
平林先生の助けを借りて、何とか損益計算書を作り上げた僕。ようやくここまでくることができた。しかし、来年度に向けて新たなスタートを切る前に、最後にもう1つやることがあるようだ。
損益計算書ができあがり、僕はすべてを終えた充実感でいっぱいだった。そして心はすでに、来年度へと向かって動き出していた。
しかし、あらためて試算表を見ると、あることに気がついた。その疑問について、早速目の前にいる平林先生に聞いてみることにした。
そういえば、取引が完結したものは損益計算書としてまとめましたよね。取引が完結していない残りの項目はどうするのですか?
取引が完結していない、つまり継続しているものについては、「貸借対照表」として来年度に引き継ぐんですよ。
引き継ぐ?
分かりにくいので、最初から説明しましょう。まず現金や商品、工具器具備品など、利益を得るために今後も継続して使えるようなものを「資産」といいます。現金を受け取る権利である売掛金も同様です。なお、貸倒引当金は売掛金とセットで考えます。
さらに、借入金などお金を支払う義務を「負債*1」、株主からの出資などを「純資産*2」というのだそうだ。それらをすべてまとめた一覧表が、貸借対照表というわけだ。
![]() |
|---|
*1●負債
会社が負っている支払義務のこと。たとえば銀行などからお金を借りた場合、いずれ返済しなければならないので、未返済残高が「借入金」という負債になる。また、商品を仕入れて代金をあとから支払う場合も、「買掛金」という負債になる。返済期限にその分だけ資産(現金預金)が減ることになるので、「マイナスの資産」などと説明されることもある。
*2●純資産
資産から負債を差引いた差額。純資産には、株主からの出資や、会社内に蓄えられた利益のほか、資産の含み損益なども含まれる。
これを見ると、貸借対照表も損益計算書と同じように借方と貸方の合計が違うんですね?
そうです。利益の分だけ資産が増加していますから、この差額は利益を意味しています。
![]() |
|---|
まずは、300万円の出資でスタートしましたよね? そして、備品を揃えて、野菜を仕入れて販売して。つまり、最初300万円あったお金をいろいろ使った結果、1年後はこの貸借対照表の状態になったということを意味しているんです(図1)。
![]() |
|---|
| 図1●貸借対照表の変化(画像クリックで拡大) |
ネットDeベジタブルは、1年間の取引を通じて、361万円の利益を得た。その分、資産が増えている。利益の計算を損益計算書で、資産が増加した結果を貸借対照表でまとめているということなのだ。
現在資産は総額で、855万になっていますよね? そのうち、194万円はいつか返さなくてはなりませんから、661万円が正味の資産。つまり、当初の300万円から361万円の儲け分だけ増加しているということですよ。なお、この正味の資産のことを「純資産」といいます。
![]() |
|---|
そして、損益計算書同様、形式を整えて完成です。
![]() |
|---|
ところで、この貸借対照表を来年度に引き継ぐというのは、どういう意味ですか?
この貸借対照表は、取引が完結していない項目の一覧表でしたよね? つまり、売掛金については、今後、現金預金を受取らなくてはなりませんし、借入金は返済しなくてはなりません。そこで来年度は、この貸借対照表からスタートするんです。
貸借対照表からスタート?
そうです。来年度の試算表は、この貸借対照表からスタートするんです。当初、300万円の試算表に取引を仕訳して足していったように、来年度は、この貸借対照表に新たに仕訳を足して試算表を作るんですよ!
![]() |
|---|
貸借対照表は、今の時点では、結果の一覧表。でもこれは、新たなスタートに向けての一覧表でもあるということなんだ。
このように、データはすべて、仕訳によって試算表に集計されて、年度をまたぐときには貸借対照表によって受け継がれていくことになるんです!
会計データと共に、ネットDeベジタブルの歴史も刻まれ続けていくということか……。来年は、利益も資産も、もっと大きくしたい。僕の夢は、ネットDeベジタブルと二人三脚で、大きく大きく膨らんでいくのであった。
貸借対照表と損益計算書については本文で取り上げましたが、主要な財務諸表にはもう1つ、「キャッシュフロー計算書」があります。これは、いわゆる上場企業でなければ作成する必要はありませんが、会社を知るうえでは非常に重要な情報となります。
本文中の貸借対照表の変化を見ると分かるように、ネットDeベジタブルの1年間での利益は361万円でした。しかし、その分だけ純粋に「現金預金」が増加するかといえば、そうではありません。「売掛金」や「借入金」など、利益と現金預金を乖離させる原因が存在しているからです。特に、「売掛金」の存在は、利益が出ているにも関わらず実際にはお金を持っていないという状況を引き起こすため要注意です。
そこで、実際の「現金預金」(厳密には「現金預金=キャッシュ」ではありませんが)の増減をキャッシュフロー計算書として一覧表にすることで、貸借対照表と損益計算書の情報を補完しているのです。
文●平林亮子
お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所し、国内企業の監査に多数携わる。公認会計士3次試験合格後、独立。楽しく幸せに生きるをモットーに、企業、個人を問わず会計面からのサポートを行なっている。
|
|
||||
|
|
|
|
|
|
|
|
||||