文●小森 哲郎
今回は、「7S」のフレームワークのうち、ストラテジー(戦略)にコマを進める。
IT化、すなわちIT投資が効果的に機能しない原因を突き詰めると、「戦略の不在」に行き着くことが多い。
競争社会において、戦略を持たない企業などないと思われるかもしれないが、単なる戦術を戦略と混同しているケースも多い。それでは、「戦略」とは何なのか? 今回は、まずはその点を明確にしたい。そして、次回(後編)にて、IT戦略の立案へと話を進めていくことにしよう。
7S:経営における課題解決に取り組む際、Strategy(戦略)、Structure(組織機構)、System(運営システム)、Skill(組織能力)、Staff(人材)、Style(経営風土)、Shared Value(共通価値観)の7つの観点から、原因や解決策を多元的に捉えるための枠組み。
IT投資の目的が絞られず、投資が全体最適になっていないといったことがなぜ起こるのか。それは、戦略があいまいだからである。戦略がきちんと定義されていないと、CRMやSCMといったファンシーな外来語や、不明瞭なコンセプトに引きずられ、投資の割にはインパクトのない結果になりやすい。また、戦略があいまいだと、何を優先して投資するかが定まらず、IT投資にメリハリもつかない。
では、「戦略」とは、そもそも何なのか。具体的にIT戦略の中身を見ていく前に、この言葉を定義しておく必要があるだろう。中には、ギャンブル的な要素を持つものだけが戦略で、今のビジネスの延長線上にあるアクションは戦略とは言えないと考える人もいる。しかし、それも他社との競争において、大きなインパクトを生み出すものであれば、十分戦略になりうるのである。
さまざまに定義される戦略という言葉だが、一番分かりやすく、よく使われている定義が、「Set of integrated actions to secure sustainable competitive advantage」だ。日本語に訳せば、「持続性のある競合優位性を確保するための統合化されたアクションの固まり」となる。
つまり、戦略とはアクションであり、それも複数のアクションから成り立っている。なぜなら戦略は、持続性のある競合優位性を築くための手立てだからだ。ワンショット、ワンタイムでおしまいというアクションは、戦略になりえないことが多い。
また、それらのアクションの一貫性、統合性(integrated)も重要である。具体的に例をあげれば、戦略においては、「企業内の技・製・販に対して一貫したロジックを持っている」「短期、中期、長期の観点で整合性がとれている」「企業の全体目標、業績目標、事業目標と矛盾がない」「内部、外部のリソース配分がきちんと体系化されている」必要がある。
企業の中では、常に複数のプロジェクトや作業が同時に走っている。上記のような点を踏まえて戦略に落とし込んでおかないと、何を優先すればいいのかが見えてこない。逆に言えば、戦略が明確なら、プライオリティも明確になり、何を守り、何を捨て、何に優先投資するかがはっきりする。
CRMやSCMはツールでしかない。どんなツールを使うかは、戦略の前ではささいな問題である。まずは、企業が競合優位性を持つためにどんなアクションをとっていくべきか、そのために業務プロセスをどう改善していくか、という点をきっちり作り込んでおく必要がある。