
月末。お客さんからの代金はきちんと振り込まれているだろうか。こんなに不安になるなら、前払いにしてもらうのだった……。そんな不安を抱えながら、はじめての売上を確認すべくATMの前に立った。
通帳を開くと、お客さんからの入金が! さっそく先生に連絡を入れた。
お客さんからちゃんと入金されていました。よかったです。
売上*1、おめでとうございます。私も正直ヒヤヒヤしてました。
*1●売上
商品を販売することを「売上」という。商品を売り上げるには、①注文を受け、②商品を出荷し、③先方に届き代金を受け取る、といった作業が必要になるが、会計上は②の時点で「売上」として記録することになる。
これで来月以降は安心して月末を迎えることができそうです。
それではさっそく、記録しましょう! 預金に振り込まれましたので、現金預金を借方に、その理由として売上を貸方に記録します。その結果、一覧表はこう変化します。
もしかして、貸方には売上が記載されて、借方に経費が記載されて……。
そうです。それらを整理すれば、利益も計算できるというわけです。その点については、年度末に確認しましょう。
会社からもらう給料と違って、お客さんから直接いただく代金は、なんて重くて、なんて嬉しいものなのだろう。僕は、何度も何度も通帳を見ては、1日中、感動に浸っていた。
最初の売上に感動してから数日たったある日、お客さんから1通のメールが届いた。
お野菜、おいしくいただきました。私、「Muse」というレストランを経営している高島と申します。実は、ネットDeベジタブルさんの野菜をレストランで使わせていただきたいのですが、お願いできないでしょうか。
レストランと取引ができる!? おいしかったというメールだけでもうれしいのに、レストランで野菜を使ってもらえるなんて。僕は、先方に「ぜひとも取引をしたい」と伝え、平林先生に連絡をした。
レストランからも注文が入ったんですけど!
それはよかったですね。その分の野菜は確保できそうですか?
はい、大丈夫です。先方との取引は、月に2回野菜を出荷して、翌月の10日に代金をもらうことになりそうです。
またまた信用取引ですね。今度はこちらが代金の受け取りを待つ番になりますから、前回までのような買掛金ではなく、売掛金*2を使うことになりますよ!(図1)
*2●売掛金(うりかけきん)
商品をツケで販売し、あとから代金を受け取るとき、代金を受け取る権利を「売掛金」という。企業同士の取引では、どのような支払条件とするかあらかじめ契約を結び、それに基づいて取引を行なうことになる。その契約に基づいて、売掛金が記録される。
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| 図1●信用取引と売掛金(画像クリックで拡大) |
なるほど。今度は受け取る側ですね。無事に出荷が済んだら、また連絡します!
僕はさっそくMuseの高島社長と連絡をとり、取引条件を固めて取引を開始することにした。今後、レストランなどの業者との取引が増えれば、売上も伸びるし、安定もする。もう少しゆとりが出てきたら、営業活動をしてみるのもいいかもしれない。
後日、3回目と4回目の出荷を無事に終えた。慣れてきたこともあって、出荷作業はスムーズに終わった。
無事に出荷作業が終わりました。Museへも出荷しましたよ!
そうですか。Museへの売上は売掛金を使って記録します。それから、先月の宅配料金の支払いは、未払金を現金預金にする必要があります。
未払金は買掛金と同じように記録するのですね。
はい。未払金などは、現金預金の身代わりとして記録され、支払ったときに消滅します。ところで、このような一覧表を「試算表」、一覧表のもとになる個々の記録を「仕訳」、記録することを「仕訳する」といいます。今のところは、試算表と仕訳という言葉を覚えておいてください。
なんだか聞きなれない言葉ですががんばって覚えておきます。Museへの売上に関しては、まだ振り込まれていないので「現金預金」の代わりに「売掛金」を使うということですね?
その通りです。結果として、売掛金は、あとで代金が入ってくる権利を意味することになるんですよ!
あとでお金が入ってくる権利か。権利……。なんだかいい響きだな。お客さんからの代金もきちんと受け取れるようだし、野菜の仕入や出荷も順調だ。出荷作業後の疲れは妙に心地よく、僕は久しぶりに安らかな眠りについた。
本文では、売上の代金を後払いにするケースを取上げています。しかし、それでは代金を受け取れないリスクも高く、代金を受け取るまでの間に次の支払いの資金が不足するなどの問題が生じることもあります。そのため代金を最初に受け取る、いわゆる「手付け」を先にもらった上で商品の出荷を行なうこともあります。この場合でも、商品を出荷したときに「売上」として記録します。そして、手付けを受け取ってから商品を出荷するまでの間は、そのお金を売上の身代わりに「前受金」としておきます。
また、特定の商品に関する手付けということではなく、代金を支払ってもらえないリスクを回避するために、あらかじめ一定額を預っておくこともあります。このような場合には「営業保証金」「預り保証金」などとして記録しておくことになります。
文●平林亮子
お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所し、国内企業の監査に多数携わる。公認会計士3次試験合格後、独立。楽しく幸せに生きるをモットーに、企業、個人を問わず会計面からのサポートを行なっている。