ビジネスにおけるコミュニケーション手段として、電話は今も重要な位置を占め続けている。松下電器産業はこの電話におけるコミュニケーションを見直し、インフラの刷新に踏み切った。そこにはどんな狙いがあったのだろうか。
「ただいま取り次ぎますので、しばらくお待ちください」。電話を掛けたとき、こう言われて何分も待たされたという経験は誰しもあるだろう。しかし顧客満足度の向上という視点で考えたとき、できればこうした取り次ぎで待たせることなく、ダイレクトに通話できる環境を整えることが望ましいのは言うまでもない。また取り次ぎにかかる時間を最小限に抑えることができれば、オフィスの生産性を向上させることもできる。
こうした視点から、電話環境の全面刷新を検討しIPセントレックスの導入に踏み切ったのが松下電器産業である。「破壊と創造」をスローガンに掲げ、挑戦的な業務革新に取りくみ続けている松下電器産業は、顧客満足度の向上やワークスタイルの革新などを実現するべく、音声インフラ網の見直しを決断した。
また、同社のコーポレート情報システム社 IT基盤センター グループマネージャーである戝津良和氏によれば、次の狙いもあったという。
「PBXへの大規模な投資に迫られていましたが、PBXは償却期間が長いものです。そこで今後の技術革新にも対応できると考えたのが、IPセントレックスの導入でした」
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| 写真1●松下電器産業 コーポレート情報システム社 IT基盤センター グループマネージャー 戝津良和氏 |
IPセントレックスは従来PBXが持っていた機能を通信事業者がサービスとして提供する形態である。このため、PBXを資産として持つ必要がなく、将来の技術革新にも追従しやすい。
またIPセントレックスには、拠点間での内線通話を無料にできるという大きなメリットがある。特に中堅・中小企業では、よほど内線通話の頻度が高くない限り、専用線などを使わず公衆電話網で通話するのが一般的だ。ただ従量課金制の公衆電話網では、使えば使うほどコスト高となってしまう。しかしIPセントレックスなら、どれだけ使っても拠点間での内線通話は0円であり、これだけでも十分乗り換える価値はある。
今回松下電器産業では、将来的に8万台もの端末を収容する電話設備を、ワンストップでアウトソーシングすることを前提に、IPセントレックスの導入を検討していた。この中で、特に主眼が置かれたのが信頼性である。同社の情報企画グループ 政策・制度担当参事 阿曽伸一氏は「電話はインフラ中のインフラです。当社のすべての電話をおまかせするのですから、サービス選びは信頼性が最優先です」と語るように、電話が使えなくなると業務の遂行に大きなダメージを被ってしまう。つまり安心して任せられる通信事業者かどうかが大きなポイントとなったわけだ。
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| 写真2●松下電器産業 情報企画グループ 政策・制度担当参事 阿曽伸一氏 |
現在IPセントレックスは多くの通信事業者がサービス提供を行なっているが、その中で同社が選んだのは、NTTコミュニケーションズの企業向けIP電話サービス「.Phone IP Centrex」だった。戝津氏は選択の理由をこう説明する。
「世界規模のIPネットワークを保有し、IPセントレックスと回線、そして保守・運用までワンストップで提供できること、全国に拠点を展開してサポート体制を確立していること、さらに100年以上にわたって電話インフラに携わってきた実績とノウハウを評価して、NTTコミュニケーションズならば当社の電話インフラを任せられると判断しました」
IPセントレックスの利用によって、どの程度のコストメリットを見積もっているのかも気になるところだ。2007年3月末までに4万台の導入を計画している同社では、導入からの約2年間で40億円ものPBX更新投資の抑制を予定しているとのこと。阿曽氏によると「IPセントレックスのコスト効果は、PBXへの設備投資を抑制でき、設備を保有せずに済むことが大きい」という。
また、これまで事業所によってPBXの機種に違いがあった。このため管理を統一することが難しく、運用コストの増大の一因となってしまっていた。しかし.Phone IP Centrexを全国の事業所で利用し、全体最適を図ることによってこの問題の解決が可能となる。こうしたコスト削減効果も見逃せないところだ。
もう1つ、今回の導入事例において注目したいポイントがPHSを活用したモバイルセントレックスの実現である。松下電器産業の総務グループ オフィス改革チーム チームリーダーの中山明氏は「IPセントレックスにモバイル端末を組み合わせれば、デスクにいなくても本人に直接電話ができること、それに伴い取り次ぎも不要になること、人事異動時の配線工事などが削減できること、さらにほかの拠点でも外線・内線電話を発着信できることなど、多くのメリットがあります」と説明する。
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| 写真3●松下電器産業 総務グループ オフィス改革チーム チームリーダー 中山明氏 |
ただ、IPセントレックスとPHSを組み合わせた導入も、前例のない新たな挑戦だった。そこでPHSを開発・運用してきた同社のノウハウと、NTTコミュニケーションズの技術力を組み合わせ、共同でシステムをPHSに対応させたのだ。
これによって実現されたのが顧客満足度の向上、そして業務革新である。
PHS端末には、050から始まるそれぞれ個別のIP電話番号が割り振られている。これによって社員個人へのダイレクト着信を実現し、席を外していても直接電話を受けられるようになった。またローミング機能が実現されていることも大きい。別の事業所へ出張していても、PHS端末を持っていれば、それを使ってそのまま内線・外線ともに発着信が可能になるからだ。
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| 図1●.Phone IP Centrexを利用した内線網(画像クリックで拡大) |
ただ、PHSには電波が届かず着信できない可能性もある。しかし圏外アナウンスをお客さまに聞かせるのは失礼にあたる。そこでPHSとは別に部署代表電話として固定IP電話も導入、着信を受けたPHSが圏外であれば自動的に所属部署の代表番号に転送される仕組みを整えている。このようにさまざまな工夫を凝らして、顧客満足度の向上と業務革新をそれぞれ妥協することなく実現しているのだ。
また、今回の電話インフラの刷新によって新たに導入され、活用されているのがPHSとスピーカフォンを利用した電話会議だ。
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| 写真4●スピーカフォンを利用することで、気軽に電話会議が可能になった |
「.Phone IP Centrexを導入したことで、ワークスタイルにもさまざまな変化が現われています。たとえば、PHSとスピーカーフォンによって、場所を問わずに気軽に電話会議が行なえるようになりました。その結果、コミュニケーションが活性化して、業務効率が向上しています。同時に、出張に伴うコストも削減できています。また、今後の在宅勤務などにおいてソフトフォンを活用することも検討しています(戝津氏)」
記事協力: NTTコミュニケーションズ
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