文●小森 哲郎
連載開始以来、IT化成功の勘所を7Sのフレームワークを使って説明してきたわけだが、問題の解決にあたり、どう考え、どう行動すべきかについて、だいたい理解してきていただけていることと思う。そこで今回と次回の2回では、その知識をどう実践へと応用していくかに駒を進めたい。システム導入を考えている、とある企業をモデルケースとして取り上げ、IT化を進めるためのテクニックを実際のIT化の流れにそって見ていくことにしよう。
まずは、今回モデルケースとしてとりあげる、玩具の設計、製造、販売を行なっているN社のプロフィールを紹介しよう。創業オーナーがトップを勤めるN社は今年10周年を迎え、売上規模も100億円を超えるまでになった。製品の開発は自社で行なっているが、製造は外部に委託し、製品は卸を通じて小売店へ流している。
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現在のSKU(Stock Keeping Unit:製品管理の単位)は1500~2000というところだが、近々、数万のオーダーになることは確実視されており、また小売の販売チャネルも相当な数に登っている。現在の社内システムでは、そのうちまかないきれなくなるのは歴然だったが、発注業務こそIT化されているものの、開発、業務、営業などのIT化は、まだこれからという段階にあった。
N社は、今後の発展のためにも本格的にIT化に取り組まなければならない時期にきていた。そこで、全社的にどのようなITが求められているのかを検討するプロジェクトが発足した。
そのプロジェクトのメンバーの1人にアサインされたのが、コンピュータ好きの「あなた」だ。ぜひ、自分がN社のプロジェクトの一員であると仮定して、自分だったらどうプロジェクトを進めていくか、あなたなりに考えながら、この先を読み進めてみてほしい。なお、このプロジェクトのメンバーには、誰も大掛かりなシステム導入を経験した者はいない。そこで、外部からコンサルティングファームも入れて、プロジェクトがスタートした。
最初のステップは、まず会社の状況を把握することだ。この診断フェーズには、大きく分けて2つのモジュールがある。1つめのモジュールは、事業側のニーズをきっちり深堀すること。N社がどんな事業戦略を持っており、将来的にどんな業務プロセスをどんなパフォーマンスで進めていかなければならないかを把握する。さらに、事業戦略の実行の見地から、N社が組織的に抱えている問題点を明確にする。この段階では、どんなITを入れるとか、業務プロセスからどんなシステムが必要かということを考える必要はない。現時点で最も重要なのは、事業戦略から見た要件出しと現状分析なのだ。
もう1つのモジュールがITのガバナンスである。現在どんなシステムがあり、どんなふうに使われているのか。運用、メンテナンスのコストはいくらで、システムに関する最終的な意思決定はどのように行なわれているのか。こういったITガバナンスについて、事業の面からと、ダブルで探っていく。
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