文●小森 哲郎
現場のニーズを抽出する能力とは、テクニカルなことを超え、実際にシステムを使う現場サイドの事業戦略や業務プロセスを理解する、ある意味、翻訳する能力である。そして、事業戦略を具体的に業務プロセスに落とし込める現場感覚が必要だ。さらに、システムの導入が、現場にプロセスの変更を迫る場合、それがユーザーの立場から見てほんとうに役に立つものかどうかを見極められる能力も欠かせない。
そういった現場感覚を身につけるには、自分で四苦八苦勉強するという手もあるが、ユーザーサイドをどう巻き込んでいくかも考えなければならない。その際、人事交流はすごく重要な要素となる。テクニカル系の人には、コミュニケーションが足りない人が多い。ITを導入するということは、業務を改革するということである。現場のプロセスを変えるシステムを入れようとするときに、2、3回、ユーザーにインタビューしただけで済むわけがない。現場のニーズを正しく抽出できるかどうかは、まずは十分に時間を使って話を聞いたかどうかなのだ。
そのうえで、もちろん話をする相手や状況によって、コミュニケーションのやり方は変えていかなければならない。場合によっては、酒を飲みに行くというのもある。また、きっちり分かりやすいドキュメントを作って持っていくというのが有効なときもあるだろう。フォーマル、インフォーマルに関わらず、コミュニケーションの量を増やすことが重要である。毎日御用聞きのように話を聞きに行けば、人間と人間の間では、いろいろなことが可能になるものなのだ。
スキル・スタッフの問題は、以上のようなことに重点を置くことで、いくつかの解決具体策が見えてくる(図2)。その中でも一般的には人材のローテーション、特に現場の優秀人材をIT部門に持ってくるのが常道である。また企業によっては、IT部門に、ITの枠を超えた「業務改革」を使命として与え、全社のリーダーシップを取っていく形にすることで、組織スキルの向上の後押しをするアプローチもある。
![]() |
|---|
| 図2:IT化の問題がスキル・スタッフにある場合の典型的な2大原因 |
スキル・スタッフの問題は、単なる「教育」で解こうとするのではなく、より大掛かりな仕掛けに真の答えがあることが多いのだ。

※この記事は、「アスキービジネス ITスキルアップ 2005年10月号」の記事「小森哲郎の『経営から見た IT化成功の勘所』」を再掲載したものです。
|
|
||||
|
|
|
|
|
|
|
|
||||