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第8回 得意先との友好関係を築く
~有価証券を購入する~


 レストランMuseとの取引をきっかけに、僕はほかの会社とも取引を広げてきた。その結果、売上の半分以上を個人ではなく、会社との取引によって稼ぎ出すことができるようになった。そんなある日、Museのオーナーから興味深い提案が……。

取引先への出資を検討

 野菜の出荷が一段落したある日、レストランMuseから興味深い提案をされた。なんと、増資*1をするので出資してくれないかという。つまり、株を買わないかというのだ。

*1●増資
会社を設立した後で、資本金を増やすことを「増資」と呼ぶ。新たに株を発行し、お金を集めて増資することもあれば、剰余金を資本金に振り替えて増資することもある。

 僕は、Museとの関係を友好的に維持していきたかったので、出資をすることは悪くないと思った。しかし、ネットDeベジタブルにお金をすべてつぎ込んでしまった僕に、そんな資金的な余裕はない。

 結局、自分1人では結論を出すことができず、平林先生に助けを求めることにした。

僕 実は、株を買わないかって誘われて。どうしたらいいでしょう。

平林先生 もしかして、株式投資でも始めるんですか?

僕 いえ、そうではなくて。実は、Museが増資をするそうなんですよ。そのうちの何株かを買わないかといわれて。

平林先生 Museは、上場会社ではないですよね?

僕 はい、上場会社ではありませんね。

平林先生 証券市場で広く株を売買できるようにすることを「上場」、株を上場している会社を「上場会社」といいます。ちなみに上場するためには、証券取引所が定めた一定の基準をクリアし、上場後もさまざまなルールを守る必要があるんですよ。一方、上場していなければ、市場で株を売買できません。そのため、株を一度購入したら、なかなか処分できないという可能性が高くなることは覚えておいてください。

僕 分かりました。せっかくですからMuseとはうまくやりたいのですが、自分のお金はネットDeベジタブルにすべてつぎ込んじゃいまして……。

平林先生 もし出資するとしたら、ネットDeベジタブルから出資をするとよさそうですね。

僕 会社からお金を出すこともできるのですね?

平林先生 はい。会社自体が株主になることができるんですよ(図1)。

図1●会社と株主
図1●会社と株主(画像クリックで拡大)

 そうか。それなら金額によっては出資も可能かもしれない。僕は、出資の条件などをもう一度確かめてから結論を出そうと思い、平林先生にもそう告げた。平林先生は、出資が無駄になってしまうリスクがあることだけは忘れないようにという言葉で締めくくり、電話を切った。

仕訳は「有価証券」に

 高島社長に確かめると、株は1株5万円で、出資は何株分でもかまわないと言われた。それなら、2株とか3株でよければ出資してもいいな……。僕は興味も手伝って、5株だけ出資することに決めた。そこで、平林先生に報告の電話を入れた。

僕 5株、25万円だけ出資することに決めました。

平林先生 そうですか。会社が有する他社の株を「有価証券」といいます。国債や他社の社債*2を持っている場合も、それらは有価証券です。
 有価証券のうち、短期間に売買するようなものは「有価証券」で、今回のように長期的に保有するようなものは「投資有価証券」として仕訳します。出資した金額分を投資有価証券として仕訳し、その分現金預金を支払うので減らします。

*2●社債
株式会社が資金調達のために発行する証券。「社債券」という証券を発行し、金融機関ではなく、一般の人々からお金を借りる。金融機関からお金を借りた場合、「借入金」という勘定科目を利用するのに対して、社債を発行した場合には「社債」という勘定科目を利用する。なお、社債を返済することを、社債を「償還(しょうかん)する」という。

得意先に出資

僕 分かりました。

平林先生 また、有価証券を持っていると、配当金を受取ったり、利息を受取ることもありますよね。その場合には、このように仕訳するんです。

配当をもらった・利息をもらった

僕 そうかぁ。株を持っていれば、配当が入るかも知れないですよね。

平林先生 たとえば私のクライアントに、出資した会社が上場して、すごい儲けた会社がありました。もちろん、そういった儲けばかりをアテにしてはいけませんけどね。

僕 出資した会社が上場? そんなこともあるんですね!

平林先生 株主になれば、相手の会社の決算書も見ることができますから、株主としてそれらをしっかりチェックしてくださいね!

 Museの株について仕訳をした結果、ネットDeベジタブルの試算表はこんな状態になった。

試算表

 僕は、ネットDeベジタブルの株主。そしてネットDeベジタブルは、レストランMuseの株主になっているということか。Museをはじめ、さまざまな得意先ともどもがんばると、いろんな意味でお互いの利益になるんだな……。そう思うと、体の中から力がわいてくるような気がした。

平林先生 もう1ランクアップ! 今月のキーワード

有価証券の分類と処理

 有価証券とは、会社が保有する他社の株式や国債、社債などをいいます。会社が有価証券を購入した場合、その保有目的に応じて、①売買目的有価証券、②満期保有目的の債券、③子会社・関連会社株式、④その他有価証券、に分類して処理することになります。

 また、それぞれについて勘定科目の名称が異なります。まず、①の売買目的有価証券と、②の満期保有目的の債券のうち1年以内に満期がくるものは「有価証券」として仕訳します。

 また、②の満期保有目的の債券のうち1年以内に満期がこないものと、④のその他有価証券は「投資有価証券」として仕訳します。

 さらに、③の子会社・関連会社株式は「関係会社株式」として仕訳します。  なお、①の売買目的有価証券と、④のその他有価証券のうち、時価の分かるものは時価で処理し、その他のものは原価、すなわち購入金額(または購入金額をもとに計算した金額)で処理するのが原則となります。

文●平林亮子
お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所し、国内企業の監査に多数携わる。公認会計士3次試験合格後、独立。楽しく幸せに生きるをモットーに、企業、個人を問わず会計面からのサポートを行なっている。

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