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勝ち組になるための経営革新 ビジネスプラン経営入門
第1回 なぜ今ビジネスプランが必要なのか?

文●株式会社ディセンター代表取締役 折原浩

http://www.decenter-jp.com/

勝ち組とそれ以外の2極化

 昨今、中小企業が2極化してきている。いわゆる「勝ち組」と「それ以外」だ。中小企業の経営は困難を極めていると言われる一方で、売上高と営業利益を伸ばし続けている中小企業も少なくない。また、「不況でビジネスチャンスがない」と言っている経営者が多い中で、「今こそビジネスチャンス。大いに挑戦するぞ」と考えている経営者もいる。

 では、それらを分けている要因は何なのか。キーワードは「経営革新に挑んだか、否か」「新しい事業に挑戦しているか、否か」である。改革にせよ、改善にせよ、経営に向き合い、常に前向きに挑戦している企業が「勝ち組」になっているのだ。では、勝ち組における共通点は何であろう。それは、多くの勝ち組がしっかりしたビジョンや目標と具体的な実行計画、すなわち「ビジネスプラン」を持っていることだ。

中小企業を取り巻く環境の変化

 なぜビジネスプランを持つことが勝ち組になる要因となるのか? 実は政府もビジネスプランを作成することを求めているのだ。

 最近、政府の中小企業支援に対する姿勢が大きく変化した。今までは、中央政府が地方自治体を支援し、それを受けて地方自治体が商店街などの中小企業の団体を支援するという、間接的な支援が中心だった。しかし、1999年の中小企業基本法改正によって、その構図に変化が起きた。簡単に言うと、国や中央省庁が直接、条件の合う中小企業だけを支援していこうという体制に変わったのだ。

 たとえば、1999年に施行された中小企業経営革新支援法(現在の中小企業新事業活動促進法)はその典型だ。この法律では、支援を行なう中小企業に対して、ビジネスプランの提出を求めている。国はその内容を審査し、革新的なプランを持つ前向きな企業を選んで、積極的に支援していく。これは逆に言えば、国が中小企業に対して、ビジネスプランを書くことを求めていると言ってもいいだろう。

 ビジネスプランを持つことが勝ち組になるという根拠は、この法律の存在だけでなく統計的にも立証されている。この法律では支援する中小企業に対して付加価値額を上げることを求めている。付加価値額とは、営業利益に人件費と減価償却費を加えたもので、支援先のあり方として単に利益を上げるだけの企業ではなく、人を多く雇用し、設備投資を行なう企業を求めている。そして、ビジネスプランを作り上げ、この法律の支援を受けた企業の49.2%が、この支援の成功の目安となる年3%以上の付加価値額の向上を成し遂げているのだ(中小企業庁広報冊子「いますぐやる経営革新」より)。それに対して、一般中小企業で年3%の付加価値額向上をした企業の割合は、18.9%とかなり低い。

 この法律のメリットは、国民生活金融公庫や中小企業金融公庫などによる特別低利融資やさまざまな税制優遇処置、それから信用保証協会の保証枠拡大などがある。しかし、筆者に言わせれば、最大のメリットは、この法律の承認がとれるレベルのビジネスプランを書き上げることにある。

 法律の申請の目的と手段を入れ替えてみよう。法律の申請の目的は、先ほど書いたような税制優遇処置などの政府の施策であり、その手段が申請書の作成であるが、申請書の作成自体を目的と考えてみたらどうだろう。申請書の作成自体はビジネスプランの作成、そして、政府窓口との申請相談は、新規ビジネスについて、無料で相談審査してくれていると考えられる。まさに中小企業にビジネスプラン経営を浸透させるためにできた制度と考えられる。

中小企業経営者は何をすべきか

 そもそも、中小企業の経営者は、非常にクリエイティブだ。自分の才覚と発想で、どんどん事業を作り上げたり改革している存在だと言える。では、多くの中小企業が苦戦している理由は何であろう。よく中小企業は経営資源が足りないと言われるが、それもあるだろう。しかし、経営資源はたくさんあれば、それに越したことはないが、いちいち満足するまで揃えていったらきりがないし、そもそも不可能だ。だいたい、世の中の大企業といわれるところでも、完璧に経営資源が整っている状態で経営しているところは少ない。このように考えると経営資源が足りないことは、ビジネス成功の上で決定的な要因ではない。では、決定的な要因は何か。それは、経営に「計画」つまりビジネスプランがないことなのである。

 多くの中小企業経営者ならば経験したことがあると思うが、こうやれば儲かるとか、自分の事業分野で確かな新規事業を思いついたりしたこともあるだろう。しかも、それは自分たちの持つ経営資源の範囲、あるいは、自分たちが調達できる範囲内で実行可能であることも多い。しかし、それらが、具体的に実現化し結果を出すことは少ない。

 「すごくいいことを思いついたのに普段の事業が忙しくってできない」というようなことを感じたことはないだろうか。そのようなとき、もし経営者の考えが、ビジネスプランとしてまとまっていたら結果が違ってくる。目的や到達点がしっかりとイメージでき、そこにたどり着くためのビジネスプランがあれば、たとえ経営者が非常に忙しく時間がなくとも、組織のベクトルを変えることによってスピードはともあれゴールに向かって動き出すのである。

 また、特に昨今のビジネスは小規模でも、社長一人、もしくは、一社だけはできない場合が多い。他の企業の協力を仰ぐ際に、話して説き伏せるだけでなく、ビジネスプランが神としてまとまっていれば、効果は大きい。金融機関からの資金調達の際も、新たなビジネスの立ち上げとなればハードルは高くなるが、口頭で説明するのと、きちんとしたプランがまとまっているのでは流れは違ってくる。

 ビジネスプランを作成し、政府へのさまざまな支援施策や補助金を受けられることが最も理想的だ。しかし、それらがビジネスプランを書くきっかけになり、そのビジネスプランに従って会社を動かすという手法を身につけられれば、たとえ施策メリットが得られなかったとしても有効な手段なのだ。

ビジネスプラン・パワーを持とう

 ビジネスプランを書き、それを修正しながら実行していく力をビジネスプラン・パワーと呼びたい。この力をつけるのは簡単だ。少しのコツと、ロジックを学んだら後はとにかく仮説・検証を繰り返すのみだ。最初は、薄っぺらな不完全なビジネスプランでも、修正、書き足しをしていくことで、ビジネスプラン・パワーが向上し、経営の大きな力になる。

 これからこの連載でお話しする手法は中小企業の経営革新における大いなる「仮説」だ。すでに今、多くの中小企業がこの手法を「検証」している。どうか皆さんもこれからお話しする手法を検証して頂きたい。必要なのは時間と筆記用具だけで、リスクがほぼゼロだからだ。

 次回以降、中小企業が経営革新や新規事業立案をしていくための「アイデア出し」のやり方から、それらのアイデアを実際にビジネスプランとして落とし込むための「まとめ方」を順を追って解説する。また、これらの作業を行なうためのビジネスプランシートを用意した。このシートをダウンロードして、解説に従ってシートにさまざまなアイデアや会社を取り巻く状況、経営者の想いを書き込んでいけば、1つのビジネスプランが完成する。

折原 浩氏
 
著者・折原 浩プロフィール
株式会社ディセンター代表取締役。中小企業を中心に、経営革新(第二創業)、経営戦略、収益力強化、新規事業・店舗開発、ビジネスプランの作成指導など、コンサルタントとして活躍中。埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、そのほかの地域を合わせて、およそ150件の中小企業新事業活動促進法(旧中小企業経営革新支援法)の承認申請サポートの実績がある。著書に『中小企業支援策のかしこい利用法―公的機関を使って行う経営革新』(プレジデント社)。

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