心理学者 内藤誼人
管理職の立場であれば、「部下や上司との調整が面倒」と感じたことが1度や2度ではないはずだ。苦労の割には報われない感のある「管理職なんかなりたくない」という人が増えているという調査結果もある。しかし、企業である以上、上司や部下との円滑なコミュニケーションは必須。そこで、本連載では上司と部下との円滑なコミュニケーションを実現するため、状況に応じた対応策を心理学者の内藤誼人氏に聞いた。
同性にも異性にも好かれる良い上司を目ざし、異性の部下ともなるべく親密になろうと努力しています。ですが、あまり異性の部下と馴れ馴れしくするとセクハラだと言われそうで、どのように扱ってよいのか困っています。良いアドバイスをお願いします。
異性と意識せず、同性の部下と同じように接するべき。人間関係の総合力アップで苦手意識の克服を
異性だと思って変に意識するから難しくなるのであって、同じ人間、同じ部下だと思っていれば問題はないはずです。セクハラといっても、体に触るなどの行為におよばなければ、たとえ訴えられても責任が問われることは稀です。性別によって特段に対応を変えようとせず、分け隔てせずに同じ態度で接することを心掛けましょう。
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| イラスト 中野スカ |
あなたは同じ態度を心掛けているつもりなのに、周囲からは、男性なら「あいつは女の部下にだけ甘い」「あの人は女性の敵だ」、女性であれば「あの人は若い男に流し目を送っている」「自分が女だからといって、女性の部下ばかり可愛がる」などと評価されているとします。そのようなときは、自分では意識しないうちに、悪評を流されるようなことをしているのだと思ってください。まずは名前の呼び方や言葉遣い、付き合い方など外面的な部分から、同性に対するのと同じものに改めてみましょう。コンパの席で「女性はタダ」などとは言わず、男性と同額ではないにしてもせめて胃袋の大きさに見合うだけの金額は徴収することも1つの例です。
実は、異性の部下と付き合うのは苦手だと感じている人は、大抵同性の部下からも嫌われているものです。本来、人間関係のスキルについての総合力を身に着けている人であれば、苦手なタイプといったものは生まれないはずです。スキルが高ければ誰からも好かれますし、嫌われるタイプがある人にはスキルが低いということだと言えます。なぜなら、自分から積極的に話し掛けて相手からの興味を引き出す、笑顔で話をして相手の気持ちを良くさせる、相手の話をしっかり聞いて共感してあげる、など他人との友好的な関係を構築するための基本的な考え方は、老若男女を通じて同じものだからです。
とはいえ、ときには部下の性別によって格差をつけることに迫られることもあります。たとえば同期入社で能力の拮抗している男女の部下を各1名もったとしましょう。そんな場合、つらい仕事はどうしても男性の部下に押し付けてしまいがちです。こうしたことの積み重ねが、女性に甘いという噂が流れる引き金になることもあります。さらに、双方の部下から「男だから自分ばかりにつらい仕事を押し付けている」「自分は女性だから差別されている」と嫌われかねません。そのような場合、頭のなかであれこれ考えるのではなく、むしろそれぞれの部下に事情を話して相談することをお勧めします。
男性の部下には「どちらに頼もうか迷っているが、つらい仕事なので男であるオマエに任せようと思う。それでもいいか」と尋ね、女性には同様な事情を説明したうえで「もし差別されていると感じるならオマエに任せるが、どうするか」と赤裸々に聞いてしまいましょう。それぞれに相談することができなければ、仕事を任せる人間を決めた後にでも両者に理由をきちんと説明するべきです。
部下からの誤解を防ぎ適切な判断だと納得してもらうためにも、事前の相談や事後の説明は上司として必要な行動です。これは性別の違いだけでなく年齢やキャリアの異なる部下に対しても、なんらかの格差をつける場合にはあてはまる心得です。
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