[文●ネットワークマガジン編集部]
ポスト専用線時代の代表的なWANサービスである広域EthernetとIP-VPNが大きな変貌を遂げている。安価なコストと太い帯域などの条件はすでにクリアし、信頼性や拡張性、通信品質、管理性などのレベルを圧倒的に高めたサービスに生まれ変わったのだ。
広域Ethernetは、LANスイッチをベースに構成されたWANサービスで、ユーザーの拠点間をレイヤ2のEthernetで接続する。Ethernetの高い伝送能力をそのままWANでも使え、帯域対コストのバランスがよい。拠点に安価なLANスイッチをそのまま利用できるメリットも大きかった。そのため、広域Ethernetは徐々にユーザーを増やしている。
しかし、広域Ethernetは信頼性や通信品質という面で、あまり高い評価は得られなかった。当初、広域Ethernetを構成する通信事業者側のバックボーンは、基本的には普通のLANと同じであった。しかしこれまでEthernetで提供してきたのは、きわめてシンプルな接続性と伝送能力だけだ。機器などに関しても従来の通信事業者クラスの信頼性や通信品質などを実現するものではなかった。そのため、正直いって当初の広域Ethernetサービスでは、通信の遮断もあったし、パケットの遅延も安定しなかった。
だが、広域Ethernetの信頼性や通信品質が低いというのは、すでに過去の話になっている。たとえば、NTTコミュニケーションズの「e-VLAN」では、2005年9月実績で1回線あたり1.68秒/年という99.99999%の稼働率を実現している。
![]() |
|---|
| 図1●進化する広域Ethernet(画像クリックで拡大) |
こうした高い信頼性を実現するためにNTTコミュニケーションズでは、同一拠点の異なる回線を異なるスイッチに収容する「エッジスイッチ分散」、回線を収容するビル自体を分ける「収容ビル分散」などを行なっている。これにより、エッジスイッチの故障や収容ビルの火災といった事態でも回線が断絶することはない。さらに、同社では網自体の二重化まで図っている。これは同社が会社更生法の適用を受けたCWCの資産を引き継いだことから実現したもので、いわば1つの通信事業者に2つの広域Ethernet網があるという究極の二重化である。
網自体もリング構成をとっているため、物理的に断絶してもサービス自体は止まらない。こうした網の稼働率からe-VLANでは「故障回復時間」、「回線稼働率」及び「網内遅延時間」という3項目の条件にSLAを適用している。遅延に関しても安定した環境を提供しているのだ。
また、従来の広域Ethernetでは、ユーザー自身が各拠点に機器を用意し、各拠点との接続を実現していた。もちろん、この自由度は広域Ethernetの大きなメリットといえるだろう。しかし、最近ではマネージド化も進んでおり、通信事業者が機器の設定やメンテナンスまで行なってくれるサービスもある。「KDDI Powered Ethernet extra」は、1月にKDDIと合併したパワードコムのサービス(旧称PeNEX)で、いわゆるマネージド広域Ethernetと呼べるサービスである(図2)。これはユーザー側のレンタルルータと網内のルーティングエンジンが連携して、経路制御を行なうというもの。つまり、ユーザーは面倒なルータの運用を通信事業者にそのまま任せられるというわけだ。しかもデータの伝送はレイヤ2レベルで直接やりとりされるので、高速な伝送が可能になっている。
![]() |
|---|
| 図2●ルーティングをアウトソーシングできる「KDDI Powered Ethernet eXtra」(画像クリックで拡大) |
今後はMPLS上で広域Ethernetサービスを実現するVPLSが一般的になってくる(VPLSの詳細は第2回 安全性と速度が魅力「フレッツVPNという選択肢」6月20日公開予定で解説)。
一方のIP-VPNは文字通りIPの伝送のみに絞ったWANサービスで、高い信頼性と通信品質、豊富な接続オプションが売りとなっている。これを実現したのが通信事業者での利用を想定したパケット伝送技術であるMPLS(MultiProtocol Label Switching)である。
MPLSでは網内でのルーティングや経路の制御、トラフィックの管理なども可能になっており、通信事業者がコントロールしやすい機能を実現している。また、障害時の経路の切り替えを50ms(ミリセカンド)というきわめて短い時間で実現するファストリルートや、ユーザー自身による詳細なQoSの制御が可能だ。
このIP-VPNも進化を続けている。もっとも典型的な例はマルチキャストへの対応である。1対1のユニキャストに対して、マルチキャストは1対多での送信を実現するもの。特定の端末をグループ化し、その端末に対してのみ同報配信を行なう伝送方式である(図3)。2005年の3月にNTTコミュニケーションズの「Artstar IP-VPN」で、いち早く商用化を開始している。
![]() |
|---|
| 図3●マルチキャスト対応のIP-VPNサービス(画像クリックで拡大) |
また、バックボーンのMPLSスイッチの処理能力が向上したことで、低速という弱点も解消されつつあり、最近では10Mbps/ 100MbpsのEthernet専用線などをアクセス回線として利用できるようになっている。ギガビットをサポートする広域Ethernetに比べればまだ劣るものの、「遅いIP-VPN」というのはすでに当てはまらない。
|
|
||||
|
|
|
|
|
|
|
|
||||