~実務に役立つ~
グロービス・キャピタル・パートナーズ 山中 礼二
暗い顔をした社員。会話のない職場。無断欠勤の横行。社員のうつ病。皆さんの組織には「傷み」が発生していないだろうか。どのような企業、どのような組織にも、必ず「傷み」が発生する時期がある。本連載では3回に分けて、組織の「傷み」を乗り越える対処法をおくる。
【ある会社の事例】
中堅ながら成長を続ける人材派遣会社A社で働く山田隆二(仮名)は、怒っていた。
昨年の組織変更の時に、同僚のライバルが課長に昇格したからだ。仕事の成果に差があった訳ではなく、彼は某取締役のマージャン仲間だった。
そもそも、人事を決めている役員連中は、自分達の会社の現状が分かっているのだろうか。彼等は、一日のほとんどを、社外での商談に費やしている。自分と直接言葉を交わしたことは、ほとんどない。
ビジネスは順調に発展しており、過去3年で売上げは急拡大を遂げている。しかしそれを支えているのは、自分達のように、コーディネーターとして走り回り、必死でスタッフを確保してきた現場の人間である。なのに経営者達といったら……。
考えれば考えるほど、頭の中のメモリから「嫌なこと」データが次々に吐きだされた。こんな会社だから、退職者が多いのだ。山田は、会社に火をつけたい衝動にさえ駆られた。
皆さんの組織は、傷んでいないだろうか。上記の山田さんのような社員が、皆さんの隣に座ってはいないだろうか。
組織の“傷み”は、さまざまな形で現れる。高い離職率。社員のうつ病、過労。互いに口を聞かない同僚。上司の目を見ようとしない部下。皆さんも、一度はこのような職場を経験したことがあるのではないだろうか。
組織は、どうして“傷む”のだろう?
スタンフォード大学のジョン・ロバーツ教授は、「組織」の構成要素として以下の4つを挙げている。(『現代企業の組織デザイン』ジョン・ロバーツ著 NTT出版)
・People (人員)
・Architecture (上下関係など、組織図上の構造)
・Routine (日常業務のやり方)
・Culture (企業風土)
以上の'PARC'が相乗的に“傷み”を発し、そのしわ寄せが必ず「人」に来る。たとえば、以下のようなケースである。
![]() |
|---|
| 傷んだ組織の構成要素のイメージ |
では、皆さんの組織の場合は、どこに問題があり、どのように手を打ったらよいのだろうか。万事に通用する“正解”はないが、以下のステップは実用的である。
具体的には以下の4つのステップに分類される。
Step 1:感じること
Step 2:計測すること
Step 3:問題の本質を見極めること
Step 4:解決策を打つこと
これまで、MBA教育などのマネジメント教育は、数値的な分析に重きをおいてきた。しかしマネージャーにとって一番重要なことは、問題の所在をいち早く“感じる”(”Feeling and Sensing”)こと。『MBAが会社を滅ぼす』の著作がある戦略論の大家、ヘンリー・ミンツバーグ教授の指摘である。
では、どうすれば組織の傷みを“感じ取る”ことができるだろうか。マネージャーが最初になすべきことは、“歩き回る”ことだろう。”Management by Wandering Around”(歩き回ることでマネージする)という言葉は、1980年代にトム・ピータースとロバート・ウォーターマンが著書『エクセレント・カンパニー』の中で提唱して以来、定着した。同書によれば、ボーイング、P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど当時の優良企業ではマネージャー達が頻繁に“歩き回り”、スタッフや顧客たちと気軽なコミュニケーションを多く取っていたという。
リーダーが現場に身を置くことの重要性は、日本でもよく語られている。たとえば、流通大手イオンからダイエー再建の切り札として派遣される川戸義晴氏(ダイエー会長に就任予定)は、ショッピングセンターの開店から最初の一週間、ひたすらフロアに立って、顧客に案内図を配ることで知られている。現場で働くスタッフと同じ空気を吸うことで、組織、顧客、そしてサービスの状況を機敏に感じ取っているのだろう。
皆さんが社内を歩き回り、多くのスタッフ達に声をかけた時に、何が見えてくるだろう。たとえば、「おはよう」と声をかけたときに、スタッフは皆さんの目を見て挨拶を返してくるだろうか。声の張りや、顔色はどうだろうか。会社に出てこなくなった社員はいないだろうか。こういった危険信号を出している社員に気づくことができる感受性の高さが、よいマネジメントの第一歩となる。
|
|
||||
|
|
|
|
|
|
|
|
||||
【IT経営情報局 PDF資料集】
IT導入時に利用できる行政支援に関する資料をPDFで提供しています