心理学者 内藤誼人
「こちらを立てれば、あちらが立たず」。上司と部下の板ばさみに苦しむ管理職は多い。どうすれば、上司をうまくケアしつつ、部下の仕事の生産性を高めていくことができるのか。
「理想の上司になる10の心得」に続く、管理職のための心理学第2弾として、心理学者の内藤誼人がアドバイスする。
大事なプロジェクトを任せていた部下に、私の上司がさらに別の仕事を命じました。部下にどちらを優先すべきか相談され、返答に窮しています。私としては自分が命じた仕事の方が優先度は高いと考えているのですが、上司にも考えがあるようです。どうすれば円満に解決するのでしょうか。
部下には同時に複数の仕事をさせるな。上司の顔色より会社の利益で優先順位を決めよう
このような場合、まず絶対にしてはいけないのは、部下に2つの仕事を同時並行的にやらせてしまうことです。仕事を上手にこなすためのハウツー本に、複数の仕事を同時進行で片付けるテクニックが紹介されていることがありますが、実際にやってみると、かえって能率が悪くなってしまうものです。なぜなら人間は1度に考えられるのは1つのことだけなので、2つの仕事を一度にはできないからです。兵法の基本は兵力を分散させないことです。したがって、人間のエネルギーも1つのことに集中させた方が成果は上がります。これを心理学では「一点集中の法則」と呼んでいます。
|
| イラスト 中野スカ |
ですから部下に複数の仕事を同時に任せるような上司は、良い上司とは言えません。もし大事な仕事を追加して頼む場合は、以前に頼んであった仕事は後回しさせるか、無くしてしまうことが必要です。今回の質問のようなケースでも、部下にはどちらの仕事を優先すべきか、はっきりと示してあげましょう。
では、あなたの依頼した仕事と、あなたの上司が命じた仕事と、どちらを優先させればよいのでしょうか。その判断は、誰が命じた仕事かではなく、会社にとってどちらの仕事が緊急を要し、重要かによって決めるべきです。あなたが依頼した仕事の方が会社にとって重要だと思えば、あなたの口から上司にきちんと説明して、納得してもらいましょう。会社の利益という大義名分があれば、たいていの上司は理解してくれるものです。
もしあなたの上司が、会社の利益よりも自分の都合を優先させたいというダメ上司であった場合、残念ながら部下に2つの仕事をやってもらうしかありません。ただしその際にも、部下には「とにかくどちらか1つを先に片付けてくれ」と、部下自身で優先順位をつけるようにアドバイスしておきましょう。
また、後になって部下の反感があなたに向かわないように、「オマエが大変なのはよくわかるが、無理なことを頼むオレの立場もつらいんだ。オマエもあと5年もたてばオレの立場がわかってくれるだろう」などと、あなたはあくまでも部下と共に泣いているというスタンスを見せておくことも忘れてはなりません。
部下のなかには、直属の上司よりもさらに役職が上の人からの命令を、「直々に仕事を任された」と喜ぶ人がいます。ですが、直属の上司を飛び越えて指示を受けることは、指揮系統の崩壊につながり、ひいては組織そのものが機能不全に陥ることになります。たとえば、軍隊の兵士は命が惜しいからこそ、現場を知らない作戦本部からの指示よりも、戦場の直属の指揮官の命令に従うのです。
指揮系統を無視した命令にも、「直属の上司を通していただけますか」と突っぱねられるだけの広い視野を持つ部下がいたら、素晴らしいことです。誇りに思いましょう。
|
|
||||
|
|
|
|
|
|
|
|
||||
【IT経営情報局 PDF資料集】
IT導入時に利用できる行政支援に関する資料をPDFで提供しています