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小森哲郎の「経営から見た IT化成功の勘所」タイトル

文●小森 哲郎

第4回 ストラテジー(戦略)編:勝つためのIT投資・前編


勝つための戦略その1
「ブレークポイント」を見極める

 次に、そのような持続的な差別化を生み出す戦略を立案するのに役立つ、2つの視点を紹介したい。1つのアプローチが「ブレークポイント」であり、もう1つが「戦い方マップ」である。ブレークポイントから始めよう。

図1:ブレークポイントの見極め
図1:ブレークポイントの見極め

  図1のグラフを見てほしい。横軸が製品・サービスのパフォーマンスになっている。製品、サービスのコストやクオリティのほかに、顧客に製品を迅速に届けるデリバリのリードタイムなどがここに相当する。これらのパフォーマンスをアップすることによって、企業の優位性は高まる。

 ただし、パフォーマンスをわずかばかり上げても、縦軸の顧客満足度や他社との差別化という点では、差は微々たるものだ。顧客の目から見て、製品・サービスに対する満足度が跳ね上がる点までパフォーマンスをアップしてこそ、競争上、意味があるものになる。このポイントをブレークポイントという。このブレークポイントを越えるアクションでなければ、戦略的に大きな意味がないし、投資しても効果は限定的である。

 たとえば、昔は写真の現像に4~5日かかっていたが、それが55分でできるようになったとき、顧客の満足度は跳ね上がった。4日かかっていたものが3日や2日に短縮されても、顧客はもう一度写真を受け取りに出直して来なければならないが、1時間程度なら買い物などをしていれば過ぎてしまう。1時間を切るというレベルまでサービスのパフォーマンスを上げたことで、顧客満足度が跳ね上がるブレークポイントを越え、他社との決定的な差別化にもなったわけだ。

 戦略を定めるときには、ブレークポイントの見極めが大切であり、この考え方をIT戦略にも適用する。今度は横軸に業務のパフォーマンス(コスト、品質、納期など)をとって、どこまで改善したら大きく競合優位性が跳ね上がるのか、ブレークポイントを見極める。IT化して多少パフォーマンスを上げても、改善にはなるかもしれないが、それだけでは「勝つ」ことはできない。戦略とは勝つためのものなのである。

勝つための戦略その2
「どう戦うか」を明らかにする

 戦略の立案において、もう1つ重要となる概念がある。「どう戦うか」だ。図2に、ビジネス競争における「スタンス」と「戦い方」を図にした「戦い方マップ」を掲載した。

戦い方マップ
図2:戦い方マップ

 まず、先陣を切ってリーダーとして戦うのか、後追いの立場でフォロワーとして戦うのか、取るべきスタンスを決める。どちらのスタンスをとっても、戦い方は2つある。正面攻撃でいくか、正面攻撃は回避し、矛先をずらして戦うか。この、どう戦うかも、戦略においてはっきりさせておかなければならない。

 良い戦略というものは、メリハリがきいている。やること、やらないこと、守るもの、捨てるもの、が明確に定義されている。ITは、そういう戦略を実行していくうえでのツールであり、戦略が変わればITも変わるのである。

 

次回は、IT戦略へと話を進めよう。


小森 哲郎(こもり てつお)氏
 
著者・小森 哲郎(こもり てつお)氏プロフィール
コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーで18年間の勤務経験を持ち、世界各国の企業の戦略策定、経営改善に携わる。2002年4月よりアスキーの顧問として再建企画を策定したのち、同社社長に就任、短期間のうちに劇的な企業再生を実現する。現在は、クラシエホールディングス株式会社の代表取締役CEO兼社長執行役員として全社の改革を進めている。



※この記事は、「アスキービジネス ITスキルアップ 2005年11月号」の記事「小森哲郎の『経営から見た IT化成功の勘所』」を再掲載したものです。

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