心理学者 内藤誼人
「こちらを立てれば、あちらが立たず」。上司と部下の板ばさみに苦しむ管理職は多い。どうすれば、上司をうまくケアしつつ、部下の仕事の生産性を高めていくことができるのか。
「理想の上司になる10の心得」に続く、管理職のための心理学第2弾として、心理学者の内藤誼人がアドバイスする。
自分の考えで積極的に動ける部下には自由にやらせて、それなりの結果を出してきました。ですが上司には私の指導方法が不満だったらしく、部下がいる前で部下の管理が甘いと叱られてしまいました。自分としては今のままの方が良い結果が出せると思っているのですが、部下への指導方針を改めるべきなのでしょうか。
中間管理職の存在意義が問われる重大な分岐点。部下の指導はあくまで直属の上司が主導権を握れ
上司の指摘をあっさりと受け入れてしまっては、上司からは単に今まで管理を怠っていたのだと思われますし、部下からは上司の腰巾着のように思われかねません。中間管理職としてのあなたの存在意義がなくなるピンチであると認識することが必要です。その反面、ここでしっかりと自分の考えを主張すれば、あなたの存在感を示す絶好の機会にもなるのです。
まず大事なことは、あなたの部下の前であなたを叱った上司のやり方を改めさせることです。あなたが叱られている姿を見たあなたの部下は、あなたを頼りないと感じても仕方ありません。早めに上司と2人きりになる機会を作り、「私にも部下への体面があり、これでは部下を管理できなくなります。2人のときはいくらでも叱っていただいて結構ですので、部下の前でだけは怒らないでください」と釘をさしておくべきです。
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| イラスト 中野スカ |
上司に面と向かって言えないのであれば、メールで思いを伝えるのも1つの手です。
ちなみに、上司があなたを叱っている姿を周囲に見せることで、「なるほど、こういうことをすると怒られるんだ」と他の部下を教育しているとも言えます。 これは心理学で「スケープゴーティング」と呼ばれる戦略ですが、怒られ役の部下のやる気を殺いでしまう可能性が高く、お勧めできる手法ではありません。
それでは、上司から指摘された部下への管理方法を改めるべきかどうかですが、「少し検討させてください」などと回答を引き延ばし、まずは当の部下に相談してみることです。
部下と2人になって「オレはあまりオマエを監視したくないし、今のままで良い結果が出せると信じている。どうだろうか」と率直に聞いてみましょう。もっと管理を強化して欲しいと答える部下は稀だと思いますが、それであればそのように改めれば済みます。
問題は、部下が今のまま自由にやらせて欲しいと答えた場合です。その際は、あなたが上司に掛け合い、「今のやり方で2カ月だけやらせてください。もしそれでセールスを5%伸ばすことができなければ、もう一度部下と相談して管理方法を改めます」などと申し出ましょう。 ここで重要なことは、期限や成果を具体的に数字で示すことです。説得力が高まるだけでなく、上司も「そこまで言うなら」と体面を保ったまま引き下がりやすくなります。さらに部下にとっては、自分を守ってくれたあなたへの感謝の念が増すと同時に、結果的にノルマを与えられることになりますので、発奮しないわけにはいきません。
一部の組織論のなかには、一握りの経営者とパートやアルバイトを中心とした末端労働者だけでつくる組織を模範にした、中間管理職不要論も登場しています。しかしながら心理学では、1つのチームがしっかりと機能するのは5~7人までという結果が出ています。それ以上になると上司の目が行き届かなくなり、互いの意思疎通にも支障をきたすからです。
本当に強い組織とは、樹形図のように縦に伸びた指示系統がある組織であり、それぞれ分かれた枝を中間管理職がしっかりと束ねている組織なのです。
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