
平林先生に手伝ってもらいながら、はじめての決算を迎えた僕。前回無事に完成した試算表を使えば、ネットDeベジタブルの利益が分かる。不安と期待を胸に、さらに決算表の作成作業を進めていった。
売上(収益)は試算表の貸方に、経費(費用)は借方に記載されているので、それぞれ抜き出せば差額が利益になるはずだ。しかし、以前よりも項目が増え、収益や費用なのかを判別できないものがあり、僕はしばらく試算表とにらめっこをしていた。そんな僕の心を見透かすように、平林先生が笑顔でこう聞いてきた。
さて、利益がいくらになったか分かりましたか?
だいたいは分かったのですが、以前よりも項目が増えていて……。売上は収益。仕入と給料手当と荷造運賃は費用。減価償却費と貸倒引当金繰入額も費用ですね。支払利息も費用なのかな?
そのとおりです!
資本金や借入金、貸倒引当金はどうなるのでしょうか。
まずは感覚的に判断するといいでしょう。売上や給料手当は、収益や費用になると感覚的に分かりますよね。感覚的に分からないものは、取引が完結しているかどうかということで判断するんです。
取引が「完結」している?
はい。たとえば売上や仕入は、先方に出荷して作業が終了し、取引が完結しています。給料手当や荷造運賃も、作業がすべて終了して完結。完結しているものが、収益や費用になります。それに対し、資本金は過去に出資したお金ですが、会社が解散するまで株主との関係は継続します。借入金も、完済するまで継続しますから完結していません。
売掛金は、今後お金を受け取るまで完結しない。商品も在庫だから、売り上げるまで完結しないということですか?
そのとおり! パソコンも捨てるときまで完結しません。レストランMuseへの出資である投資有価証券*1も、Museの株主であるということで継続。貸倒引当金は売掛金とセットですから、完結していません。結局、試算表のうち、収益と費用は次のようになるというわけです(図1)。
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| 図1●試算表と収益、費用、損益計算書 |
*1●投資有価証券
会社が所有する他社の株や社債を有価証券という。短期的に売買するような場合「有価証券」とし、長期的に保有する場合には「投資有価証券」として仕訳する。なお、子会社など、グループ会社の株は「関係会社株式」として仕訳する。
そして、試算表から収益と費用を抜き出した一覧表が損益計算書だという。
さらに収益と費用を種類別に分類して形式を調えます。収益は今は売上だけですが、たとえば、もしMuseからの配当金を受け取ったらそれは野菜の売上とは種類が違う収益となります。
野菜の売買と株への投資による儲けという違いでしょうか?
はい。費用についても、野菜の仕入代金と、野菜を発送する人件費は違うなど、種類別に分類するのです。その上で縦に並べると、報告用の損益計算書ができます(図2)。
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| 図2●一般的な損益計算書 |
損益計算書は売上高からスタートし、売れた分の商品の仕入代金である「売上原価」(図1の試算表の「仕入」)を差し引き、いわゆる粗利である「売上総利益」を計算する。そこから必要経費である「販売費および一般管理費」を差し引くと「営業利益」が計算できる。さらに、資金の運用などによる儲けである「営業外収益」を足して、借り入れのために必要な利息など「営業外費用」を差し引いて「経常利益」を計算。そこに特別な項目を加減すれば、損益計算書の完成だ。
ネットDeベジタブルの損益計算書も収益と費用を縦に並べて、このように一覧表にします。
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そうか、これが損益計算書というものなのか。僕はできあがった書類から、無事に黒字決算を迎えられたことを確認すると、来年度へ向けて新たな闘志がわいてくるのを感じていた。
業種や規模に関わらず、株式会社は年に1回、決算書を公表しなければならないことが会社法により規定されています。これを「決算公告」といいます。具体的には、官報、日刊新聞、Webサイトのいずれかに決算書を掲載することになります。また、会社の規模や掲載場所によって、どのくらい詳細な情報を公表しなければならないかが異なっています。
株主が身内だけの、いわゆる同族会社であっても、決算公告で必要な情報を公表しなければならない義務を負いますので注意が必要です。なお、決算公告の掲載場所については、定款に定めておくことが一般的です。また、定款に定めがない場合は官報に掲載することになります。
文●平林亮子
お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所し、国内企業の監査に多数携わる。公認会計士3次試験合格後、独立。楽しく幸せに生きるをモットーに、企業、個人を問わず会計面からのサポートを行なっている。