文●税理士 今村 仁
ITに関する税制知識に定評のある税理士・今村 仁氏がマネジメント層が知っておきたい最新のIT税制について、解説を行なう。
今回から「CIOおよびマネジメント層が知っておくべき税制」をテーマに、知って得する・知らないと損する税金関係の情報をお伝えしていきます。
第1回目は、システム投資などをするときに事前に知っていると得する税制上の優遇措置についてです。
パソコンなどを設備投資するとき、一体いくらまでの金額ならそのまま費用計上していいのか、ご存知ですか? 言い換えると、いくら以上の設備投資は資産計上しなければならないのか、です。ちなみに、投資した金額が費用ではなく資産になるということは、減価償却を通じて費用処理をおこなうということになりますので、節税の観点からはよろしくないことになります。
先ほどの費用処理できるか資産計上しないといけないかのバーは、原則10万円です。つまり、10万円未満の投資金額であると全額費用処理することが可能となり、投資金額が10万円以上になると資産に計上しないといけないことになります。たとえば、1台あたり9万円のパソコンを10台購入して90万円投資したとすると、その全額を費用処理することができるということです。
私が原則10万円ですよとお伝えするのには、例外があるからです。青色申告書を提出する資本金1億円以下などの一定の要件を満たす中小企業者などについては、10万円のバーが30万円に引き上げられます(年間投資累計額300万円まで)。これを「少額減価償却資産の特例」といいます。これであると、ほとんどの一般パソコンが費用処理できることになるでしょう。
それでは企業側がこういったIT投資を行なうにあたって、知っておくべき税制を紹介します。
平成18年度税制改正において、新たに設備投資減税として「情報基盤強化税制」というものが創設されました。これは、青色申告書を提出する法人または個人事業者が、ISO/IEC15408(情報セキュリティの国際基準)に基づいて評価・認証された情報システムに設備投資した場合に、税制上の優遇措置があるというものです。
情報基盤強化税制によって税制が優遇される製品は
1. OS(オペレーティングシステム)およびこれと同時に設置されるサーバー
2. データベース管理ソフトウェア及びこれと同時に設置されるアプリケーションソフトウェア
3. ファイアウォール(1または2と同時に取得されるものに限る)
といった3つのカテゴリーに分かれてます。詳しくは独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のホームページに対象製品の一覧が出ています。導入した製品は対象法人の資本金や投資合計額によって優遇される控除金額が変わってきます。(図1参照)
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| 図1:情報基盤強化税制 |
たとえば、資本金2億円のA社が、社内システムの構築にISO/IEC15408に基づいて評価・認証されたOSを組み込んだサーバーを3000万円で購入したとします。すると、「資本金1億円超10億円以下」であるA社の場合、3000万円以上の投資で情報基盤強化税制に該当することになりますので、税制上の優遇措置を受けられることになります。
次に、対象となる情報システム関係の設備投資を行なった場合に、どういった税制上の優遇措置があるのでしょうか。
情報基盤強化税制に該当すると、2つの減税措置の内いずれかを選択できることになっています。1つ目の減税措置は、法人税額から該当する設備投資額の7%相当額を税額控除できるというものです。つまり3000万円の設備投資であれば3000万円×7%=210万円も「税金」が控除されることになります。これは、経費ではなく「税金」そのものが控除されるという点で効果は大きいといえます。はっきりいって該当するとかなりお得です。
ただし、1年の控除額には上限があり、当期の法人税額の20%までになります。それを超えた分に関しては翌年度に限り繰り越せる仕組みとなっていますのでご注意下さい。
もう1つの減税措置は、設備投資額の35%を特別償却できるというものです。特別償却とは、通常の減価償却で認められている費用に加えて、購入費用の特定割合を減価償却できる仕組みです。これにより費用が増加し、税金を抑えられるというメリットがあります。たとえば、3000万円の設備投資の場合、通常の減価償却費に加えて、設備投資額3000万円の35%にあたる1050万円が、購入した年度の特別償却費として費用計上できることになります。
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| 図2:対象設備を取得した場合 |
また、資本金1億円以下の会社がリース契約で設備投資をした場合には、リース費用総額の4.2%に対して税額控除が受けられます。たとえばリース費用総額3000万円の場合、3000万円×4.2%で、126万円の減税が受けられることになります。もちろん支払っているリース費用は経費になります。ただしリース税額控除の適用要件には、「リース契約期間が4年以上」かつ「法定耐用年数以下」であることというのもありますのでご注意下さい。
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| 図3:対象設備がリースの場合 |
それでは、情報基盤強化税制に該当する設備投資を行なった場合、税額控除と特別償却のどちらを選択するべきなのでしょうか。
次回、両者の見極め方ををお伝えしたいと思います。