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小森哲郎の「経営から見た IT化成功の勘所」タイトル

文●小森 哲郎

IT化の現場には、常にさまざまな問題やトラブルがひしめいている。これらの問題を解決していくには、IT担当者がシステムを越えた全体像を正しく把握し、1つ1つの課題を的確に処理していかなければならない。
この連載は、そのために必要となる能力、特に経営の視点からの能力向上に少しでも貢献できればとの趣旨で企画された。ITの技術者としてだけでなく、経営の視点からもITを捉えることができるようになれば、IT化におけるリーダーとして今以上に活躍できるはずである。
今回は、まずなぜITが問題を抱えてしまうのかを構造的に解明し、ITという「生き物」を理解していきたい。

第1回 本質を見極める目を持つことがIT化成功への第一歩


ITがトラブルの元になっている

 IT化=トラブルの温床という図式が多くの現場で成り立ってしまっている。よく耳にするのが、構築されたシステムそのものに問題があるというケースだ。利用者のニーズに合っていなかったり、使い勝手が悪かったりして、せっかく構築しても実際には使用されていない場合もある。現在のシステムの修正に投資がかかり、資金不足でそもそも適切なシステムが構築できないということもあるだろう。既存システムのメンテナンスに手一杯で、新システムを導入する余裕がないという事例は枚挙に暇がない。システム構築の過程において、プロセスが不明確であったり、実施の責任権限がはっきりしないために問題が発生することも多い。

 なぜこのようなことが起きるのだろうか。その答えは、ITの特質そのものにある(図1)。

ITの問題を引き起こす4つの要因
図1:ITの問題を引き起こす4つの要因

技術と経営の視点の明確な関連づけと可視化が
問題発生を防ぐ

 ITの問題構造を、投資に対するリターン最大化問題、すなわち、インプットとアウトプットで考えてみよう。インプットをIT投資とするなら、アウトプットは収益となる。これにIT化によってもたらされる作業の自動化など、テクニカルな進歩を加味すると、図1のように因数分解でき、IT投資リターンの最大化は「IT投資によってどれくらいテクニカルに進歩するか」と「ITによるテクニカルな進歩はどれだけ利益をもたらすか」の2つの要素の積となる。

ITのインプット(投資)とアウトプット(利益)の構造
図2:ITのインプット(投資)とアウトプット(利益)の構造

 前者の要素は、いわば技術者の視点で、IT投資によってどれだけ作業を自動化できるのか、データのやりとりをどう効率化できるかといった、ITがもたらす業務面での進歩に向けられる。一方、後者の要素は、経営寄りの見方であり、たとえば自動化された作業により、どれだけの収益が見込めるのかが関心事となる。そのため、技術者の視点でのみIT化をとらえてしまうと、「IT投資に対するリターンがよく見えない」「投資しているわりにはリターンがない」という議論が生じてしまうのである。

 IT投資から利益を得るためには、技術者と企業家の両方の視点をうまく融合してITを考えていかなければならない。1人の人間が両方の視点を持っていなくてもかまわないが、両方の視点が互いに関連づけられた上で可視化されていることは大切だ。

 もう1つの原因は、ITはそもそもツールでしかないのだが、技術は進歩し続けるため、不確実な要素を内包していることがある。つまりメンテナンスが常に必要となり手がかかる。また多くの場合、構築する人とシステムを使う人が別だというのも、コトをややこしくする。さらには、ITというツールを使いこなすには、人の「考え方」「動き方」に対しても変革が求められる。導入するだけで所期の成果が得られることは稀。自分たちの考え方と動き方を強制的に変えていって、初めて効果が生まれてくるのである。

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IT化の目的は自社の競争力強化にある、
という基本に立ち返る

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