心理学者 内藤誼人
「こちらを立てれば、あちらが立たず」。上司と部下の板ばさみに苦しむ管理職は多い。どうすれば、上司をうまくケアしつつ、部下の仕事の生産性を高めていくことができるのか。
「理想の上司になる10の心得」に続く、管理職のための心理学第2弾として、心理学者の内藤誼人がアドバイスする。
M&Aによって会社の所有者が変わり、新しい経営方針が示されました。なかにはセンスの悪い制服や独特の言葉遣い、守るべきマナーといった細かいことまで規定されており、どんな意味があるのか疑問を感じています。立場上、部下にも新しい方針を徹底するよう命じられているのですが、無理に従わせれば部下の士気を下げてしまうのではと不安です。
どんなルールも順守するのがビジネスマンの鉄則。1つの例外、1つのルール違反から組織が弱体化していく
組織に属している以上、社内で定められているルールには従わなければなりません。部下に対しても新方針を徹底させることが、あなたの中間管理職としての評価につながります。「規則として決められているのだから、それを守るのが大人の対応だ」と説明して部下にも従わせましょう。
外国の法律や企業の社内規定、学校の校則に至るまで、およそ規則と呼ばれるもののなかにも、確かに馬鹿げていると思ってしまうルールは存在するものです。しかしながら、ソクラテスではありませんが「悪法もまた法」なのであり、従うのが組織人としての使命であります。
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| イラスト 中野スカ |
もし仮に、定められたルールが納得いかないからといって従わない人たちを許してしまうと、従わない人は1人、2人と増え、従わないルールも1つ、2つと増えていくものです。結局は会社の規則そのものが軽視されるようになり、「無法状態」に近づいた組織は機能しなくなります。例え規則を強制することが社員の士気を下げる結果になっても、組織が機能しなくなることに比べれば犠牲は少ないものです。
部下が納得しにくいと思われる規定を守らせるには、あなたが率先して規定を守ることが必要です。センスの悪い制服は堂々と着こなし、独特の用語は人一倍大きな声で発しましょう。部下の人たちも、上司であるあなたが従っているのなら仕方がないという気持ちになるはずです。
とは言っても、納得のいかない規則はただ受け入れれば良いということではありません。やはり意味がないと思うのであれば、ルールの見直しを働きかけるべきです。
また、倫理的に問題のあるルールについても、できることならば最初に異議を唱える「ホイッスル・ブロワー」(笛を吹く人)であってほしいものです。守るべき優先順位としては、会社という狭い枠組みの中だけのルールよりも、日本という国の法律、さらには人間社会における法律でありルールです。倫理的に反する社内のルールに盲目的に従うことは、それが世間に表面化した時のリスクを考えれば、決して会社のためにもなりません。
人間の集団心理として、誰かが異議を唱え、それに賛同する声が出始めると、加速度的に全体の声が大きくなるという「ボイス効果」という働きがあります。勇気を持って「ホイッスル・ブロワー」になることをお勧めしたいのですが、現実には後々の人間関係を心配して声が出せないのももっともなことです。
雪印や不二家の事件で見られたように、消費者やユーザーを危険にさらすような大きな問題であれば、究極的には新聞やテレビになどに情報をリークすることや、外部監査の力に委ねるといった選択肢も考えてみましょう。
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