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第3回●無事に野菜をゲット!
~信用取引を行なう~


「ネットDeベジタブル」では、月に2回、季節の野菜セットを届けるというサービスを提供する。安心して食べられる旬なものを提供することと、何が届くか分からないことを楽しんでもらえることが売りだ。僕は野菜を仕入れる手はずを整え、いよいよ本格的に業務を開始した。

代金の支払いを後から行なう信用取引

 ネットDeベジタブルの業務を開始するにあたっては、野菜をきちんと仕入れることが重要になる。「どんなに信頼できる相手との取引でも書面で契約を結んだほうがいい」という平林先生のアドバイスもあり、僕は実家や協力農家との間に契約を結んだ。これで必要な野菜を確保できる。来月末には野菜を仕入れ、再来月の初めには第一便を出荷する予定だ。

 無事契約が終わった僕は、平林先生にそのことを報告した。

平林先生 よかったですね。ところで、実際の仕入*1や出荷作業はどうするのですか?

*1●仕入
商品を購入することを「仕入」という。商品を仕入れるには、①注文し、②商品が納品され、③届いた商品をチェックする(検収)、といった作業が必要になる。会計上は、③の時点で「仕入」として記録することになる。

僕 実家の倉庫の一部を借りられることになったので、各農家からそこに野菜を運んでもらうようお願いしました。その後、倉庫で箱詰め作業をして出荷します。箱詰めや発送作業は、アルバイトを雇うつもりです。

平林先生 そうですか。いろいろと経費がかかりそうですね。

僕 そうなんですよ。まずは、野菜の仕入代金が月々30万円かかります。今はこの規模が精一杯ですが、今後はもっと拡大したいですね。そういえば、この野菜の仕入代金は、当然経費になるのですよね?

平林先生 実は「当然」というわけではないんですよ。あくまでも売れた分だけが経費になります。だから、在庫として残った分については経費にならないんです(図1)。ただし、在庫に関する話は後日にします。ちなみに、仕入代金はいつ支払うのですか?

図1●在庫と経費
図1●在庫と経費(画像クリックで拡大)

僕 月に2回野菜を仕入れて、その分の代金を翌月末に振込む契約になっています。来月から野菜を分けてもらえることになっていますから、支払いは再来月末からになりますね。

平林先生 つまり信用取引ということですね(図2)。

図2●信用取引
図2●信用取引(画像クリックで拡大)

僕 信用取引?

平林先生 企業同士が商品の売買をする際に、代金の支払いを後からするような取引を「信用取引」と呼ぶんです。信用取引の場合でも、商品を受取ったときに帳簿に仕入として記録しますから気をつけてくださいね。

買掛金を帳簿に記録

 仕入に限らず、売上やその他の取引も、代金を実際に支払ったり受取るときに記録するのではないという。野菜を受取ったときに仕入を記録するだけでなく、野菜を出荷したときに売上にするということだ。

僕 でもパソコンのときとは違って、お金が野菜になるわけじゃないですよね? これはどうやって記録するんですか?

平林先生 お金の代わりに、後で支払う約束である「買掛金*2」を記録しておくんです。代金を翌月末に支払うということは「一時的に代金を借りている」と考えられます。それを買掛金とメモしておくんです。それから、野菜は「仕入」と記録します。その結果、一覧表はこのようになります。

一覧表

*2●買掛金
商品をツケで購入し、後から代金を支払うとき、その支払義務を「買掛金(かいかけきん)」という。企業同士の取引では、どのような支払条件とするかあらかじめ契約を結び、それに基づいて取引を行なう。その契約に基づいて、買掛金が記録されることになる。

僕 借方は、お金の残りとパソコンと仕入、つまり野菜を購入した経費ということですね。在庫のことはとりあえず抜きにして。

平林先生 そのとおりです。そして、貸方の買掛金は、一時的に借りてきている金額ですから、逆に言えば、これから支払をしなければならないという義務を意味することになります。

 支払いをする義務か……。自宅の一部を会社とし、コネで野菜を安く仕入れ、実家の倉庫を安く借り、従業員を雇うことなくアルバイトで対応する。できる限り経費は抑えているつもりだが、それでもお金がかかる。僕は思わず、ため息をついてしまった。

 もし売れなかったらお金も回らなくなるし、野菜もだめにしてしまう。そんな不安を抱えながらも、野菜を仕入れるまでの約2カ月間は、野菜の写真を撮ってホームページに掲載したり、アルバイトの面接などであっという間に過ぎていった。そしていよいよ最初の仕入の日となった。約束どおり無事に野菜が届けられたので少しほっとしたと同時に、色とりどりの野菜を見て僕は決意を新たにした。

平林先生 もう1ランクアップ! 今月のキーワード

「信用取引」

 会社同士の取引を「BtoB(Business to Business)」と呼びますが、BtoBの取引においては、商品の受渡しと代金の決済が同時に行なわれない場合があります。例えば、1カ月分の商品の売買代金を集計して、翌月や翌々月に決済するといった条件で取引することがあるのです。このように後から代金の決済をする、いわゆる「ツケ」による取引を「信用取引」といいます(「掛(かけ)取引」と呼ぶこともあります)。信用取引においては、商品を売った側は一時的に代金を貸している状態になります。一方、商品を買った側はお金を借りている状態になると考えられます。こうして貸し借りしたお金は、それぞれ「売掛金」「買掛金」(本文図2参照)として記録します。

 なお、信用取引の際、貸し借りに関して、お金の代わりに「手形」を利用する場合もあります。借りている(購入した)側が、貸している(販売した)側に、手形と呼ばれる証書を振り出すのです。このように手形が振り出された場合には、会計上は売掛金ではなく「受取手形」、買掛金ではなく「支払手形」として記録します。

文●平林亮子
お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現新日本監査法人)に入所し、国内企業の監査に多数携わる。公認会計士3次試験合格後、独立。楽しく幸せに生きるをモットーに、企業、個人を問わず会計面からのサポートを行なっている。

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「ビジネスは楽じゃない!~経費を支払う~」


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