【短期集中講座】中小企業にとってのメリットと課題を探る
文●木暮 仁
市販パッケージの限界が認識されていく中、1990年代前半に登場したのがERPパッケージでした。「統合基幹業務パッケージ」と訳されるERPパッケージは、企業の業務全体を統一した思想でまとめたパッケージソフトです。ERPパッケージは、市販パッケージのメリットを受け継ぐとともに、その限界を解決しており、グローバル化、ダウンサイジング環境への移行、西暦2000年問題への対応といった時代の要請と重なって、1990年代を通して大企業に浸透していったのです(図1)。
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| 図1●大企業の間でERPが普及した背景 |
同時に、ERPパッケージは「業務改革のインフラである」と認識されました。ERPパッケージのERP(Enterprise Resource Planning)とは、直訳すれば「企業資源計画」ですが、経営資源の最適化のことであり、その頃ブームになったBPR(Business Process Reengineering:経営革新)とほぼ同じ意味だといってよいでしょう。
そもそも情報システムとは、業務の仕方を規制するものです。逆にいえば、業務を改革するには、インフラとしてのシステムを改革することが求められます。優れたERPパッケージでは、“ベストプラクティス”(他社にも応用できる優れた方法)となる先進的な企業の情報システムを取り込んでいます。そのため、「BPRの実現には、ERPパッケージの導入が適している」といわれるようになりました。
市販パッケージの課題解決やBPRの実現に期待されたERPパッケージですが、中にはそれに添う成果が得られなかったケースもありました。要因には大きく次の3つがあるといわれています。
1.アドオンの危険
ERP“パッケージ”といえどもイージーオーダーですから、自社の状況に合わせた手直しが必要になります。それを(広義の)カスタマイズといいます。
カスタマイズには、
(1)社内の組織名称、得意先コードの桁数、償却方法(定額償却/定率償却)の指定など、ベンダー側が変更を想定しているもの
(2)自社固有の販売方法や給与体系など、ベンダーが想定していないもの
があります。(1)を(狭義の)カスタマイズといい、通常はパラメータの設定などで指定できます。(2)をアドオンといいますが、これは個別にプログラムを作成して組み込む必要があります。
アドオンが多いと開発に費用や時間がかかり、ERPパッケージの長所を生かせないうえに、バージョンアップのたびに適切に動作するか、確認作業に多くの労力がかかってしまいます。そのため、ERPパッケージの導入を成功させるには、アドオンを抑えることが重要だとされました。
2.ユーザー主導から経営主導へ
アドオンを抑えることは、ERPパッケージに合わせて業務の仕方を変更することであり、いわば“靴に足を合わせる”ことになります。以前は、「ユーザーニーズの実現がよい情報システムの基本」だといわれてきたのに対し、ERPパッケージではユーザーの要望を抑えなければなりません。不満に思うユーザーを説得するために、経営者が自ら先頭に立って、導入の意義を納得させる必要があります。
3.「仏作って魂入れず」の恐れ
「ERPパッケージは稼動した。でも、BPRの成果は上がっていない」というケースが多くあります。この原因として、ERPパッケージの導入にばかり目が向いて、肝心の業務の見直しや組織の変更など、非情報系活動がおざなりになっていることが挙げられます。経営者は、ERPパッケージそのものでなく、常に「ERP=BPRの実現」への関心を持ち続けるべきでしょう。
そのほか、適用業務の選択、将来の維持費用など、考慮するべき点は多くありますが、これらは特に中小企業での導入時の留意点ともなりますので、次回以降に詳しく見ていくこととしましょう。

※この記事は「アスキービジネス ITスキルアップ 2006年10月号」に掲載した特別企画「ERPパッケージをはじめから学ぶ」を再編集したものです。
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