心理学者 内藤誼人
管理職の立場であれば、「部下や上司との調整が面倒」と感じたことが1度や2度ではないはずだ。苦労の割には報われない感のある「管理職なんかなりたくない」という人が増えているという調査結果もある。しかし、企業である以上、上司や部下との円滑なコミュニケーションは必須。そこで、本連載では上司と部下との円滑なコミュニケーションを実現するため、状況に応じた対応策を心理学者の内藤誼人氏に聞いた。
最近、私に対する部下の目がどうも冷たい気がします。アドバイスや忠告をしても、あまり真剣に聞いているように感じられません。部下にもっと尊敬されるような上司になりたいのですが、何かよい知恵はないでしょうか?
自分のすごさを見せつけて「この人には勝てない」と屈服させて、部下の敬意を勝ち取ろう
あなたが部下にどれだけ尊敬されているかは、挨拶や相談など部下から声を掛けられる頻度で分かるものです。声を掛けるのは自分に対する好意≒敬意の現れであり、すなわち部下からの敬意を量るリトマス試験紙として使えます。
そういった意味でいまのあなたが尊敬されているかどうかはすぐに分かるわけです。
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| イラスト 中野スカ |
では、部下からもっと尊敬される上司になるにはどうすればいいでしょうか。
それは、なんといっても部下に「この人には勝てない」と思わせることに尽きます。
人が「勝てない」と感じるのは、自分が持っていない物を持っている人、自分ができないことをやっている人に対してです。敬意というものは言辞を弄して得られるものではありません。ですから、まず基本は自分自身の仕事のスキルを高めることです。ただ、部下からの評価を効果的に改善するためのちょっとしたテクニックもあります。
もしあなたが英語を話せるのでしたら、部下の前で取引先の外国人と英語で商談すれば、大きなインパクトを与えられます。ただし、その部下があなた以上に語学に堪能である場合、かえってマイナス効果になることも注意してください。
それから、仕事とはまったく関係ないと思われるような知識でも、使い方によっては役に立つものです。
たとえば、得意先に自分と同じガーデニングという趣味をもった部長がいるとします。理由を作って部下をその部長の前に連れ出し、「部長の胡蝶蘭はその後、いかがですか? 水をやり過ぎてはいませんか?」などとあなたの知識を披瀝してみましょう。
たとえ仕事とは無関係の話であっても、自分の知らない知識で取引先の部長を感心させて見せれば、部下のあなたに対する見方は少なからず変わるものです。
自分の得意な分野を部下に見せるのとは逆に、誰から見ても困難な状況を利用する手もあります。厳しいことを言われると分かっている取引先にあえて部下を同行させ、予想通り厳しい注文を出されたとします。もちろん部下もしょげてしまうはずですが、そんな時にあなたが(腹の中では泣いていても)平然と、さらに熱心に次の取引先を回る姿を見せれば、部下はあなたのことをタフな上司だと評価してくれるに違いありません。
もし、あなたがこれから新しい部下を持つことになるとします。部下の敬意を勝ち取るには、最初が肝心です。
心理学者の研究結果によると、第一印象が定まるのは出会って最初の4分間とも言われています。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の格言どおり、最初の印象が悪いと、その後何があってもその人の評価が下がっていく現象を「ホーンズ効果」と呼びます。逆に最初に好印象だった相手が付き合うたびに好ましく感じるのは「ハロー効果」です。最初に好印象を得られるよう、初対面の部下には笑顔と元気な挨拶で接するように心掛けましょう。笑顔や元気な挨拶を見て、嫌になる人はいませんから。
不幸にも部下から「この人はダメな上司だ」と思われていると感じたら、なんとか「ホーンズ効果」の悪循環から脱する手立てを考えましょう。
そこで、最も効果的なのは、ダメだと思っている根拠が誤解であったと思わせることです。もし部下が、上司から叱られていたあなたの印象に縛られているのであれば、実はあなたが叱られていたのは上司から期待をされているからであって、決して仕事ができないからではないのだ、ということを悟らせる必要があります。それを自分で説明しても説得力がありませんので、同僚や上司といった周囲の人たちの口から誤解を解くように仕向けるべきです。
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