心理学者 内藤誼人
「こちらを立てれば、あちらが立たず」。上司と部下の板ばさみに苦しむ管理職は多い。どうすれば、上司をうまくケアしつつ、部下の仕事の生産性を高めていくことができるのか。
「理想の上司になる10の心得」に続く、管理職のための心理学第2弾として、心理学者の内藤誼人がアドバイスする。
新しく教育を任された部下は会社の幹部の息子で、将来の出世が約束されています。本人のためにも、会社の将来のためにも、いまは厳しくしつける時期だとは思うのですが、なかなか腰が引けてしまいます。どのような接し方が適当なのでしょうか。
社内に情実は不要。公平な扱いを心がけ、他の部下より厳しく鍛えるぐらいの気概を持とう
幹部の息子だからといって甘くするどころか、逆に厳しくするぐらいの姿勢で臨み、周囲からの「公平な上司」という評判を高めましょう。
ときには厳しい指導のあまり、仮にその時は幹部の息子があなたに反感を抱くかもしれません。それでも、彼が出世して部下を指導する立場になった時には、きっとあなたの気持ちを理解して、感謝の念を抱いてくれるはずです。
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| イラスト 中野スカ |
とはいえ、なりふり構わず厳しく当たってしまうのも良策ではありません。前回のシリーズ「理想の上司になる10の心得」第7話でも紹介しましたが、まずは心理学で言うところの「事前謝罪法(先に謝ることで、逆に相手が何も言えないようにすること)」を使って、幹部の息子には事前に納得させておくことが重要です。「普通に部下としてオマエと接していても、他の部下から『幹部の部下だから甘い』と思われるかもしれない。だから、普通の部下より厳しく接するかもしれないが、それでも許してくれ」と先に納得させておくのです。
また、父親である幹部にも事前謝罪しておくと効果的です。「息子さんにも納得してもらいましたが、一人前にするために、他の部下には3しか課さない仕事も、息子さんには5くらい任せるつもりでいます。ご了解いただけないのでしたら、教育係を外してください」と断っておけば、あなたの鬼上司ぶりが幹部に伝わっても怖くありません。
幹部候補でありながら、他の部下より甘くして欲しいと考えるようなダメな部下や、自分の息子には赤い絨毯の上だけを歩かせたいと思っているような親バカな幹部のいる会社に、将来はありません。もし事前謝罪の段階で了解を得られないようであれば、そんな会社にはさっさと見切りをつけて、転職先を探しましょう。
幹部の息子で、将来の出世が約束されたような人間は、周囲からすると羨望の的ではありますが、当人には当人なりの悩みや不安があるものです。同僚からは良くも悪くも異質の存在として見られますし、「自分が幹部になって業績が落ちたら、2代目である自分の能力のせいにされないだろうか」といったプレッシャーも感じているものです。
あなたがその気持ちを汲んで、「頑張らないと親父さんの顔に泥を塗ってしまうから、オマエも大変だな」と相談にのってあげることができれば、あなたに寄せる信頼はさらに高まることになるでしょう。
幹部の息子に限ったことではありませんが、会社の将来を担うような優秀な部下の育て方として、「今のうちから管理職の立場になったときのことを想定して、『オレだったらこうするだろう』ということを絶えず考えながら仕事をしろ」とアドバイスすることは、非常に有効な方法です。 本人の仕事振りも会社全体の利益を意識したものになるでしょうし、上司の立場、部下の立場をそれぞれ思慮できる組織人に成長してくれることでしょう。
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