文●小森 哲郎
次に、そのような持続的な差別化を生み出す戦略を立案するのに役立つ、2つの視点を紹介したい。1つのアプローチが「ブレークポイント」であり、もう1つが「戦い方マップ」である。ブレークポイントから始めよう。
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| 図1:ブレークポイントの見極め |
図1のグラフを見てほしい。横軸が製品・サービスのパフォーマンスになっている。製品、サービスのコストやクオリティのほかに、顧客に製品を迅速に届けるデリバリのリードタイムなどがここに相当する。これらのパフォーマンスをアップすることによって、企業の優位性は高まる。
ただし、パフォーマンスをわずかばかり上げても、縦軸の顧客満足度や他社との差別化という点では、差は微々たるものだ。顧客の目から見て、製品・サービスに対する満足度が跳ね上がる点までパフォーマンスをアップしてこそ、競争上、意味があるものになる。このポイントをブレークポイントという。このブレークポイントを越えるアクションでなければ、戦略的に大きな意味がないし、投資しても効果は限定的である。
たとえば、昔は写真の現像に4~5日かかっていたが、それが55分でできるようになったとき、顧客の満足度は跳ね上がった。4日かかっていたものが3日や2日に短縮されても、顧客はもう一度写真を受け取りに出直して来なければならないが、1時間程度なら買い物などをしていれば過ぎてしまう。1時間を切るというレベルまでサービスのパフォーマンスを上げたことで、顧客満足度が跳ね上がるブレークポイントを越え、他社との決定的な差別化にもなったわけだ。
戦略を定めるときには、ブレークポイントの見極めが大切であり、この考え方をIT戦略にも適用する。今度は横軸に業務のパフォーマンス(コスト、品質、納期など)をとって、どこまで改善したら大きく競合優位性が跳ね上がるのか、ブレークポイントを見極める。IT化して多少パフォーマンスを上げても、改善にはなるかもしれないが、それだけでは「勝つ」ことはできない。戦略とは勝つためのものなのである。
戦略の立案において、もう1つ重要となる概念がある。「どう戦うか」だ。図2に、ビジネス競争における「スタンス」と「戦い方」を図にした「戦い方マップ」を掲載した。
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| 図2:戦い方マップ |
まず、先陣を切ってリーダーとして戦うのか、後追いの立場でフォロワーとして戦うのか、取るべきスタンスを決める。どちらのスタンスをとっても、戦い方は2つある。正面攻撃でいくか、正面攻撃は回避し、矛先をずらして戦うか。この、どう戦うかも、戦略においてはっきりさせておかなければならない。
良い戦略というものは、メリハリがきいている。やること、やらないこと、守るもの、捨てるもの、が明確に定義されている。ITは、そういう戦略を実行していくうえでのツールであり、戦略が変わればITも変わるのである。
次回は、IT戦略へと話を進めよう。

※この記事は、「アスキービジネス ITスキルアップ 2005年11月号」の記事「小森哲郎の『経営から見た IT化成功の勘所』」を再掲載したものです。