アスキービジネス編集部
編集部がビジネスに役立つオススメの一冊を紹介する。今週はインターネットの登場により、業界全体のビジネス構造に変革が迫られている広告業界の未来を描いた一冊。
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著者:藤原 治 出版社:ダイヤモンド社 価格:1575円(税込) ISBN-13:978-4478550212 |
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「グーグルに勝てるか」。
真っ赤な想定の本書のオビに大きく書かれているのが、このフレーズである。著者は電通のシンクタンク・電通総研の社長を昨年末まで勤めた藤原治氏。広告会社の現状分析と今後いかにどうあるべきかといった内容が中心なのだが、本書で大きく取り上げられているのが、インターネットの登場によって大きく変わったマスメディアの状況である。
筆者はインターネットによって、メディア・企業・消費者が変化し、近い将来、広告会社の隆盛を成り立たせていた土台が崩れると予想している。
広告主の企業が消費者である大衆に向けて、テレビや新聞といったメディアを使い、情報を発信するものが従来型の広告であった。ここで広告代理店は、メディアの中の広告スペースを押さえ、広告主に販売することで手数料を得て商売していた。
やがて広告代理店はオリンピックやワールドカップのような大規模なイベントのプロデュースを手がけることで、自社が販売する広告スペースの価値を高めるようになる。そして、単なる広告スペースの販売だけでなく、企業の宣伝戦略の立案を行なうようになった。
そうした中、インターネットの登場で状況が一変する。
テレビや新聞の中の広告スペースは限られていて、広告会社はそれを確保することで商売を成り立たせていた。しかし、インターネット上のスペースは無限に増え続け、mixiやYou Tubeといった新たなサービスが登場してきた。これらの普及は、従来のメディアとまったく違うため、今後の展開が予測ができずにいる。
また、メディアと広告会社が手に入れることができなかった、双方向性と決済機能をインターネットは所有している。これによって、これまで企業が前提としていた、製品を大量に生産し、メディアを使って多数の広告を打ち、商品を販売するというスタイルが変わりつつあることを指摘する。
事実、顧客を直接自社のウェブサイトに呼び込み、細かな注文を受けパソコンを販売するデルが、市場で大きなシェアを獲得している(デル自身は集客のために新聞や雑誌を使った広告を利用してはいるが)。
さらには、消費者も、価値観の多様化により、大衆という枠組みでは捕らえきれなくなっている。世代や趣向、収入によって消費者が細かくセグメント化され、従来の広告宣伝活動では消費者全般を巻き込むブームが作り出しにくくなった。ブログやメールなどのコミュニケーション手段の多様化によって、特定の層には大きく支持されながら、他の層にはほとんど知られていないブームの偏在化がおき始めている。
インターネットによって変わり始めたメディア・企業・消費者に広告会社が対応できるか、それを端的に言い表したのが「グーグルに勝てるか」という言葉になるのだろう。
グーグルは検索サービスを提供することでユーザーを集め、入力された検索キーワードで消費者が望む情報を収集し、1人ひとりに最適化された形の広告を表示して収益を上げている。グーグル自らが広告スペースを作り上げ、そこに広告を集める存在になった。著者が述べている、ネットとメディアの融合が起これば、グーグルこそが広告・メディア業界における巨人として君臨するのである。
この本はWeb2.0という言葉に馴染みのある人にとっては、すで当たり前のことかもしれない。しかし、こういったインターネット上に次々と登場する言葉に違和感を感じながら接している人であれば、現在インターネットやメディアの世界で起きていることを、偏りなく手軽に抑えられる一冊である。