これまでにも、経営者と労働者の違いは何度か言及したが、今回は、労働時間について書いていくことにしよう。
役員以外の社員は、会社と雇用関係にあり、雇われて給料をもらっている。その対価の基準のひとつが時間である。労働時間は基本的に決まっていて、法律で守られている。長く働けば残業手当が付く。
普段当然のように感じているが、では商店街を見てみるとどうだろう?
朝10時頃から店が始まり、20時頃まで開いているのは当たり前だ。これで10時間労働となる。さらに、開店、閉店の準備に加え、その日の売上げ集計などもすると仕事が終わるのは、22時頃になるのではないだろうか。そう考えると、12時間以上働いている人も多いはずだ。
このように、お店の人たちが長時間働いても問題にならないのは経営者だからだ。たとえば八百屋のオジサン、魚屋のオバサンも自分の店を切り盛りする経営者である。雇用関係がないから、何時間働こうと関係ないのだ。
先日、美容院のスタッフが興味深い話をしていた。
「オーナーは早朝から深夜までお店にいて、大変です。私も頑張らないと……」
頑張るのは大賛成だが、オーナーが長時間仕事をするのは、オーナーの自由であり、経営者の勝手なのだ。だからそれを褒めることも、たたえる必要もない。経営者だから、必要ならいくらでも働くだけのこと。
さて、自営業なら分かりやすいのだが、これがある程度の規模の会社になるとどうだろう?
必死に働き、よい成績を上げた社員は、ある日役員に抜擢される。
ところが、その日を境に労働基準法で守られた「労働者」ではなくなるのだ。
労働者とは「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」となっている。
原則的には、役員になったときから、給与は役員報酬となり、労働時間だとか残業だとか、そういった概念は消えてしまう。
だから、役員は遅刻をしても問題ないし、何時間働こうと関係がない。これを勘違いしないようにしなければいけない。
「社長はいつも10時を過ぎないとこない……」
こんな不満をよく聞くが、そもそも就業規則が適用されるわけではないので問題はない。もちろん、それで業務に差し支えるならいくらでもクレームを付けるべきである。
ところが、作業自体は社員と同じなのに、役員の肩書きが付いただけで長時間働かされると、判断が微妙になるケースがある。
特に兼務役員の場合には、労働者と見なされる場合もある。たとえば、取締役工場長という肩書きに昇進したとする。しかし、業務の執行権が特になく、単なる「工場長」の時と業務内容が変わらない場合。もしくは、指揮命令系統が相変わらず他の役員から指示を受けているのであれば、これは雇用されているのと何も変わらないため、被雇用者と判断されるケースも多い。
最近、フランチャイズオーナーの過剰労働が問題になっている。
フランチャイズオーナーは経営者である。本部とは雇用関係にあるのではなく、何らかの形で業務上の契約を結んでいるに過ぎない。
だから、たとえばコンビニのオーナーが12時間働こうが、15時間働こうが、誰にも文句を言う筋合いはないのだ。バイトが休めば、24時間店頭に立つこともあるだろう。
ところが、あまりにも長時間の労働で、最近は後継者が育たずに困っているという報道を目にした。フランチャイズの契約を結ぶと、自分の店だけ休んだり営業時間を好き勝手に変えることは難しい。しわ寄せが行くのは経営者なのだ。
もちろん、自分の会社・お店なのだから、努力に対して文句を言うのはお門違いである。だが、あまりにも本部にとって都合のよい仕組みであることに、多くの人が気づき始めたというわけだ。フランチャイズの場合、役員や経営者といえども、裁量権が限られる。だから、経営の醍醐味が少なく、長時間働く意義が見いだせない。
会社経営もしかり。いわゆる雇われ社長で経営の意義が見いだせないと、意義を感じて長時間の労働ができないものだ。
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