のような人もいます。イチロー選手が「いまの自分があるのは三輪田さんのお陰」と言っているように、引き上げてもらった部下も、いつまでもあなたに恩義を感じることでしょう。
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| イラスト 中野スカ |
たとえばパソコンなどの新技術の知識に関しては、年齢の若い人のほうが優れているのは当然のことです。この場合、少しでも早く知識を吸収するためにも、いっそのこと素直に頭を下げて教えを請うべきです。上司だからとふんぞり返って「ちょっとやってみせろ」などと言っていては、かえって部下から反発をくらうだけです。部下に弟子入りするぐらいの謙虚な気持ちで接すれば、部下も気持ちよく教えてくれるでしょう。
ITなどの新技術の習得は、たいてい地位の低い人(=年齢の若い人)から徐々に地位の高い人(=年齢の高い人)へと進んでいくものです。あなたが習得すべき時に、上司としての変なプライドが邪魔して習得するチャンスを逃してしまうと、いずれあなた自身の上司から「このパソコンの使い方知っているかね」と聞かれたときに、非常に肩身の狭い思いをすることになります。 「まず私が勉強してからご教示しますので、少し時間をください」と言って納得してもらえる上司ならまだ良いですが、「君の部下に聞くから、若いのを1人紹介してくれ」と言われてしまっては、中間管理職としてのあなたの存在意義すら問われかねません。
仕事ぶりに関しても、部下の力の方が上だと思ったなら、素直に負けを認めて教えを請うことです。そして優秀な部下は、自分よりも上の地位に引き上げるように努めるべきです。
引き上げた以前の部下に対しても、あなたは引け目に感じる必要はありません。たとえ上下の立場が逆転したとしても、自分の能力を認め、引き上げてくれた相手に対しては、いつまでも恩義を感じるものです。それに、「亀の甲より年の功」というように、いかに優秀な人間でも、経験不足ゆえに知らないこと、できないことは必ずあるはずです。あなたが部下にはない、何か他人に誇れるものさえ持っていれば、あなたへの敬意がなくなることはないでしょう。心理学では「ハロー効果」もしくは「波及効果」と言いますが、たとえ仕事とはまったく関係のないことでも、他人が知らないこと、出来ないことができる人は、まるっきり無能扱いされることはないものです。
中間管理職の立場の人は、自らも良い選手でありながら、かつ後輩の選手を指導するコーチとしての手腕も求められるものです。たとえ選手としての仕事ぶりでは部下に劣っていても、自分が引き上げた部下が活躍すればするほど、その部下を見出したあなたのコーチとしての評価は高まっていくことでしょう。
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