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コラム

会社を動かす社長の仕事は?
知っておきたい経営者の視点

2005年10月7日  文●戸田 覚

第10回
稟議書と会社のピラミッドの関係



どうして稟議が下りないか

 上長に稟議書を提出しても、なかなか「イエス」の返事がもらえなかったり、何らかの企画を提出しても上司に否定された経験はないだろうか。提出する方は、よかれと思って出した企画や稟議が、あっさり否定されると悲しいものだ。

「きちんと上層部は判断しているのだろうか?」

「課長が握りつぶしているのではないか」

 こんな気持ちになるのも無理はない。だが、特別に意地悪な上司でなくても、企画や稟議は通らない方が多いと思った方がいい。逆に言うなら、たくさん提出される企画や稟議の中から、厳選されたものが採用されてこそ、会社は伸びていくのだ。企画や稟議が提出される本数自体が少ないようでは、会社の行く先は暗い。

 会社では、誰がどのように判断するか、もう一度確認しておこう。

 トップダウンという言葉をよく聞くだろう。社長が判断して物事を進めるわけだ。たとえば、会社自社ビルの建築や全社的なシステムの導入など、大がかりな決裁を上から下ろすケースはよくある。だがこれとて、ほとんどのケースでトップがやろうと言い出しただけで、本当の決断はあらゆる部署のあらゆるスタッフが効果やらコストを積算して最終判断が下されている。最終的な判断は社長がするとしても、そのための情報は会社中のしかるべき部署からかき集めているのだ。

トップダウンとの違いは声が届くか否か

 現在の大企業では、トップダウンの案件でもGOサインが出ないケースはままある。確実に検討の土台には上るのだが、結局はかき集めた情報を元に、役員や担当者の合議を経て最終決定される。これをせずに、本当のトップダウンで多くの事項が決まっていく古い体質の会社は、衰退していくだろう。

 逆に言うなら、一般社員が提出した稟議や企画でも、内容が妥当ならば正しく検討されているものだ。通過しないほとんどのケースが握りつぶされているのではなく、内容が通過に値しないのである。

 もちろん、稟議や企画の規模によって、判断している階層は異なる。課長が決めることもあれば、役員まで届くこともあるだろう。役職や立場によって決定権が異なるからだ。課長の決定権を超えた案件が部長まで届かないのなら、それは「部長に提出するほどの内容ではない」と課長が判断しているからだ。

 ここで、部長に上げてくれない課長を批判するのは間違っている。社長は役員に仕事をゆだね、役員は部長に、部長は課長に、それぞれ仕事を任せている。課長が否定したと言うことは、最終的には経営者の意志と同じでなければならないのだ。会社は、組織があってこそ成り立っている。判断に判断を重ねて、決定がなされるのだ。

 よく「社長直行便」などと銘打って、全社員が社長に手紙や企画を出せるような仕組みを作っている会社を見かけるが、実はナンセンスだ。社長への直談判が横行するようでは、組織として正しいピラミッドができていない証拠である。経営者がするべき意志決定は、経営に大きく関わるものに限る。規模が大きくなるほど、判断するべき稟議や企画が増え、経営者は下へ下へと権限を委譲することで、会社が回っていくのだ。

 いつも稟議や企画が通らないと悩んでいるなら、後ろ向きにならず、上長を頷かせる内容を提出することから考えようではないか。

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