なぜ、企業不祥事は続くのか
文●斉木 融
近年、大企業の粉飾決算事件が相次いでいる。第三者のチェック機関である監査法人が機能していないためである。2月20日には顧客からの信頼を失ったみすず監査法人が、監査業務を新日本、トーマツ、あずさの3監査法人に移管すると正式発表した。監査法人の不祥事の構造を探る。
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| 2006年9月に中央青山監査法人からみすず監査法人に名称を変更して、わずか半年で事実上の解散となった。写真を掲げているのは理事長の片山 英木氏。(写真提供:共同通信社/Photo Kyodo News) |
みすず監査法人(旧・中央青山監査法人)が7月をめどに、監査業務をトーマツ、新日本、あずさの三大監査法人に移管し、事実上解散する。四大監査法人の一角を占めてきた業界の雄が、40年近い歴史に幕を閉じる端緒となったのは、昨年発覚したカネボウ粉飾事件である。
カネボウの粉飾は、売り上げの過大計上、在庫の過大評価、経費の繰り上げ計上、連結外しなど、古典的な手口がほとんどながら、その対象が広範囲で、“粉飾のデパート”というのが実態だった。中央青山の会計士は、こうした粉飾操作を「宇宙遊泳」「勧進帳」などと呼び、それを見逃すだけではなく、むしろ率先して指導していた。
「たとえばカネボウは売り上げをかさ上げするために関連会社の興洋染織と商品のキャッチボールを行っていたが、連結のままだと親・子間の売りと買いが相殺されてしまう。会計士は興洋への出資比率を下げて連結対象から外すようアドバイスしています」(全国紙記者)
中央青山が担当した不祥事企業はカネボウ以外にも、古くは自主廃業に追い込まれた山一証券、倒産したヤオハン、一時国有化された足利銀行から、最近の日興コーディアルグループ、三洋電機に至るまで数え上げたらきりがない。
中央青山の監査先に問題が頻発するのは、監査法人として組織が大きくなる過程で、会計士同士の内部チェック機能がおざなりにされてきたことに尽きる。 監査法人は、法人に出資し経営にも加わる「代表社員」と「社員」(通常の企業でいう役員に近い)、その下の従業員として扱われる会計士、会計士補で構成される。大手の場合、従業員の会計士が実務を担当し、それを代表社員たちがチェックする形をとる。ちなみにカネボウを担当していた中央青山の会計士は合計20人だったが、うち3人が代表社員、1人が社員、残りがそれぞれの受け持ちの帳簿を調べる担当の会計士だった。
監査の方針、内容は代表社員が決める。他のチームの会計士が、カネボウチームの監査は怪しいと思っても口出しはできない。中央青山は複数の中小の監査法人を飲み込みながら巨大化したが、飲み込まれた監査法人は従来から担当してきた企業の監査をチームとして継続するケースがほとんどで、自分の顧客に口出しされたくないので他のチームにも口出しはしないという“社風”が醸成された。担当企業とチームが癒着していくのは当然の帰結だった。
中央青山の前身は1968年創設の中央会計事務所。1988年に新光監査法人と合併して中央新光監査法人となり、1993年に中央監査法人に名称変更。2000年に青山監査法人と合併して中央青山監査法人となった。
バブル崩壊後の不況下、前述のような監査先企業の不適切な会計が相次いで発覚したが、業界団体の「日本公認会計士協会」の会長は、2001年から2004年まで中央青山の奥山章雄前理事長が務めており、中央青山に対する厳しい処分や指導を協会に期待するには、無理があった。ようやく実効的な処分が下るのは、カネボウ事件を捜査した東京地検特捜部によって代表社員3人が逮捕され、それを受けて金融庁が業務停止を命じてからである。
中央青山はその後、旧中央母体の「みすず監査法人」と、不祥事への関わりが薄かった旧青山が母体の「あらた監査法人」に分裂。結局、旧中央のみすずは、新たに発覚した日興コーディアルの不正会計にとどめを刺される形で解体を余儀なくされることになった。
株式市場ではみすずが監査を担当する問題企業のリストが流され、該当企業の株が売られるなど、今も余震が続いている。たしかに、みすず(旧中央青山)と監査先の癒着は、表面化していないものを含めてまだ相当あるという見方がもっぱらだが、一方で、「みすずよりさらに杜撰な監査をしてきた問題監査法人も存在する。」(シンクタンク幹部)。
みすず解体は、不正な会計の発覚が企業のみならず、監査法人にも市場からの退場を命じる大問題であることを示した。3月決算を控えたいま、企業の決算担当者と監査法人の現場は、かつてない緊張感に包まれている。
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