【短期集中講座】中小企業にとってのメリットと課題を探る
文●木暮 仁
中小企業のIT化の流れをひととおり抑えたところで、ここからは大企業で普及した本格的なERPパッケージが、中小企業に必要とされてきた背景を考えていきたいと思います。
そもそも、ERPパッケージとは非常に高価なものでした。情報産業や金融業など特殊な業種を除けば、一般的な企業の売上高に対するITの投資額は1%程度であり、ERPパッケージへの投資も同様に売上の1%程度が目安だといわれています。従来のERPパッケージは、ソフトウェア本体の価格(ライセンス)だけで数億円、コンサルタントや構築費用も入れると数十億円の費用が必要で、そのため中小企業には無縁の存在だったのです。
ところが最近では、数千万円クラスのソフトウェアが多く出現し、ハードウェアやコンサルタントなどの費用を合わせても、総額1億円以下の費用から導入できるようになりました。すなわち、売上高が100億円程度の企業でも、ERPパッケージを導入できる状況になってきたのです。
ベンダー側からすれば、大企業でのERPパッケージ導入は次第に飽和状況に近づいています。そこで今度は、中小企業をターゲットにするようになってきました。
では、ユーザー側からみるとなぜERPパッケージが求められるようになってきたのでしょうか。それにはERPパッケージのメリットを改めて考えてみるといいでしょう。
前回紹介したように、ERPパッケージには、ベストプラクティスを取り込むことで業務改革を実現できるという利点がありますが、中小企業の場合には、中小企業ならではのメリットが得られます。
1.点のシステムから面のシステムへ
IT化が遅れている中小企業では、「売上計算」「給与計算」「会計計算」など個別業務のシステムが連携せずに独立したシステムになっています。いうなれば、“点のシステム化”です。
当然ながら売上計算は、受注から納入までの販売システム全体の一部ですから、受注、在庫確認、出荷、流通などの業務と連携した処理が必要になりますし、販売システムの売上データを会計システムの売掛金データとして使えば転記が不要になります。企業全体の最適化を図るためには、全体を統合した一気通貫のシステム、“面としてのシステム”が必要になるのです。したがって、統合型システムであるERPパッケージの導入は、その解決につながる手法のひとつだといえるでしょう。
2.ひな型としてのERPパッケージ
全社的な観点から総合的なシステム化を図ることが求められるとはいえ、中小企業ではそれを設計する人材も少なく、企業としての経験もありません。このような環境では、白紙から検討するのではなく、一般的なひな型を参考にするのが適切でしょう。そのひな型がERPパッケージだといえます。すなわち、ERPパッケージの導入は、これまで遅れていたIT化を早急に進めるのに適した手段なのです。
また、ERPパッケージ導入ではコンサルタントの助力を得るのが一般的です。コンサルタントの力を借りることは、経営の観点から必要な情報は何か、得られる情報をどのように活用するのか、それを実現するには業務活動をどう変革するのか、改めて検討するよい機会ともなります。
3.改訂に柔軟なシステム
中小企業の特徴に、大企業と比較して環境への柔軟性が高い、小回りのよさがあります。業務の内容や仕事の仕方が変化すると、それに伴って情報システムの改訂が必要になるため、中小企業では改訂が容易な情報システムにしておくほうが有利です。
ERPパッケージは多様な業種・業態に適用されることを前提にしていますので、自社業務の変更に比較的容易に対処できますし、データの持ち方が整理され、機能がコンポーネント化されているので、システム改訂が部品の取替のように簡単になります。ERPパッケージは改訂に容易な環境でもあるのです。
こうしたさまざまなメリットを踏まえたうえで、中小企業でERPパッケージを導入する際にはどのような点に気をつけるべきか――次回はこのあたりを考えていきたいと思います。

※この記事は「アスキービジネス ITスキルアップ 2006年10月号」に掲載した特別企画「ERPパッケージをはじめから学ぶ」を再編集したものです。
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