取締役になると、大きな義務と責任がのしかかってくる。
取締役は経営者なのだから、当然経営判断をしなければならない。主力商品開発のゴーサインから、会社の移転や人事、懲罰など、経営にかかわるあらゆる判断を求められるのだ。
もちろん、判断した内容については責任を持たなければならない。
普通の社員も、当然責任感を持って仕事をしているわけだが、取締役は、最終的に責任を取る必要があるため、心構えからして変わってくる。たとえば、社運をかけるようなプロジェクトの責任は誰が取るのだろう? 当然だが、現場で働いている人の努力や能力によって、正否が変わってくる。だが、最終責任は、そのプロジェクトを承認した取締役が取らなければいけないのだ。
だから、慎重なのだ。
いろいろな企画を出して、取締役のところではねられるケースが多いとしたら、こういう理由も大きい。取締役は、最終責任を負うために、簡単にOKを出さないのだ。当然だが、誰よりも失敗を恐れている。ビジネスは、スタートするまで結果が分からない。だが、「絶対にいける」という裏付けがなければゴーサインは出ない。取締役を説得したいなら、具体的なデータや数値を元にした資料が必要になるのは、こんな理由からだ。
では、取締役が失敗したときには、どのようなことが起こるだろう? 普通の社員が仕事に失敗しても、出世に関わったり、立場が悪くなる程度だ。当然だが、クビにはならない。ところが、取締役は、株主総会で解任されてしまうのだ。クビである。
さらに責任は、それだけにはとどまらない。法令や定款に反して会社に損害を与えると、商法267条で認められている、株主代表訴訟で訴えられてしまうのだ。最近、新聞紙上でよく見かけるトピックだろう。さらに経営責任に対する時効は10年間と定められており、取締役を辞めたとしても時効になるまでは責任がつきまとう。
ここまで読んで、あまりにも責任が重いために、「取締役になどなりたくない」と、思ったかもしれない。もちろん、多くの報酬、会社を動かす醍醐味という魅力と引き替えに、取締役になるわけだが、それにしても責任は大きいと言わざるをえない。尻込みしても仕方がない。
しかし、安心していただきたい。実は「経営判断の原則」によって、責任の範疇は定められているのだ。これは「取締役が、経営の専門家として誠実に判断した場合には、結果が失敗であっても責任は問われない」
というものだ。たとえば新規事業にしても、戦略を正しく判断し、市場分析など、必要な情報を得た上でGOサインを出したなら、取締役の責任は問われない。
もちろん、法律上の問題があったり、他社の特許や著作権を侵害していたら、これはもう完全に責任を問われる。「ついうっかり……」「知らなかった」では、済まされないのが取締役の責任なのだ。
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