文●人事教育コンサルタント 本田有明
景気回復や団塊の世代の一斉退職といった社会情勢もあり、新卒採用は超売り手市場で、第二新卒の転職も活況を見せている。しかし、これまで採用を控えてきた企業が、多数の新人を受け入れるのにふさわしい職場環境づくりができているのだろか? 人事教育の専門コンサルタントとして知られる本田有明氏に、新人を職場に定着させ、早く一人前の戦力として活用するための方法を語ってもらった。
今回は前回の連載とあわせてお読みいただければ幸いである。
前回、新人の「名前入りプロジェクト」について書いた。おもしろい疑問や提案を新人から聞いたら、それをプロジェクトとして立ち上げ、自分で探求させようという趣旨であった。今回は「お助けミーティング」である。
プロジェクトというほど大げさにしないまでも、職務上重要な問題点に新人が直面したときには、それをチームメンバーで共有し、サポートしようというものだ。
たとえば、営業先で商品にクレームをつけられた。あるいは、態度が悪いと叱られた。そんな報告を新人から受けたとき、ふつうは直属の上司が自分で指導する。懇切ていねいに諭す人もいれば、多忙のため短い訓示を与えるだけの人もいるだろう。肝心なのは、それで部下が本当に理解したのかどうかである。
本当に理解するとは、「なるほどそうなのか」と納得すること。その教えを次に活かせるということだ。現実には、理解したと思っているのは上司だけで、部下のほうはよくわかっていないというケースが少なくない。つまり「ツーウェイ・コミュニケーション」が成立していないのである。
そうしたことが何度も続くと、質問や相談がしたくても、部下のほうが自重するようになる。これはたいへん怖いことだ。
災いの芽を未然に摘み取るには、チーム全体で質問や相談にのり、気持ちよくサポートすればよい。これをシステムとして用意しておくのである。軽めのノリで名づけ、「お助けミーティング」とした。
ミーティングの時間は短くてよい。さっと集まって問題を共有し、話し合って、さっと解散する。それだけで効果は非常に大きい。
「私も新人のころ、同じような悩みをかかえたことがある」
「こういう場合は謝るにしても、謝り方がむずかしいんだ」
「大丈夫。何度か体験するうちにコツがわかってくるから」
ざっくばらんに体験談を交わすことによってケーススタディとし、知恵を授けるのだ。それがどれほど新人を励まし、勇気づけることになるかは計り知れない。お助けミーティングを開けば、複数の人の体験や教訓を知ることができる。直属の上司1人の指導では偏向が生じるかもしれない事柄も、大勢が会話に加わることによって、さまざまな角度から検討することが可能になる。
「自分の問題を先輩たちが一緒になって考えてくれることに感激しました」
「こういうチームの一員になれてよかったと、あらためて感じました」
導入した会社の新人からは、よくこんな声が聞かれる。
ときには先輩たちの見解が異なって議論が巻き起こることもあるが、それもチームにとっては刺激となり、活力の源ともなる。1人が遭遇した事例を全員で共有し、最適解を考え合う。「学習する組織」の見本といってもよいだろう。
もう1つ、見逃せないメリットがある。職場の先輩たちが誰も経験したことのない、最新の事例を新人が持ち込むことがあるのだ。新規の事業や商品が多くなると、寄せられる顧客の声やクレームなどにも変化が生じてくる。最も経験の少ない新人が、最も新しいやっかいな問題にぶち当たることも珍しくはない。その際に、お助けミーティングを制度化している職場であれば、すぐに人を招集して検討会をもつことができる。新しいことがあったら即、集まりをもつ。そして仲間から貪欲に学ぶ。風土としてそれを定着させるのだ。
新人をみんなで支え、ときには自分のほうも支えられる。そんな企業文化がよき指導者を輩出するというのは、とてもわかりやすい理屈ではないか。
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