心理学者 内藤誼人
「こちらを立てれば、あちらが立たず」。上司と部下の板ばさみに苦しむ管理職は多い。どうすれば、上司をうまくケアしつつ、部下の仕事の生産性を高めていくことができるのか。
「理想の上司になる10の心得」に続く、管理職のための心理学第2弾として、心理学者の内藤誼人がアドバイスする。
私と上司、私と部下との関係は比較的良好なのですが、上司と部下の関係がギクシャクしており、板ばさみ状態になっています。私から見ると優秀で結果も出している部下なのですが上司の評価はイマイチですし、部下も私の上司のことを嫌っている様子です。互いの関係改善のために、私にできることはないでしょうか。
信頼の厚い人間が良い噂話を吹聴すれば、評価は自然に高まるもの。関係改善に努め組織の潤滑油になろう
基本的に、組織内に生じる人間関係の亀裂は、多ければ多いほど、深ければ深いほど組織にとってマイナス要因になります。上司と部下のギクシャクした関係を解消させるよう、中間管理職であるあなたが積極的に潤滑油の役割を買って出ましょう。
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| イラスト 中野スカ |
人間の評価は、評価の対象が直接アピールするよりも、他の人の口を通じて噂話として耳にする方が上昇しやすい傾向があります。心理学では「オーバーハードコミュニケーション(漏れ聞き効果)」と呼ぶ効果です。今回のようなケースではこの効果を利用して、上司には部下の、部下には上司の良い噂を吹き込むことが得策です。
たとえばあなたの部下を低く評価している上司に対しては、「あいつは無駄話ばかりで仕事をしないとおっしゃいますけど、実はうちのチームの良いムードメーカーになっているんです」とフォローしてみます。逆に部下には「実は部長がオマエと同じ新卒の頃、ものすごい伝説を作ったんだ」などと言って、上司の尊敬できるエピソードを披露してみましょう。
このときのポイントは、ストレートに「部下は出来るヤツです」「部長にも良いところがある」と言ってしまうのではなく、あくまでもさりげなく、相手に真意を悟られない表現でアプローチすることです。また、多少の誇張や脚色は必要ですが、完全にデタラメな話はお勧めできません。
これは人間関係だけでなく、会社への愛社精神を高めることもに活用できます。若い社員であまり会社への愛着が感じられないような部下には、「わが社は創業時から業界で最高レベルの技術力を持っている」「うちの会社はライバル企業からも注目されている」などと吹聴することで、会社への忠誠心を高めていくことも可能です。
ただし、こうした漏れ聞き効果は、話を吹聴するあなたが信頼されているかどうかで成否が大きく左右します。いくら上司や部下に信頼されていない人間が他人を褒めても、説得力はありません。まずはあなた自身が上司や部下から信頼される人間であることに努めるべきでしょう。
好悪の感情は漏れ聞き効果によってある程度変えることができますが、部下への評価があなたとあなたの上司とであまりに食い違う場合、社内の人事考課基準そのものを疑ってみる必要があります。人事考課の基準が明確でないために、主観に基づく評価のウエイトが高くなり、同じ人物の評価に差が出てしまうというケースです。
このような場合、あなたから上司に対し、評価システムの見直しを提案しましょう。社員の仕事振りを客観的に正しく評価できないようでは、社員のモチベーションを高めることはできません。そうした問題に早期に気付き、ときには異議を唱えることも、中間管理職の大きな役割の一つと言えるでしょう。
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