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プロの視点 企業の成長を加速する優遇税制活用術

文●税理士 今村 仁

ITに関する税制知識に定評のある税理士・今村 仁氏がマネジメント層が知っておきたい最新のIT税制について、解説を行なう。

第5回 中小企業に手厚い平成20年度税制改正大綱のポイント


 2007年12月13日、自民党が「平成20年度税制改正大綱」を発表しました。この税制改正大綱は2008年4月に改正する予定の税制の基本プランであり、これを読み解けば、今後の税制が企業活動にどのような影響を及ぼすか推測できます。今回は、この税制改正大綱の中で、特にマネジメント層が知っておくべき項目に焦点を絞り、解説します。

 ただし、注意点が1つ。例年ならば、税制改正大綱は閣議決定後、国会審議を経て、ほぼ素案どおりのものが決定されます。しかし、今年は衆議院と参議院でそれぞれ第一党が違う「ねじれ国会」となっているため、発表された税制改正大綱がそのまま4月の税制改正に反映されるかが不透明です。そのため、今回の解説する内容が4月以降、実際の税制として施行されるかどうかは現時点では不明である点をご理解下さい。

適用枠が拡大される情報基盤強化税制

 まず、注目すべきは「情報基盤強化税制」に関する改正です。この税制は優れたセキュリティ機能を搭載した情報システムへの投資を企業に促すもので、今年度いっぱいで終了される予定でしたが、その期間が2年間延長され、その内容も以下の3つの点から見直されています。

(1)中小企業の適用条件の緩和
(2)新たな情報システムが対象に
(3)SaaS・ASP事業者への適用

 まず、(1)の中小企業の適用条件の緩和についてです。これまでこの税制が資本金1億円以下の青色申告法人で適用されるためには、ITシステムへの投資が「年間300万円以上」必要でしたが、この改正案では「年間70万円以上」に引き下げられています。たとえば、これまで年間250万円ほどのシステム投資を行なっている中小企業では、この税制の恩恵を受けられませんでしたが、今回の改正が行なわれれば、投資額の約7%にあたる年間17万5000円の税額控除が受けられます。

 ただし、資本金10億円を超える大企業に対しては逆に条件が厳しくなり、年間200億円を超えたIT投資に関しては、この税制の対象から外れます。

 次に(2)の対象となる情報システム追加ですが、新たに「部門間・企業間で分断されている情報システムを連携するソフトウェア」を対象資産として追加するようです。政府は日本企業におけるIT利用の実態として、個々の部門で最適化されたシステムを導入していながら、全体最適を促すような部門間の情報システムの連携が不足していると考えているようです。そのため、部門間連携を図るためのミドルウェアのようなソフトがこの税制の適用対象に加えられるでしょう。

 また、この改正案では(3)のように、政府が力を入れているSaaS・ASP事業者を、この税制の適用対象に含めると明記しています。

 これまでの情報基盤強化税制は、あくまで自社の情報システムに対する投資に限られていました。そのため、SaaS・ASP事業者がユーザーに提供するサービスのためのシステム投資には適用されませんでした。SaaS・ASP事業者はこの税制を活用することで、セキュリティ面を強化したシステム基盤を構築できます。政府はこの改正によって、SaaS・ASP事業者だけでなく、サービスを利用するユーザー企業に対するセキュリティ強化も目的としているのでしょう。

適用のハードルが低くなった人材投資促進税制

 教育訓練費に対する税制上の優遇措置である「人材投資促進税制」も適用条件が緩和され、企業のさらなる活用が期待できそうです。現在の税制が適用されるには、企業の教育訓練費の金額が、「過去2年分の教育訓練費の平均」より上回る必要がありました。しかし、改正案では、教育訓練費が「労働費用」の0.15%を超えれば、この税制が適用されるようになります。労働費用とは、企業が労働者を雇用する上で支払うものすべてを指し、給与だけでなく、健康保険や教育訓練費などを含んだものです。

 税額控除率は労働費用における教育訓練費の割合に応じて、8%~12%までとされています。たとえば、従業員500人の企業が1人あたり年間3万円を人材教育に投資したとします。この企業が労働者1人当たりに支払う労働費用を450万円とすると、労働費用における教育訓練費の割合は450万円÷3万円で0.67%となり、0.15%を超えているので税額控除が適用されます。

 具体的な控除率は以下の計算式で求められます。

控除率=8%+(教育訓練費÷労働費用-0.15%)×40

 上記の例をこの式にあてはめてみると、

8%+(3万円÷450万円-0.15%)×40=28.8%

となりますが、控除率の上限は12%ですので、一人当たりの控除額は

3万円×12%=3600円

となります。これだけだと、あまり大きな減税には思えませんが、社員が500名いれば年間180万円が税額控除されるわけです。従業員一人あたり年間2~3万円の教育訓練費用を投じる企業は珍しくないため、多くの企業で活用できる税制になるでしょう。

 なお、現行の税制では企業の規模に関係なく適用されていましたが、この改正案では資本金1億円超の企業は対象外とされているため、4月以降この税制を利用できなくなります。

中小企業の競争力強化を狙う平成20年税制改正大網

 ここまで見てきてわかるように今回の税制改正大綱は、大企業に対しては、情報基盤強化税制の適用上限を設定したり、人材投資促進税制の適用が受けられなくなるなど、優遇措置を大きく見直しています。その一方で、中小企業が今まで以上に利用しやすい税制に変わっています。

 このような中小企業優遇の動きは他の税制でも見られます。この3月で終了するはずだった中小企業を対象とした減税措置である「中小企業投資促進税制」「少額減価償却資産の特例」についても期限が2年間延長される予定です。

 大企業が軒並み最高益を達成していながらも、中小企業はまだまだ十分な成長軌道に乗っていないという日本経済の実態を踏まえ、政府は中小企業の投資を促すための優遇措置を準備しています。こういった政府の動きを捉えながら、適切な投資を行なっていくことが今の経営者に求められているといってよいでしょう。

今村 仁(いまむら ひとし)プロフィール
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員税理士。「◎私たちは『経営者へのお役立ち度★世界一』の税理士事務所を目指します!」を社是に、ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広く手がける。
ホームページ:http://www.money-c.com/
メール:info@money-c.com

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