いまや、会社のためにひたすら尽くすような従業員は少なくなってきた。自分たちが必死に働いても、そのすべてが還元されないのは、何となく分かっているだろう。
そもそも、会社が大きくなると、誰がキーとなって利益が出たのかが分かりづらくなる。1人の社員が画期的な発明をして、それが会社の利益に直結するというような構図であれば分かりやすいが、それでも営業やバックオフィスがなければ、会社は成り立たない。たとえば、大発明で利益が100億円に達したとしても、それは会社という仕組みがあり、販売や流通、研究開発などに投資がなされていればこそと言える。
では会社が儲かったら誰が得をするのだろう? 正解はみんなだ。ここでいうみんなとは、全従業員と株主である。直接的に利益が配分されるのは株主で、これがいわゆる配当になる。もちろん従業員には、ボーナスや給料が上がって得になる。社長を含む役員は、さらに分かりやすく、年功序列的な賃金体系ではないので、一気に報酬が上がることも十分に考えられる。
よく「社長や上の方ばかり儲けて、自分たちは働き損だ」とぼやく人がいる。だが、それは仕方がないのだ。
そもそも、経営者というのは、利益を上げるために会社を経営しているわけで、それがうまくいったなら、たくさんの報酬を得て当然だと言える。特に自分自身で会社を興した起業家ほど、この傾向が強い。
だが、どれほど業績の良い会社の社長でも、年俸は数億~十数億が限度であろう。よく、ベンチャー企業などで「社長の資産1000億円」などと言われることがあるが、これは報酬でもたらされたものではない。そのほとんどが、持ち株を資産と見なしたものだ。
自分で興した会社の株を大量に保有していて、上場すれば資産は一気に増える可能性がある。もちろん、このときに従業員もストックオプションなどとして株を持っていれば、同様に大きなメリットを得る。
「確かに、上場すれば資産は増えるけれど、実際に社長が大量の株を売れるようになるまでは、どれほどの年月がかかることか……」
上々間近の社長はこのように漏らした。よほど会社の規模が大きくなるか、業績が好調でない限り、持ち株を大量に売るのは難しくなる。社長が株を売ってしまったら、会社の状況が良くないと思う人も出てくるだろうからだ。
逆に会社としての規模が小さいベンチャー企業などでは、売り上げに対する社長の役割が絶大なケースもあり、その報酬を自分で決められることも多い。「粗利が5億円出たから、3億円給料を増やす」というワンマンも通用する。逆に、業績が悪ければ、給料を削らざるを得ない。だから、ごく小さな会社では、社長が給料を取りすぎて、利益がほとんどなかったり、赤字になるケースさえある。
会社が何らかの投資をしたり、新規事業を手がけて成功したとしよう。現場は苦労を重ね、成功をつかんだとする。汗をかいたのは自分たちだと思うだろう。もちろん、それも事実であり、評価されるべきことだ。しかし、直接その仕事に関わっていないスタッフも、何らかの形で支援していることが多いのだ。また、その事業を決断した社長や役員達には、もっとも多く評価されて当然なのだ。
たとえば、特別な研究者が素晴らしい発明をしたとしても、その機会を与えた経営者も評価されてしかるべきである。
働く側は、自分だけの主張をしようとせず、マクロな視点で会社のあり方や、利益配分を考えなければならない。たくさん儲けたにもかかわらず、せっかくの利益が不調な部署の穴埋めにされるかもしれないが、それが経営者の判断なら喜んで受け入れるべきなのだ。
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