~実務に役立つ~
グロービス・キャピタル・パートナーズ 山中 礼二
ここまでは、問題の本質を掘り下げ、カテゴリーごとに分析していくという思考プロセスを提案してきた。しかし現実の「傷み」は、一つの原因から発生するのではなく、複数の原因から発生することが多い。「PARC」の構成要素である、業務プロセス、組織構成、人事制度、評価制度、企業文化……これらが整合性を持って組み合わされていなければ、「傷み」が発生する。
たとえば、クリエイティブな要素の強いウェブサイト制作を請負う会社の場合、納期とコストを守り、正確に納品を収めるのが仕事(ルーティン)である。一方で、この企業がクリエイターのみを採用し、芸術性のために全てを犠牲にするカルチャーを持っている場合、カルチャーとルーティンに不整合が発生している。
また別の例で、顧客満足を徹底的に高めるという「戦略」を持った、システム開発会社があるとする。顧客企業にアンケート調査を行い、顧客満足度を計測することで個人のパフォーマンス評価に反映させている。「戦略」と「人事評価制度」の整合性は、取れている。しかし、この企業が「一月100件の新規企業訪問」(ルーティン)を、営業担当者にノルマとして義務付けているとしたら、どうだろうか。ルーティンと評価制度の整合性が取れておらず、それが営業担当者に強いストレスを与えることになりかねない。
PARCの中で、一つの要素のみを「傷み」の原因として考えれば、要素間の不整合という本質的な問題を見落とすことになる。このような「不整合」から来る「傷み」を見極めるためにはPARCと戦略について自社の特色を列挙した上で、それぞれが他の特色と不整合を起こしていないか考えるとよい。
時の流れを無視して、今現在における問題を切り取って分析すると、問題を見誤る恐れがある。企業は動的に発展し、組織を改変していく。特に急激に成長する企業の場合、必然的に「傷み」が発生することがしばしばある。
『アントレプレナーマネジメント・ブック―MBAで教える成長の戦略的マネジメント』(著:エリック・G. フラムホルツ、 イボンヌ ランドル、ダイヤモンド社)という本の中では、これを、"Growing Pains"(成長の痛み)と表現している。
たとえば、冒頭の山田氏の働く人材派遣会社では、これまで営業担当の役員が、営業組織を統括していた。しかしこの企業が急激に成長し、営業組織の規模が100名近くまで拡大した結果、この役員が全社員のパフォーマンスを見れなくなってきた。この結果、末端の営業スタッフの間では「自分が評価されない」「いつも行き当たりばったり的に、仕事が上から降ってくる」といった不満の声が挙がってきていた。
この「傷み」は、営業組織を次のステップに進化させるべきタイミングの到来を告げている。ミドルマネージャーを育成し、分割した営業組織をミドルマネージャーに任せる。さらに、経験の浅いミドルマネージャーであっても、ある程度営業活動を行なえるように、営業のノウハウを「マニュアル化」、「仕組み化」すべき時期が来ている可能性がある。
特にこの段階の「傷み」は、単に憎むべき問題としてネガティブ捉えるのではなく、企業の成長発展の中の1プロセスと肯定的に捉えることができる。他社の成長発展のプロセスを知ることで、上記のような肯定的な見方を身につけることができる。同業他社について書かれた本があれば、ぜひ読んでいただきたい。また、異業種であっても、以下の書は参考になる。
『GMとともに』
著:アルフレッド・P・スローンJr. (ダイヤモンド社)
『タフ&クール―Tokyo midnightレストランを創った男』
著:長谷川 耕造、鹿島 茂(日経BP社)
『成功者の告白―5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語』
著:神田 昌典(講談社)
次回最終回では、Step 4として「問題の解決策を打つこと」を具体的に解説していく。
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