文●山田 知賢
日本版SOX法の対象となるのは、上場している企業単体ではなく、連結ベースであり、上場していない子会社、関連会社も範囲に含まれる。そのため、子会社や関連会社を持つ企業にとっては、対象範囲の設定方針が大きく工数へ影響する可能性があり、対象範囲は慎重に検討すべきである。
ここでは、 “全社統制”、“決算・財務報告に係る業務処理統制”、“決算・財務報告以外の業務処理統制”の3つに分けて検討してみたい。
●全社統制
まず、“全社統制”の対象範囲としては、基本的に全グループ会社を対象にすることとなっているものの、「財務諸表への影響が僅少な会社(事業拠点)」に関しては対象外とすることが可能だ。この基準に関して、「意見書」には明記されていないが、一般的には連結税引前利益に占める割合が累計(少ない方から合算した際の合計割合)で5%に満たない会社を指す場合が多い。
そこで、監査法人との合意のもと、実質的にグループ全体に対する影響が少ないと考えられる会社に関してはなるべく対象外とすることをお勧めしたい。ただし、その際、指標としてどのような値を用いるのか、企業の特性や年度による差異性等により慎重に検討を行なうべきである(図2)。
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| 図2:全社統制の対象範囲(例) |
●決算・財務報告に係る業務処理統制
“決算・財務報告に係る業務処理統制”の対象範囲についても、“全社統制”と同様となる。
●決算・財務報告以外の業務処理統制
“決算・財務報告以外の業務処理統制”の対象範囲となる会社(「意見書」での“重要な事業拠点”)の選定では、「意見書」に「連結ベースの売上高等の一定割合の概ね3分の2程度」という例示がある。これに従い、実際に対策を進めている企業では、売上高を金額の高い順から合算し、連結ベースの3分の2を網羅する会社を対象にしているケースが多い。
ただし、意見書によると、「企業の置かれた環境や事業の特性によって、異なる指標や追加的な指標を用いる」ことが可能となっている。「概ね3分の2」の“概ね”の解釈をどの程度の範囲と考えるかを含めて、業務処理統制の範囲は監査法人と協議の上、慎重に検討したい(図3)。
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| 図3:決算・財務報告以外の業務処理統制の”重要な事業拠点“の選定(例) |
なお、“決算・財務報告以外の業務処理統制”に関しては、対象となる会社を選定した後、さらに「文書化」の対象となる業務を選定する必要がある。企業活動の全業務のうち、“業務処理統制”の対象となる業務を絞り込むのである。「意見書」では、「売上、売掛金及び棚卸資産の3つの勘定科目に至る業務(業務プロセス)」を対象とすることが記述されている。
だが、「売上、売掛金、棚卸資産に至る業務」の範囲が具体的にどこまでの業務範囲を示すのか、即座に区別できる企業は少ないはずだ。この点に関しても、企業内で方針を策定し、監査法人と合意を得ることで、過剰に作業をすることや、認識の齟齬による手戻りを防ぐことができる。前回も述べたように、特に「文書化」作業には比較的多くの工数が掛かることが想定されるため、十分に監査法人と話し合い、範囲の特定を行なうことが重要だ(図4)。
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| 図4:決算・財務報告以外の業務処理統制の対象業務プロセス明確化イメージ |
また、「意見書」では、財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務については、重要な事業拠点に係らず、全ての企業を対象として、追加で文書化が必要としている。具体的には、金融取引や、引当金等の見積り、予測を伴う場合等の例が挙げられている。これらの部分に関しても、それぞれ範囲を明確に定義する必要がある。
さらに注意が必要なのは、外部の専門会社に委託している業務に関しても、評価の範囲に含まれるということだ。これは、子会社や関連会社に委託している場合ではなく、資本関係の無い外部企業に委託している場合も対象となる。範囲を検討する際には忘れずに念頭に入れておきたい。