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VPNの基礎知識

第1回 公衆網と専用線

企業ネットワークを考える上で、WANをどのように構成するのかは避けて通れない問題となっている。現在、このWANを構築する技術として普及しているのがVPNである。本連載では広域EthernetやIP-VPN、そしてインターネットVPNなどさまざまなWAN/VPN技術を解説する。

コストと信頼性、セキュリティが
専用線の大きなメリット

 物理的に離れた拠点間、たとえば東京の本社と神奈川や千葉にある支店のそれぞれのネットワークを接続するといった用途のために、これまでさまざまなWAN(Wide Area Network)サービスが登場している。特に近年、各通信会社から提供されるサービスは多様化する一方である。では、こうしたWANサービスは何を基準に選べばよいのだろうか。帯域幅やコストが重要なのはもちろんだが、それ以上にそれぞれのWANサービスの特徴やメリットをしっかり理解する必要がある。この連載では、おのおののWANサービスの違いや選び方、そして現在のトレンドなどを俯瞰していきたい。

 さて、多くの企業は拠点同士を接続するためにWANサービスを利用しているわけだが、本当に「拠点間を接続して通信する」ことだけが目的ならば、実は利用する必要はない。なぜなら、大勢の人間、あるいは企業で共有して使う「公衆網」と呼ばれるネットワーク(網)を利用しても拠点間の接続は可能だからだ。

 身近な公衆網として挙げられるのは電話網(公衆電話網)だ。このネットワークには日本中の電話が接続されており、受話器を上げて番号をダイヤルすると、その番号を持つ電話機に接続され、相手も受話器を上げれば会話をすることができる。

 公衆網と反対の性格を持っているのが、契約者が占有して使う回線で拠点同士を結び、通信を実現する「専用線」と呼ばれる接続サービスだ。コンピュータやネットワーク同士の接続のほか、拠点間で内線通話を実現する際にも使われるなど、専用線は幅広い用途で利用されている。ただ、通話だけで考えると、わざわざ専用線を使わずに公衆電話網を利用すればよいのではないかと思うが、専用線にはコスト面でのメリットや通信の安定性、そしてセキュリティ面での不安が少ないといったメリットがあり、これらを重視する場面では非常に有用な選択肢となる。

 まずコストを考えてみよう。専用線の場合料金は固定制であり、確かに決して安価ではないが、どれだけ回線を利用してもコストは一定というメリットがある。公衆電話網は、何分あたり何円という形で通話料が発生する従量課金制であり、使えば使うほど加算される。そのため、内線通話のように頻繁に通話するようなケースでは、専用線を使った方が安くあがる可能性があるわけだ。

 さらに専用線には安定した通信が可能という利点もある。公衆電話網では、突発的に大量の通信が行なわれると、つながりにくい状況に陥ることがある。大きな地震が発生して安否確認の電話が殺到し、電話がかからないというような状況だ。このように公衆電話網には、他人の通信によって自分の通信が阻害されてしまうことが起こりうる。しかし専用線であれば、独占して使っている回線で通話できるため、他人の通信に影響されることはない。実際に、警察や消防での重要な通信では、安定して通話できることから専用線を用いた通話が行なわれている。

回線を占有することで
高いセキュリティも実現できる

 回線を独占して使うことで第三者の関与を排除できるため、セキュリティを確保したい場面でも専用線は有効である。誰が接続しているのか分からないネットワークでは、通信内容の漏えいや改ざんの危険性がつきまとう。しかし独占的に利用できる専用線ならば、盗聴などの危険性は低い。

 セキュリティを考える際、WANサービスとの比較になるのがインターネットである。世界中のネットワーク同士を接続して実現されているインターネットは、通信先までさまざまなネットワークを経由して接続される。そのため、経路の途中での盗聴や改ざんの危険性がつねにつきまとう難点がある。単純に離れたコンピュータ同士で通信したい場合、両者をインターネットに接続すれば簡単に実現できるが、セキュリティ面の不安から、企業が機密データを単純にインターネット経由で送受信することはまずない。

 このように専用線はさまざまなメリットがあるが、拠点間のLANを接続するといった用途では、主流はすでにほかのWANサービスに移行している。次回はその理由について考えていきたい。

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