
ネットDeベジタブルを開業してから、約10カ月が過ぎた。実家をはじめとする農家の方々がおいしい野菜を提供してくれるお陰で、評判はどんどん広がり次々と注文が入るようになった。しかし、逆にそれば僕の頭を悩ませていた……。
意を決して始めたネットDeベジタブルのビジネスだったが、これまでは注文も日々増え続け、自分でも怖いほど順調にことが進んでいる。これだけの注文を受けられるようであれば、ビジネスをもっと大きくできる。でも、注文を受ければ仕入代金も人件費ももっと必要になる。その上、自宅兼事務所では手狭になってきたし……。
要するに、ビジネスを拡大するためにはお金が必要だということだ。しかし、今の僕は自分の給料さえもらっていない身。そんなお金はどこにもなかった。そこでいつものように、平林先生にアドバイスをもらうために電話をかけることにした。
ビジネスは順調なんですけど、せっかくの注文を受けきれないでいます。お金さえあれば、チャンスなのに……。
資金調達が必要だということですね?
資金調達?
はい。会社のビジネスのためにお金を集めてくることを、資金調達といいます。
それは、先月あったMuseからの依頼のように、株主を増やすという方法を使うということですか?
そういう方法もありますが、ほかのやり方として、お金を借りてくることもできます(図1)。個人的には増資はあまりお勧めしませんよ。
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| 図1●資金調達の主な方法と特徴(画像クリックで拡大) |
なぜですか?
株主は経営に関する根本的な権利を持つことになりますから、一歩間違えば、ネットDeベジタブルの経営について外部の株主からあれこれ言われる可能性もあるのです。上場会社*1でない場合、株はすべてオーナーが持つことをお勧めしますね。
*1●上場会社
証券市場で広く株を売買できるようにすることを「上場」といい、株を上場している会社を「上場会社」と呼ぶ。上場するためには、証券取引所が定めた一定の基準をクリアし、上場後もさまざまなルールを守る必要がある。
株は会社に対する権利。お金を出してもらうということは口も出される可能性があるということか……。
実際、少しずつ株主を増やしているうちに収拾つかなくなってしまった会社を見たことがあります。
そうなると、お金を借りてくるのがよさそうですね。でも、こんな小さな会社にお金を貸してくれる金融機関なんてあるのでしょうか。
一般の銀行ですと、まだまだ難しいかもしれません。でも、公的な機関であれば、可能性はあります。お金を借りてでもビジネスを拡大し、それで採算が取れるならチャレンジしてみてはいかがですか?
平林先生のアドバイスをもとに、公的な機関の融資について調べてみた。すると、国民生活金融公庫*2の融資を利用できそうなことが分かった。僕は早速、必要書類の準備に取りかかった。
*2●国民生活金融公庫
少額の融資を扱う政府系金融機関。中小企業への融資をはじめ、消費者に対しても生活に関する貸付を行なっている。公的融資であるため、比較的低金利で、創業したての中小企業などによく利用されている。
融資の申込書や企業概要書などの書類を先生と一緒に作成していくことは、これまでのビジネスやこれからの展開について考えるいい機会になった。
これを提出したら、あとは国民生活金融公庫との面談ですね。そして、お金を借りることができた場合には以下のように仕訳します。
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お金を借りてきて、お金が増えると同時に「借入金*3」と仕訳するのですね?
*3●借入金
一般的に「金銭消費貸借契約」によってお金を借りてきた場合、「借入金」として処理を行なう。金融機関からお金を借りた場合はもちろんのこと、会社が個人からお金を借りたような場合も同様となる。
借入金は、将来その額を返済するという義務を意味しています。
買掛金や未払金と似ていますね。
そのとおりです! そのため、返済したときにはこのように仕訳するんです。
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なお、このような融資を受けた場合、通常は利息の支払いも必要になります。利息分については、このように仕訳します。
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後日、僕は国民生活金融公庫へ面談に向かった。そこで聞かれた資金の使途、事業の内容、今後の計画などについての質問に、僕は自分の言葉で一生懸命答えていった。
数日後、ネットDeベジタブルへの融資は無事に認められた。その結果、試算表は、このようになった。
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返済できなかったらどうしようという不安がないといえば嘘になる。でも僕はそれ以上に、これからビジネスを拡大していくことへの決意を強く胸に抱いていた。
資金調達の主な手段として、①株式を発行して増資する、②社債を発行してお金を借りる、③銀行などからお金を借りる、という方法が挙げられます。①は返済義務がなく、②と③は返済義務を負います。そこで、①は「純資産」、②と③は「負債」と呼びます。
一方で、①と②は株や社債を手にする人から直接お金を調達しているのに対して、③は誰かのお金を銀行を通じて間接的に借りてきているのだと考え、①と②を「直接金融」、③を「間接金融」と分類することもあります。
このように社債は、①と③の両方の性質を持った調達方法であり、現在では、中小企業などでも資金調達の手段として利用されることが多くなっているようです。なお、社債を発行して資金を調達した場合の仕訳は、借方に「現金預金」、貸方に「社債」と記載することになります。
文●平林亮子
お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所し、国内企業の監査に多数携わる。公認会計士3次試験合格後、独立。楽しく幸せに生きるをモットーに、企業、個人を問わず会計面からのサポートを行なっている。