今回、プロセスの可視化や業務フローの作成に関して注目したのが、マイクロソフトがプロティビティジャパンと共同開発した「Visio内部統制テンプレート」だ。マイクロソフトは、2006年3月17日から内部統制構築に対応した業務プロセスの文書化を支援する同テンプレートを無償で配布している。
Visioが最も得意とするのはプロセスを絵で描くことだ。ネットワーク図や業務プロセスなど、ステンシルごとにカスタムプロパティでデータを持たせて管理することができる。内部統制で「見える化」をしなければならないとき、プロセスの管理にVisioが使えるのである。
マイクロソフトが無償配布している「Visio内部統制テンプレート」は、配布直後からたいへんな注目を集め、公開から1カ月で約4000ダウンロードに達した。Visioを利用したテンプレートを配布した経緯はこうだ。マイクロソフト自身が自社の製品をうまく活用してもらうために何をすべきかを考えていた。そこで内部統制の専門家であるプロティビティにアプローチし、両社の狙いが合致した。
業務プロセスの見える化を進めていく上で、Visioが使えることに着目したのはマイクロソフトとプロティビティの両社だった。Visioを利用したテンプレート化は、マイクロソフトがプロティビティに持ちかけた。プロセスを絵にして、その絵の裏側にデータを持たせる。それをVisioで実現できると考えてはいたが、実際にプロティビティが持つリスク情報や検査項目情報を、どのようにすればVisioを使って効率的に可視化できるかが未知数だった。
そこでマイクロソフトは、ツールの作成に取り組むことになった。開発にはVisio対応アプリケーションの開発パートナーであるマイスター社が協力した。幸い、プロティビティが蓄積しているノウハウはExcelで管理されていた。そこでExcelの情報をVisioに取り込んで図示するステンシル・モジュールを作成したのである。
ある大手企業は、最近になって内部統制の構築を目的として、数百本単位でVisioを導入したという。このVisioを利用したテンプレートが優れているのは、業務に必要なスキームをきちんと取り込んで表示できることを示した点だ。Excelとデータ連携して可視化するツールは存在するが、実際にデータを取り込んでみると生成された図がガチャガチャして見にくいことがある。今回のVisioを利用したテンプレートは、Visioが本来備えている業務フローのテンプレート上に、カスタマイズして載せている。Visio本来の業務フローを描くプロセスをうまく活用しているのである。
今回、開発された内部統制テンプレートは日本のオリジナルだ。米国ではSOX法に対応したExcelとVisioにアドオンできるサンプル・テンプレート「Microsoft Office Solution Accelerator for SOX」が公開されている。こちらのテンプレートは開発パートナーの獲得を狙ったものだった。
細井氏は「マイクロソフトが無償で提供するテンプレートは、あくまでもサンプルに過ぎません。ユーザー企業のお客様には、Visioでプロセスの可視化や業務フロー図の生成を効率化できることを理解していただきたいのです。パートナーから要望があればサンプルのソースコードの提供は考えており、パートナーの皆さんにはVisioを活用した開発ソリューションの参考にして欲しいと思っています」と述べる。
今後のマイクロソフトの方向性としては、どのようにすればプロセスを効率よくコントロールできるか、プロセスコントロールを同社の製品群に落とし込み、パートナーと協力して提示していきたいという。
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| Visioによる業務プロセスの可視化(画像クリックで拡大) |
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| Visioによる業務フローの作成(画像クリックで拡大) |
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| Excelファイル形式で出力したコントロールマトリクス 提供:マイクロソフト(画像クリックで拡大) |
Visioを単なるお絵描きツールだと思っている人が少なくない。しかし実際には、絵の裏側にプロセス情報などを持たせることが可能で、この仕組みを利用すればVisioで作成した絵を別のシステムで活用できる。実際、Visioとビジネスプロセスのコントロールなどに利用できる「BizTalk Server」を連携させることも可能だ。この際、あらかじめVisioでプロセスを作成しておいて、それをBizTalk Serverの業務プロセスフローに落とせる。
最初からBizTalkで作ればよいように思えるが、そうしないのはプロセスを描く人と、機能を実装する人とは、それぞれ役割が異なるからだ。BizTalkで何かを作るのはITプロフェッショルだ。一方、業務フローを考えるのは、実際にその業務に携わっている人であり、ITプロでない人が使う道具が必要だ。ExcelとVisioであればITプロでなくてもある程度使いこなせる。たとえばExcelで記述したものを、ビジネスフロー的に見せたいときにはVisioを使えば簡単に図示できる。業務側の人がVisioで視覚的にプロセスを描いておけば、後は社内のITプロやソリューションベンダーがプロセスコントールへ実装する。これがVisioを活用するメリットなのだ。
Visioを使って現在のリスクが明らかになると、あるべき姿へプロセスを変更する必要がある。そこでは、再びVisioを使ってプロセスフローを描く必要がある。プロセスは一度描けば終わりというものではなく、変化していくものである。そうした変化に対応するためにもツールを使うメリットがある。たとえば、法規制が変わったために新しいプロセスを作る必要が出た場合や、会社のシステムとして変更を加えなければならない場合などに、プロセスを最初から描いているのでは非効率的だ。PowerPointで描いた絵には何の情報も含まれていないため、最初から描くのと変わらないが、Visioの場合はステンシルの裏側にロジックを持っており、他のシステムと連携できる。変化に対して効率的に対応が可能なのだ。
細井氏は「最新バージョンのBizTalk 2006を併用すると、Visioで保存した状態をそのままダイレクトに取り込むことができ、簡単にプロセスコントロールに落とせるようになります」と述べる。もちろん、プロセスコントロールにBizTalkが必須というわけではない。Visioで描いたフローは、XMLやCSVといった標準の形式で落とせるため、他にプロセスコントロールツールを持っている場合でも、そのツールが標準をサポートしていれば活用できる。逆に、すでにBizTalkを利用しているユーザーは、BizTalkからプロセスを吐き出して、Visioで参照することもできる。Excel、Visio、BizTalkが双方向で連携するため、管理しやすいはずだ。
「新会社法、日本版SOX法など、法令順守を強化していくにつれて、次第に生産性が低下してしまう恐れがあります。私どもマイクロソフトでは、お客様はいままでのプロセスを変えることなく自動的に法令順守できている、そんな製品を提供していきたいと考えています(細井氏)」
無償提供されるVisioを利用したテンプレートは、プロティビティの持つ内部統制ノウハウのごく一部に過ぎない。もちろん、同社の持つすべてのノウハウを入手したければ、プロティビティから購入する必要がある。また、内部統制を構築するにはマイクロソフトのパートナーの力が必要になるだろう。
内部統制の構築は、大企業だけが要請されているわけではない。個人情報保護法のときと同様、大企業と取引関係のある企業にも影響してくるはずだ。2008年になって慌てないためにも、Visioを使ってプロセスを可視化し、全体の業務フローを見つめ直してみてはいかがだろうか。そこにさまざまなリスクが見えてくるだろう。