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プロの視点 企業の成長を加速する優遇税制活用術

文●税理士 今村 仁

ITに関する税制知識に定評のある税理士・今村 仁氏がマネジメント層が知っておきたい最新のIT税制について、解説を行なう。

第4回 節税のチリも積もれば山となる


 節税につながる税制はいろいろとありますが、金額が大きいものばかりではありません。しかし、小さい節税額でも集めればそれなりの大きさになります。今回は企業の収益構造に貢献してくれる節税策をいくつか紹介します。

企業に厳しかった接待交際費

 取引先との飲み会でかかった飲食費や、お中元やお歳暮などの贈答品代。経営者の多くはこれら「接待交際費」を、企業活動をしていく上での必要経費として考えているようです。しかし、税務上はそうではありません。

 現在、資本金1億円以下の中小企業は、接待交際費のうち、1割は経費として処理できません。また、年間400万円を超える費用に関しては、経費として認められません。資本金1億円超の中堅規模以上の会社についてはもっと厳しく、接待交際費は一切経費処理できないのです。税務上、経費として処理できないということは、実際にはお金を使ったのに経費として収入から差し引けないため、課税所得になるということです。

所得税法改正によって生まれた新たな節税法

 ところが、2006年3月に交付された所得税の税制改正において、「飲食にまつわる接待交際費が1人当たり5000円以下であれば、別科目で計上できる」という制度が加わりました。この新しい税制改正は、ずばり節税に使えます。

 たとえば、取引先の社員3人と自社の社員3人の計6人で、接待を目的に居酒屋に飲みに行き、支払いに合計3万円かかったとします。以前はこの場合、3万円全額が無条件で接待交際費として計上されていました。しかし、税制改正によって、このケースは「会議費」などの別科目で経費処理できるようになったのです。該当すると節税になる「1人当たり5000円」という飲食費の基準ですが、いくつか注意点があります。

 まず、その飲食をともにする相手に、1人以上「社外の人間」が含まれている必要があります。さらに、この制度を適用するためには「日付、飲食先、相手先会社名・氏名、参加人数、金額など」を書いた書類を残す必要があります。参考までに、必要な項目を以下に記しておきます。なお、この制度では税抜経理の会社は消費税を抜いて判定します。

「1人あたり5000円以下の飲食費」の基準適用に必要な項目
>図1 「1人あたり5000円以下の飲食費」の基準適用に必要な項目

「1人あたり5000円」のルールで数百万円単位の節税も可能

「1人あたり5000円」と聞くと、節税効果がそれほど大きくないように感じるかもしれません。しかし、ある程度の企業になれば接待交際費も馬鹿にならない金額になっていることが多いのです。あくまで一般論ですが、5000円以下の飲食費を別項目として計上することで、接待交際費が税制改正前の半分程度に減るケースも珍しくないようです。

 実際にある中小企業では年間約1000万円の接待交際費を計上していたのですが、この法改正で550万円まで減少したそうです。中小企業の接待交際費は400万円までは1割、それ以上は全額が課税対象となります。法改正前と法改正後の課税対象額を比較してみると、下記のような数式になります。

(法改正前)
1000万円-400万円+(400万円×10%)=640万円
(法改正後)
550万円-400万円+(400万円×10%)=190万円

 つまり、課税対象額は640万円から190万円に減少したことになります。法人税率は約40%ですから、実際の納税額は約256万円から約76万円と減り、トータルで約180万円の減税になるのです。

 また、資本金1億円を超える中堅企業でも、年間約2000万円かかっていた接待交際費が約1200万円にまで減り、税金の支払額は約320万円も減少するというケースがありました。

中古資産をうまく活用した節税法

 こういった積み重ねで節税効果が大きくなる方法は、ほかにもいろいろ存在しています。

 たとえば、「新品ではなく中古資産を購入する」といった手があります。企業が大きな資産を購入したとき、何年かに分けて経費として処理する「減価償却」を行ないます。この減価償却という制度では中古品は新品に比べて短期間で償却できるため、1年あたりの償却額が大きくなり、課税額を縮小できるというメリットがあります。企業の投資は大きな利益を上げた年に行なうことが多く、その年に大きく償却することができれば、節税の観点からは有利なのです。

 3月決算のある企業が期首に自動車を買う場合、同価格の新車と4年落ちの中古車のどちらがお得か考えてみましょう。価格はどちらも300万円とします。償却方法にはいくつかあるのですが、今回は初年度の減価償却費が大きい「定率法」で考えてみます。減価償却費は購入代金の耐用年数によって定められている償却率をかけて算出します。

「定率法」の償却率表
>「定率法」の償却率表
(平成19年4月1日以後取得の資産に限る)

 新車は耐用年数が6年と定められており、償却率は41.7%。300万円×41.7%で初年度の減価償却費は125万1000円となります。

 一方、4年落ちの中古車は耐用年数が残り2年ですから、初年度の償却率は100%で300万円。ただし、減価償却は100%全額償却できるわけではありません。耐用年数が経過した資産でも帳簿上に価値があることを示すため、最後に1円だけは残すというルールがあります。したがって、この中古車の減価償却費は299万9999円となります。つまり、新車に比べて中古車の初年度の減価償却費が約175万円も多くなり、納税額が約70万円も少なくてすむのです。

小さな企業努力の積み重ねで課税額ダウン

 また、従業員に「出張手当」を支給することで節税するという方法もあります。出張手当とは社内の出張旅費規程にもとづく、社会通念上妥当な金額を出張した社員に支払うものです。税務上、出張手当は実費を弁済する意味を持っているので消費税が含まれています。中小企業ではそれほど導入されていないようですが、実はこの出張手当の中の従業員に支払われる消費税が節税に繋がるのです。

 簡単に消費税の仕組みを説明すれば、企業は売上に含まれる「企業が受け取った消費税」から、経費などに含まれる「企業が支払った消費税」を差し引いた消費税額を税務署に納めます。つまり、経費が増えれば、取引先や従業員に支払う消費税も増えるため、企業が納税する消費税の総額が減るというわけです。

消費税の仕組み
>図3 消費税の仕組み

 ただし、単に出張手当をつくり、支払いを増やすだけでは企業の利益が圧迫されてしまいます。そこで、給料形態を「給料+出張手当」という形に変更することで、従業員へ支払う金額をいままでと変えないようにします。もちろん、この変更には従業員の合意が必要です。たとえば、出張手当が月合計3万円なら、給料30万円の社員は「給料27万円+出張手当3万円」とするわけです。すると、手当の5%は消費税として計上できるので、出張手当3万円の5%、約1430円は節税に繋げられるのです。年間にならすと1人あたり約1万7000円。企業規模にもよりますが、営業部全体に適用するなど、ある程度の母数で出張手当を取り入れれば、節税できる消費税額は大きくなります。

 今回紹介したような節税策の1つ1つはそれほど大きい金額を生み出すものではありません。しかし、優遇税制や法律改正など企業にメリットをもたらす法律をきちんと把握して、節税の仕組みを全社的に導入することで、結果的に大きな金額になります。

 節税で生まれた原資を研究開発費や優秀な人材獲得のために投じることで、企業の競争力強化やさらなる成長の実現に繋げてみてください。

今村 仁(いまむら ひとし)プロフィール
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員税理士。「◎私たちは『経営者へのお役立ち度★世界一』の税理士事務所を目指します!」を社是に、ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広く手がける。
ホームページ:http://www.money-c.com/
メール:info@money-c.com
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