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小森哲郎の「経営から見た IT化成功の勘所」タイトル

文●小森 哲郎

第6回 組織機構・運営システム(前編):IT部門をトップマネジメントの直轄に


事業部門にも説明責任を
付与し、「巻き込み」に追い込む

 システム部門が現場のニーズをどう理解するかは非常にクリティカルだ。しかし、実際に毎日業務に携わっているわけではないIT推進部門が、事業部のニーズをすべて自分たちでくみ上げるのは不可能だ。そこでよく使われるのが、事業部側にもIT推進に関して、きっちり責任を持たせるという方法だ。

 

 システム部門は、IT化の課題を経営会議に乗せると同時に、事業部サイドにも、「こういう新しいテクノロジーがありますが、あなたの事業部では、このテクノロジーをどう事業に活かしていきますか?」とぶつけ、ユーザー部門がITの推進に関して説明責任をまっとうすることを支援する。

 IT部門はIT部門でがんばるし、現場は現場でITを使って何ができるかを一生懸命考える。そのあと、初めて議論する場を作り、CIOが進行を仕切る。両方をうまく追い込んでいかなければ、IT化は空回りしてしまう。

図2●事業部門・システム部門双方からの追い込み
図2:事業部門・システム部門双方からの追い込み

IT投資をすべて可視化し、
「優勝劣敗」の土壌を作る

 ここまでやった上で、さらに次にやらなければならないのが、IT投資を完全に可視化することだ。どのようなプロジェクトがスタートし、どれくらいコストがかかり、構築されたシステムはどのような使われ方をしていて、業務改善にどれくらいインパクトがあったか、どのような儲けにつながったのか、これらがきっちりモニターされ、だれからも「良いもの・悪いもの」「成功しているもの・失敗しているもの」が見て分かるようにする。

 IT投資は研究開発(R&D)に似ている。研究開発には膨大なお金がかかるが、事業化になかなか至らなかったり、人材をつぎ込んでいる割には収益に結びつかなかったりする。ITも同じで、ややともすると技術指向に走り、収益を忘れてしまう。技術者はビジネスを考えず、技術が分からない経営陣から見ると、研究開発の現場はブラックボックス化する。そして、成果が何も見えないということになる。

 埋没しやすい部署だからこそ、組織の位置付けを上げて目立たせる。IT投資はブラックボックス化しやすいから、可視化する。それも単に見えるようにするのではなく、相手が理解できるような形に「翻訳」する。情報というものは相手が理解して初めて伝えたと言えるのである。難しいものばかりどんどん出てくれば、誰だってもう見たくなくなってしまうだろう。

 これはシンプルな原理だが、実際には行なえていない企業は多く、社内でかなり強烈に推進しなければ、成果はおぼつかなくなる。

 次回は、可視化をどうやって進めていくべきかに話を進めよう。


小森 哲郎(こもり てつお)氏
 
著者・小森 哲郎(こもり てつお)氏プロフィール
コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーで18年間の勤務経験を持ち、世界各国の企業の戦略策定、経営改善に携わる。2002年4月よりアスキーの顧問として再建企画を策定したのち、同社社長に就任、短期間のうちに劇的な企業再生を実現する。現在は、クラシエホールディングス株式会社の代表取締役CEO兼社長執行役員として全社の改革を進めている。



※この記事は、「アスキービジネス ITスキルアップ 2006年1月号」の記事「小森哲郎の『経営から見た IT化成功の勘所』」を再掲載したものです。

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